「こんな夢を見た」から始まる小説

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こんな夢を見た。私はどこかの国の戦争に参加している。だが、活躍もなく既に致命傷を受け死にかけていた。これまでか。痛む体を動かし、仰向けに転がる。どうせなら、青空を見ながら死にたい。そう思い霞む視界で妙に青い空を眺めていると、影が私の顔に落ちてきた。
「おーい、生きてますかー?」
この場に場違いなほど呑気な声が降ってきた。
「…?まだ生きてると思うんだけどなー」
誰かが覗き込んできた。目を凝らすと、場違いな格好をした女が私の頬をつついていた。女児アニメの魔女っ子のような格好をしている。サバゲー会場と間違えているんだろうか。指摘してあげたいが、声は出せそうにない。でも、つつくのはやめて欲しい。抗議の意味で女の指を力なく掴む。
「あ、生きてる!良かった!愛と平和の使者としては犠牲者は…ってあれ?」
女の呑気な声を聞きながら、私はそのまま気を失った。
「……生きてる…しかも痛くない?」
「お目覚めですか?お腹に大きな穴が開いてたので、塞いでおきましたよ!いやー、出血が酷いんですから先に治療するんでしたね!」
女はコツンと自分の頭を小突いた。軽く言っているが、瀕死だった私をここまで治すなんて。
「あんた…一体何者…」
「あたしですか?だから、愛と平和の使者ですって。ここの星やたらと死人が多いから、上司に無力化してこいって言われました」
「星?それに上司に無力化って…」
「あ、あたし宇宙人なんですよ!無益な暴力と殺戮を好まない平和な星からやって来ました!」
突然の超展開に私は頭が混乱した。
「あ!侵略しに来たわけじゃないんですよ!単にボランティアで来てるんです」
「じゃあその格好は?」
「データバンクによると愛と平和の使者と言えば、この星ではこの格好が正装なんですよ!」
どんなデータを参考にしたんだ。
「まあまあ、細かいことは後にして無力化しに行きますかね。あなたも行きます?きっと面白いですよ!」
戦場なのに面白いとは。ここで転がっているのも飽きたので、頷いた。
「じゃあ、行きますよ!」
ニコニコしながら、女は私を横抱きにして軽々と抱え歩き出した。
「ちょ、ちょっと…何でお姫様抱っこ…」
「足、怪我してるじゃないですか。治療はしましたけど、無理しちゃ駄目ですよ!」
そう言われると、ぐうの音も出ない。私たちは丸腰で戦場を歩き続けた。途中、銃撃や手榴弾が飛んできたが、女はお構いなく歩く。私たちに飛んできた銃弾はアメ玉とガム、手榴弾はポップコーンへと無力化された。
「何だこれ…アメ玉やガムになってる」
「お腹空いてるなら食べていいですよ。本物のお菓子ですから」
今は食欲はない。取り敢えず、胸ポケットにアメ玉とガムを突っ込んだ。一部始終を見ていた兵士たちは銃を取り落とし、投降した。それでも何人かはナイフを持って突っ込んできた。だが、ナイフもナイフ型のチョコに変わり戦意喪失した。
「皆さんもそれ食べていいですよ。美味しいものは元気になりますから」
急に声をかけられて兵士たちは戸惑ったように顔を見合わせる。返事は帰ってこなかったので、先に進んだ。激戦区に近づいてくると、戦車がうろついている。戦車は私たちに標準を合わせると撃ってきたが、砲弾は大きなマシュマロに変化した。
「戦車は流石にこっちも無力化しないといけませんね」
女が戦車の装甲を撫でると、甘い香りが周り一体を包んだ。チョコ菓子とロールケーキだろうか。
「うん、これで大丈夫ですね」
戦車まで無力化された兵士たちは投降してきた。もうこちらに敵意を向ける兵士はいない。これではもう戦いを続けられないだろう。女は私をゆっくり下ろすと、手をパンパンと打ち鳴らした。
「さあ、おやつの時間にしましょうか」
周りがざわついた。だが、皆空腹だったのかすぐにお菓子にかじりつき始めた。「うまい」「甘い」と小さな呟きや、鼻をすする音も聞こえてきた。
「あたし、思うんです。武力で自分たちが飢えるのって本末転倒なんですよ。武器のために飢えるくらいなら、いっそ武器なんかお菓子にしてしまえばいいんだって」
変な奴と思っていたが、何だかんだちゃんと考えてるんだな。少し感心していると女は宣言した。
「…だから、決めました。あたし、この星の武器を全てお菓子にします!そうすればきっと平和になるんですよ!」
何を言ってるんだ。戦争は武器だけの問題じゃない。
「そんな単純な話じゃ…」
「やって見ないと分かりませんよ!まずは行動!さあ、次の戦場に行きましょう!」
女に強引に手を引かれ、私はため息をついた。

3/11/2026, 9:12:48 AM