マル

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4/3/2023, 2:08:32 PM

『『『『自室の出窓。そこで私は昨日見た奇妙な夢のことを思い出していた。
 そこでフッと思い立って私はノートとペンを手に取った。
 
『気がつくと私は不思議な街にいた。よく行く繁華街によく似ていながらまったく違う場所。
 世界の色は全体的に褪せていて、どこかボヤケて見えた。建物の看板に刻まれた文字も、判読できない。
「あや、みぇよいこぉんでしゃまったがぁ」
突然、そんな感じの言葉?で話しかけられたから、心臓が飛び出るかと思った。嗄れた、女とも男ともとれないその声に、本能的な恐怖を感じていた。
「あごぉんなぢょござみぇよいこんまでぁごまゃだの」
 私は、もう怖くて怖くてたまらなくて、声のする方を振り向かないようにダッと走り出した。
 ただひたすら声の主から離れたくって離れたくって、もうたまらなかった。ソイツは多分、追いかけては来ていなかった。
  
 場面は変わって、気づいたら私はショッピングモールと思しき場所にいた。
 私は子供の(背がとても低かったので)姿で、母親に手を引かれながら歩いていた。
 母親とは何か会話していたが、詳細はまったく思い出せない。けれど、とても楽しいと感じていた。
 そこで私は大きな窓のある吹き抜けような場所で、母親と花火を見た。きれいな花火が煌めいていて、とても綺麗だった。

 そこで私は目を覚ました。朝の6時半。今日は休日で、まだ寝ていられると眠りについた。
 そこで私は真っ白な一つの箱になった夢を見た。箱の中にいるのような夢で、そこで私は自分自身を箱であると自覚していた。
 少しして、私は目を覚ました。時計を見る。6時半だ。あれから、一分も経ってない。おかしいと感じながら、私はまた眠りについた。
 そしてまた箱になった夢を見た。また目を覚ます。
 6時半。一分も経っていない
 怖くなって、私はまた眠りについた。きっとこの時間に自分にとって恐ろしい事が起こるのだと思いながら』

 そこで私は筆を置いた。たしか、こんな内容だったはず。
 ふぅとため息を私はついた。もうあんな夢見たくない。
 ただ…一つ、分からないことがある。
 私は時計見た。

 6時半だ。一分も経ってない。』』』』


きょうのおだい『一つだけ』

4/2/2023, 2:17:49 PM

 『わたしのたからもの』
                     里野 朱音

 初めてその子にあったのは、親に連れられていったおもちゃ屋さんでした。
 その日は私の誕生日で、プレゼントを買いに行ったのですが、そこでたくさんのぬいぐるみを見つけました。
 その中にいた一匹のクマのヌイグルミに、わたしは一目で心をうばわれました。
 ふわふわの体に、首に緑色のリボンを着けていて、他にも同じような子はいたのですが、わたしはこの子しかいない!と思いました。

 それからわたしは、そのクマのヌイグルミに『べーちゃん』と名付けて、毎日一緒に遊んだり、寝ています。
 べーちゃんは、わたしが落ち込んでないちゃった時も、ずっと一緒にいてくれる、わたしの一番のたからものです。
 これからも、ずっとずっと、一緒にいたいです。



おだい『大切なもの』

4/1/2023, 2:50:30 PM

きょうは、二本立て

――――――――――――――――――――――――――
「私ね、実は君のこと嫌いなの」
 開口一番、俺は彼女に告げられた。
 話があるから会えないか、と彼女から送られてきたメールにはそう書かれていて、いつもとは違う雰囲気のメールに戦々恐々としてこそいたが、まさかの宣言。
 つまり、これは…別れ話、なんだろう。

 彼女とは半年ほど前に付き合いだして、本当に俺にはもったいない素敵な人だと常日頃思っていてが…。それでも滅茶苦茶ショックだった。
 あぁ神様。なんて残酷なんでしょう。
 そう俺がガックリと肩を下げていると、彼女が慌てた曜に俺に言ってきた。
「ちょ、ちょっと待って、そんなに落ち込まないで!」
 いや落ち込むよ。別れ話だろ?
「ご、ごめんなさい!そ、そんな落ち込むなんて、思わなくて…ほら、今日はエイプリルフールでしょう?」
 エイプリルフール…?エイプリルフール…。 
 …そうだ!今日は4月の1日!エイプリルフールで、つまり…。
「嘘…ってことか!?悪趣味じゃない?!めっちゃ俺…」
「あぁ…本当にごめんなさい!!あのね…」
 そう彼女は本当に申し訳なさそうに肩を縮めながら、どうしてあんな嘘をついたのか話しだした。
「あの…エイプリルフールについた嘘は、一年間叶わないって…聞いてね…それで、君に嫌いって言えば、一年間ずーっと好き同士でいられるかな…って…思って…」
「そ、そうだったのか…」
 俺は安心したような、肩透かしを食らったような、なんともいえない気持ちになって思わず腰が抜けてしまった。
 そんな俺をみて彼女はもう本当に泣きそうな顔で俺を支えながら何度もごめんなさいごめんなさいと繰り返していた。
「いや…俺…別れ話かと…ほんと…」
「本当に、本当にごめんなさい…私…なんて軽い気持ちで…」
「いや…なんか、もういいよ」
 段々と俺の中には安堵が溢れてきて、可愛らしい願掛けも愛おしくってきて、もうどうしたらいいか分からなくなってきた。でも、本当に本当に安心したのは事実だ。
 その時ふっと思って、彼女のほうを見る。
「あのさ、それ…一年間だけなんだろ?その後は?」
「え、あの…また、言えたら…また一年間って…ずっと…続ければって…ごめんなさい…」
「あ、いやもういいよ!謝んなくて!」
 俺はシャンと立って彼女の肩を抱いた。あの言葉が嘘だったなら、これ以上情けない姿は見せられない。
「嘘、だったんだろ?それだけで、もういいや」
「あの…本当?本当にいいの?君のこと、傷つけたのに?」
「だから!もういいって!な!」
 ぎゅっと、彼女を抱き締める。彼女もこわごわとしながら、俺を抱き締め返してきた。
「でも、嘘でも嫌いって言われるの、嫌だからさ。もう言わないでくれよ?」
「うん、うん…。ごめんね…」
「謝んないでって」
「ごめんね…大好き…大好きだからね…」
「知ってるよ。…俺も大好きだよ」
 しばらく俺たちはそうやって、言い合い続けていた。


――――――――――――――――――――――――――
「実は僕は宇宙人で、今日地球を滅ぼす手筈になっているんだ!」
「あっそ。大変ね」
 目の前の幼馴染は驚愕に満ちた顔であたしを見ている。
「いや、マジのところの一大事よ…?」
「へー困ったわね。で、あたしはどうしたらいいわけ?」
「焦れよ!!なんでそんな落ち着いてんのさ?!!」
 わたわたと手足をバタつかせながらいかに事が重大かを語ってくる。
「今に空を覆う数の宇宙艇が地球を攻めてくんだそ!?」
「じゃあさ…仮に、仮によ、それが本当だとして、それをあたしに話して何になるわけ?」
 あたしがそういうと幼馴染は自信満々に胸を張っていった。
「そりゃあれよ!僕と一緒に来て逃げてもらうのよ!」
「どこによ」
「僕の星しかないだろ?」
 はぁ、とあたしはため息をついた。こいつこんなスラスラ口が回るやつだっけ?
「あーもういいから。嘘でしょ?それ」
「なんで!信じてくんないの!」
 けたたましく叫ぶ幼馴染に呆れたようにあたしは言う。
「だって今日、エイプリルフールでしょ?嘘つく日」
「…え、あ…そうだった」
 幼馴染は突然気が抜けたようにへにゃりとなってしまった。でもどこかを見ながらブツブツと何か呟いている。
「あーいやでも…そっか…嘘にできるのか…気に入ってたしな、ここ」
 何いってんだが。あたしは呆れかけた。
 

 あーよかった、と僕は安心していた。僕の幼馴染であるところの女の子がちっとも驚かないもので焦ったけど、どうにかなりそうだ。
 僕たちの種族はどうにも誰かのお願いを聞いてしまう。本来の取り決めであるこの星を滅ぼすこと、というものも止めてくれと女の子が言えば、それで止められた。
 僕らの種族の、決定的な弱点。それを利用すれば居心地のいいこの地球という星を壊さないで済む。と、考えたのだけど。
 この取り決めを、嘘にする。正確に言うなら、嘘にしてくれと願われたことにすればいい。僕は種族の中でも頭が回るのだ。自称だが。 

「あのさー」
 僕が安心して胸をなでおろしていると、目の前の女の子がなんの気なんてなさそうに聞いてきた。

「あたしに、幼馴染なんていたっけ?」

………。
「…嘘だよ」


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おだい『エイプリルフール』

3/31/2023, 2:53:05 PM

 8月28日。その日から、わたし達は離れ離れになった。
 その時も、いつもと変わらず一緒に家に帰っていた。
 他愛のない話をしながら手を繋いで帰る。わたし達の幼い頃からの日常だった。
 でもその日はいつもと違って。普段は気にもとめないような道に、たまには入ってみようか、という話になった。
 毎日毎日同じ帰り道で、飽きてきていたのだ。ちょっとした、寄り道のような感覚だった。

――そんなこと、辞めておけばよかったんだ。

 気付けば、知らない場所にいた。見慣れた町並みのようで、どこかおかしい場所。人っ子一人おらず、二人きり。
 不安に怯えながら二人で固く手を握り、歩いていた。出口はどこだろう。ここはどこだろう。そう話しながら。
 会話を途切れさせれば、なんの音もしないこの空間に飲み込まれてしまいそうで、怖くてたまらなかったんだ。
 
――それでわたしは少しづつ思い出していって。

「大丈夫。私がいるから」
そう言う貴女の手は震えていて。私はせめて少しでも安心してほしくて。何も言えなかったけど、ただ彼女の手を強く握り返して。
 町並みは目に眩しいくらいの夕焼けに照らされていた。
 手を握る貴女の色も全部が茜色に染め上げられて、髪も瞳も唇も全部きれいで。
 ずっと見ていられたなら、よかったのに。

――帰り道を、わたしは知っていて。

「…あのね」
 口に出した声は震えていた。わたしが口を開くと、貴女は少し驚いて、恐怖で震える声で本当に優しく、どうしたの、と問いかけてくれたのが嬉しくて。
「…帰り道、わたし、知ってるよ」
 頭の中がグチャグチャになっていく。思考が支離滅裂になっていく。わたしは、わたしは、わたしは、わたしは。

――――――――――――――――――――――――――
「ねぇ■■」
「なに?どうかしたの?」
「あの道、入ってみない?いつも行かないし」
「あー…プチ寄り道?いいかもね。行こっか」
―――――――――――――――――――――――――― 

 眩 し い 光 が 目 を 焼 い て 
  身 体 が 軽 く 舞 っ て い っ て

――――――――――――――――――――――――――

 わたしが貴女をここに迷い込ませて。一緒にいたくて。
 わたしの言葉に貴女は戸惑った。でも、嬉しそうに言ったから。
「本当に?じゃあ、教えて。一緒に帰ろうよ。もうこんなとこ、いたくない」
 ずっと一緒にいたいって。いたい。いたくて。
「こっちだよ、■■。こっち」
 手を離して、わたしは貴女の先を行く。貴女は焦って、待って!と叫んで追ってくる。

――だめなの。知ってるよ。

せめて貴女は幸せでありますように。


――――――――――――――――――――――――――

9月5日

 私はぼうっとしながら、テレビに流れるニュースを見つめていた。
 ここは病院の一室だ。私は親友と一緒に事故にあって、数日間目覚めなかった…らしい。まだ、実感が湧かない。
 ついさっきまで、私はあの子といたのだ。手を繋いで、変な町を歩いていたんだ。それが突然、あの子は私の手を離してどこかに行ってしまった。
 あの子を追いかけて、追いかけ続けて。気付いたら、この病室のベットの上にいた。
 …あの子は、もう亡くなってしまっていた。
 あの日。何気ない寄り道のつもりで入った道で、私達は車に轢かれてしまった。
 あんな道。行かなきゃ良かった。そしたらまだ、まだ。

――まだ、一緒にいられたのに。いたかったのに。

せめて、天国にいる君が幸せでありますように。



きょうのおだい『幸せに』

3/30/2023, 10:51:49 AM

 あ、と気づいた。小さな予感のようなものだけど、きっとそうだろうと思った。
「それでさ、試しに聴いてみたらはまっちゃってさー」
 何気ない会話だ。僕の友人である彼は、楽しそうに話している。
「そうなんだ?いいじゃん、僕も聴いてみようかな」
「マジおすすめ!食わず嫌いはするもんじゃねぇな」
 そう言って笑いながら彼は頭をガリガリと掻いた。
 彼は最近、ある音楽にハマったらしい。激しめな曲を好む彼があまり好まないような、落ち着いたブルース。
 どうして、急に好みではない曲を聴き出したのか。
 深く考えなくても、僕には分かる。ずっと、彼を見ていたから。初めて出会ったときから、ずっと。

 出会いは単純だ。入学時、隣の席だったからだ。僕自身は社交的な方ではなく、むしろ人見知り気味だった。そのうえ入学したばかりで戸惑っていたし、悩んでいた。
 そんな僕に彼は気さくに話しかけてきた。
 「これからよろしくな!」と。そこから彼は本当に小さい事から話しかけてきた。
 「次の授業…数学だろ?だりー。俺は体育がいいんだけどなー。お前は?」「今日の給食カレーじゃん!ラッキー!な!」「おい!次移動だぞー。遅れるぞー」
「な、今日どっか一緒によらね?」
 とかとか…最初は鬱陶しくも感じたけれど、段々と楽しくなって来て…。気付けば、かけがえのない友人になっていた。
 彼は僕以外にも何人も友達がいるようだし、彼からしたら僕は友達K、ぐらいの感覚かもしれないけれど…。僕にとっては本当に、本当に特別で大切で、かけがいのない…『友人』…なのだ。

 きっと彼は、好きな人が出来たのだろう。その人に近づきたくて、普段は聞かない曲を聴き、わざとらしく大きめな声で、教室の中話している。

 応援しよう。協力も、出来るならしよう。
 相談には、いくらでも乗ろう。悩みは、一緒にいくらでも考えよう。
 そう頭の中で考えながら、楽しげに話す彼を見つめていた。


おだい『何気ないふり』

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