おへやぐらし

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3/21/2024, 2:30:31 PM

とある密室にて
白骨化した二つの遺体と一枚のメモが残されていた

だいすきだよ
れんあいじゃなくてもいい
かならずしもね
ただそばにいてほしいだけ
すきなあいてとなら
けっしてはなれない
てつなごうよ

お題「二人ぼっち」

3/18/2024, 3:56:27 AM

「おはよう」
隣の席のSが笑顔で話しかけてくる
咄嗟に返そうと思ったけど声が出なくて
そのまま俯いてしまった

物心ついた頃から自分はおかしなやつだと気付いた
自分では普通だと思っていたけど、周りの人たちは
「あの子はおかしい」「病気」だと話していた
母はそんな自分を心配して病院に連れて行って
くれたりしたが何も変わらなかった

ある時から持ち物がなくなっていたり
丸めた紙をぶつけられたりと
小さな嫌がらせをされるようになった
多分こんな自分に周囲の人達が腹を立てたのだろう

仲間に囲まれながらこちらを見て笑うS
自分もあんな風に笑えたらな

「さあ、今日も始めるか!」
放課後にN先生と二人で挨拶の練習をする
クラスでの自己紹介の時に、何も話せなかった自分を見た先生は、こうしてよく話かけてくるようになった
「まずは挨拶からだな。挨拶は人間関係の基本だ!」
普通の人間のように接してくれるN先生との時間は
とても心地よかった

Mができるようになるまで練習に付き合う、そう言ってくれた先生はある日を境に学校へ来なくなった

下駄箱から消えた靴を探しているとSに出会った
初めて挨拶してくれた時と変わらぬ笑顔でこちらへ近付いてくるSを見て、何故だか逃げ出したくなった

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「泣けよ」
馬乗りになったSに見下ろされる
「どうして泣かないの?」
こんな事されてるのに

泣かないんじゃくて泣けないんだ
そんなことを考えながらぼんやりと天井を眺めていた

お題「泣かないよ」

3/16/2024, 1:29:13 PM

それは些細な違和感だった。
帰り道誰かに後をつけられている気配がしたり、
部屋の雑貨の位置が少しずれていたり、
知らない相手からの郵便物が届いたりした。
もしかしてストーカー?

私は友人のユウちゃんに相談した。
「やっぱり警察に相談した方がいいかな」
「んー、警察って何かあってからじゃないと動いてくれない事が多いから、あんまりあてにならないかも」

ユウちゃんはそう話してたけど、
念の為に警察へ行ってみることにした。
だけど言われた通り、警察は頼りにならなかった。
この一帯のパトロールを強化するという報告と
戸締りや防犯ブザーを持ち歩くなど自衛を
しっかり行うよう注意される。それだけだった。

深夜
レポートを作っていると突然インターフォンが鳴った
こんな時間に?誰?
固まって動けずにいると、
何度も何度もインターフォンを押された。
次第にそれはエスカレートしていき、
扉をドンドンと叩いたりドアノブを
ガチャガチャと壊れるほど回された。

怖くなった私はユウちゃんに電話した。
『どうしたの?』
『外に誰かいるの。ユウちゃん助けて』
『わかった。すぐ行く』

夜更けにも関わらずユウちゃんはすぐに来てくれた。
その姿を見た私はユウちゃんに抱きついた。
震えが収まるまでユウちゃんは私の背中を
ずっとさすり続けてくれた。
「ありがとう。ユウちゃんがいてくれてよかった」
「かわいい」
「え」
「友達が困ってたら助けるなんて当たり前だよ。
いつでも頼っていいからね」
そう言って私の頭を撫でながら優しく微笑む
ユウちゃんを見てまた泣きそうになった。
そうだね、ユウちゃんがいてくれたらきっと大丈夫
私はそのままユウちゃんに身を委ねた。

お題「怖がり」

3/13/2024, 12:36:23 PM

私の隣で眠る彼を見つめる
彼とはじめて出会ったのは少し前のことだ

私の家にはよく人が訪れた
彼らは無断で家に侵入しては
動画を撮ったり落書きをしたり
散々荒らして騒いで満足したら帰ってゆく

ここへ来る輩はほとんどがくだらない連中だ
彼を除いて 思えば一目惚れだったのかもしれない

険しい顔をしている彼を仲間の一人が冷やかした
「おまえびびってんのw?」
「違う、ここ本当にまずい。早く帰ろう」

彼の顔も彼の目も彼の声も彼の魂も
私の心を捉えて放さなかった
彼の事をもっと知りたい
それから私は彼についていった

気づいて欲しくてわざと物を動かしたり
彼の体に跡を付けてみたりした
起きてから鏡を見た時の彼の表情が忘れられない

ある日のこと 彼はお寺へ赴いた
「なんとかなりませんか」
住職は私の方をちらりと見た後に目を伏せた
「…できるかぎりの事はしてみます」

それから儀式のようなものが始まった
正座になり目を瞑る彼とブツブツと何かを唱える住職
私はこの空間がどうにも落ち着かなかった

住職は額から汗をかきながら私に語りかけた
「彼を解放してやりなさい」

なぜ?どうして?そんなのいや
彼と離れたくない 彼のそばにいたい
もう一人になりたくない!

気が付けば住職は床に倒れていて
冷たくなった住職の傍らで彼は呆気にとられていた

それからも私はずっと彼のそばにいる
日に日にやつれていく彼の横顔を見つめた
あぁ そんな顔も素敵

多くは望まないから どうか
これからもあなたの隣にいさせて

お題「ずっと隣で」


3/12/2024, 1:04:45 PM

隣の席のMは無口だ
笑いかけても話しかけても
挨拶しても冗談を言っても遊びに誘っても
いつも無反応・無表情

そんなMのことを気味悪がるやつらもいた
ほんの出来心からそいつらをけしかけて
ちょっとした悪戯を試してみることにした

Mの持ち物を隠したり
わざとぶつかってみたり
聞こえるように陰口を囁いたり
けれどもMは気にした素振りも見せずに
いつも澄ました顔をしていた

ある日のこと放課後の準備室で
MとN先生が二人きりでいるところを目にした
仲間のいないMをずっと気にかけていたN先生
先生といる時のMは今までにないほど
穏やかな顔をしていて自分の中で何かが弾けた

それから暫くしてN先生は学校に来なくなった
色々な噂が立ったけど結局のところ
本当のことは誰もわからずじまいだった

夕暮れが差し込む準備室
後ろ手に鍵をかけながらMに話しかけた
相変わらず無表情なMは準備室に隠されていた
上履きを持ちながらこちらをじっと見つめた

「先生どうなったか知ってる?」

N先生の名前を出した途端
Mの瞳の奥がわずかに揺れた気がした

それを見た瞬間
Mの方へ手を伸ばしていた

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あの時見たMの表情が今でも忘れられない
あんな顔も出来るんだ
Mのこともっと知りたい
知らぬ間に口元が笑みで歪んでいた

お題「もっと知りたい」

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