隣の席のMは無口だ。
笑いかけても話しかけても、
挨拶しても冗談を言っても遊びに誘っても、
いつも無反応・無表情。
そんなMのことを気味悪がるやつらもいた。
ほんの出来心からそいつらをけしかけて、
ちょっとした悪戯を試してみることにした。
Mの持ち物を隠したり、
わざとぶつかってみたり、
聞こえるように陰口を囁いたり。
けれどもMは気にした素振りも見せずに、
いつも澄ました顔をしていた。
ある日のこと放課後の準備室で
MとN先生が二人きりでいるところを目にした。
仲間のいないMをずっと気にかけていたN先生。
先生といる時のMは今までにないほど
穏やかな顔をしていて自分の中で何かが弾けた。
それから暫くしてN先生は学校に来なくなった。
色々な噂が立ったけど結局のところ、
本当のことは誰もわからずじまいだった。
夕暮れが差し込む準備室。
後ろ手に鍵をかけながらMに話しかけた。
相変わらず無表情なMは、準備室に隠されていた
上履きを持ちながら、こちらをじっと見つめている。
「先生どうなったか知ってる?」
N先生の名前を出した途端、
Mの瞳の奥がわずかに揺れる。
それを見た瞬間、
Mの方へ手を伸ばしていた。
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あの時見たMの表情が今でも忘れられない。
あんな顔も出来るんだ、
Mのことをもっと知りたい。
知らぬ間に口元が笑みで歪んでいた。
お題「もっと知りたい」
3/12/2024, 1:04:45 PM