おへやぐらし

Open App

隣の席のMは無口だ。
笑いかけても話しかけても、
挨拶しても冗談を言っても遊びに誘っても、
いつも無反応・無表情。

そんなMのことを気味悪がるやつらもいた。
ほんの出来心からそいつらをけしかけて、
ちょっとした悪戯を試してみることにした。

Mの持ち物を隠したり、
わざとぶつかってみたり、
聞こえるように陰口を囁いたり。

けれどもMは気にした素振りも見せずに、
いつも澄ました顔をしていた。

ある日のこと放課後の準備室で
MとN先生が二人きりでいるところを目にした。
仲間のいないMをずっと気にかけていたN先生。

先生といる時のMは今までにないほど
穏やかな顔をしていて自分の中で何かが弾けた。

それから暫くしてN先生は学校に来なくなった。
色々な噂が立ったけど結局のところ、
本当のことは誰もわからずじまいだった。

夕暮れが差し込む準備室。
後ろ手に鍵をかけながらMに話しかけた。

相変わらず無表情なMは、準備室に隠されていた
上履きを持ちながら、こちらをじっと見つめている。

「先生どうなったか知ってる?」

N先生の名前を出した途端、
Mの瞳の奥がわずかに揺れる。

それを見た瞬間、
Mの方へ手を伸ばしていた。

┈┈┈┈┈┈┈
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

あの時見たMの表情が今でも忘れられない。

あんな顔も出来るんだ、
Mのことをもっと知りたい。

知らぬ間に口元が笑みで歪んでいた。

お題「もっと知りたい」

3/12/2024, 1:04:45 PM