急募:魔物の討伐
"ヤツ"の倒し方がわからない
いくら考えても解決策が思い浮かばないんだ
あの時一体どうすればよかったのか
考えれば考えるほど"ヤツ"に飲み込まれそうになる
出口のない迷路を永遠に回り続けているような感覚だ
"ヤツ"から意識を逸らすことが大切だと聞いた
睡眠、食事、趣味、お酒、薬…
けどそれも根本的な解決にはならない
今はまだ眠っているが
またいつ起きて襲ってくるかわからない
早急に対応を求む
お題「過ぎ去った日々」
私の親友は美人だった
昔は美人に生まれたら人生イージーモードだと
思っていたけど、彼女と出会ってから美人には美人
なりの苦労があることを知った
それは不特定多数の人間から向けられる感情
好奇の眼差しや嫉妬や望まぬ好意など
そういったものを常に浴びせられる
彼女はよく「かえりたい」とこぼした
外にいる時だけではなく家の中でも
「どこにかえりたいの?」と聞けば
「月にかえりたい」と彼女は言った
それはとある月夜の晩だった
彼女の家で寛いでいると
風もないのにカーテンが揺れた
次の瞬間、部屋の電気が消えて、代わりに窓から
入ってきた青白い月の光が辺りを照らした
「お迎えにあがりました」
月の光と共にやってきたのは風変わりな
衣服を纏った者たちだった
私は固まって動けずにいると、
月からやってきた使者の一人が親友の肩に
羽衣をふわりと被せた
すると彼女は凛とした姫のような顔になり
使者たちに導かれるまま部屋を後にした
唖然とした顔でその様子を見つめていると
彼女は私の方へ振り向いた
「一緒に行かない?」
私が首を横に振ると、彼女は悲しそうに目を伏せて
「そう」と小さく呟いた
「さようなら」
こうして彼女は月へ帰って行った
お題「月夜」
「必ず迎えに行くからね」
そう言って涙を流しながら
あたしを抱きしめてくれた
彼女の顔が今でも頭から離れない
男手ひとつであたしたちを育ててくれた
お父さんが事故で亡くなった
まだ幼くて頼る大人もいなかった
世間知らずのあたしたちにできることは
かぎられていて
あたしたちは離れ離れになった
一日中働いて酷いこともたくさんあった
でも悲しいことがあった日は楽しかった頃を
思い出すと元気が湧いてくる
彼女の笑顔 彼女の眼差し
彼女の匂い 彼女の温もり
お金をためてここを出て彼女を探しに行くんだ
それがあたしの唯一の希望だから
お題「たった1つの希望」
孤児院での暮らしは最悪だった
他の子よりも小さくて臆病だった私は
いじめの対象にされた
靴を隠されたり貴重な食べものをとられたり
ああ、誰か私をここから連れ出して
私を引き取ってくれた家は窮屈だった
彼らに嫌われたくない私はいい子を演じ続けた
もうすぐ歳が一回りほど離れている
相手と結婚させられてしまう
ああ、誰か私をここから連れ出して
私を窮屈な家から解放してくれた彼は最低だった
最初はとても優しかったけれど
結婚してから変わってしまった
ろくに働かず文句を言えば暴力をふるう
ああ、誰か私をここから連れ出して
お題「現実逃避」
小さな命が家にやってきた
その日からみんなの関心は
小さな命のほうへ行ってしまった
お母さんもお父さんも
おばあちゃんもおじいちゃんも
みんなみんなそいつのことを
かわいいかわいいと褒めたたえた
小さくてかわいくて守ってあげないといけない
いきものがみんな好きなんだ
だから自分みたいに大きくなって
かわいさが失われたものには興味がないんだ
ゆりかごの中で眠る小さな命を見つめる
ふっくらとした頬とミルクのかおり
みんなの心をうばうじゃまものは
この手で刈り取らないといけない
お題「小さな命」