僕のお気に入り
それは何よりもかけがえのないもの
温かな体温
柔らかな肌
甘い香りの髪
鮮やかな赤
だけど僕がお気に入りを
愛でられるのはほんの一瞬
それはだんだんと冷たくなって
色は変わり、異臭を放ち、腐敗して
やがては朽ち果てる
僕は新しいお気に入りを
探しに旅へ出た
お題「お気に入り」
「この場所で何があったかご存知ですか?」
暗い山道の中、
車を走らせながらタクシーの運転手は聞いた。
「いいえ。何かあったんですか?」
「若い女性が殺されて、この辺りに捨てられたらしいですよ。怖いですね~あなたも美人だからくれぐれも気をつけてください」
そんな話を今しないでよ
不快感と恐怖で身体をこわばらせていると
運転手が途中で車を停めた。
「あの、どうしましたか?」
運転手はゆっくりと後ろを振り返ると
ニタリと笑った。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
ため息をこぼしながら運転手は
フロントガラスに付いた汚れを掃除していた。
この場所を通る時はいつも以上に汚れる。
大量の手形を拭いていると、
一つだけどうしても取れないものがあった。
それは何度試しても落ちなかった。
お題「この場所で」
突然ですが恋人ができました!
笑顔が素敵な美人で優しい女性です。
ある日彼女からこんなお願いをされました。
☺️「私の一族に会ってほしいな」
😧「一族?」
いきなり親戚の方々に紹介されるとは、
とても緊張しています。
彼女の故郷に着くと、
みなさん温かく出迎えてくれました。
- ̗̀ ようこそ ̖́-
( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ )
おめでとう( ͡ ͜ ͡ )
よかったね~( ͡ ͜ ͡ )
宴じゃ( ͡ ͜ ͡ )
☺️「みんなありがとう」
豪華で美味しい食事やお酒まで用意されて、
僕は身も心も酔いしれていました。
さて、そろそろ…( ͡ ͜ ͡ )
頃合いじゃ( ͡ ͜ ͡ )
儀式を始めるかの( ͡ ͜ ͡ )
😧「儀式?」
( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ )
( ͡ ͜ ͡ ) ?!😨🥰 💕︎ ( ͡ ͜ ͡ )
( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ ) ( ͡ ͜ ͡ )
いつの間にか一族のみんなに囲まれていました。
仲間が増えるね( ͡ ͜ ͡ )
めでたいね〜( ͡ ͜ ͡ )
宴じゃ( ͡ ͜ ͡ )
彼女にお面を渡されます。
それは笑顔のお面でした。
😨「これって大丈夫な奴だよね?」
🤭「うふふ」
お面を付けると、
僕の顔は( ͡ ͜ ͡ ) になっていました。
お題「スマイル」
どこにも書けないこと
それは奴の名前
奴のことを考えてはいけない
強く意識するほど奴の存在感は増す
人が多いところは特に危険だ
人混みの中に奴は紛れている
会話をしていても相手の瞳の中に奴がいるから
他人と目もあわせられない
医者からは一過性のものだと言われてたが
奴が現れてからもう随分と経つ
どこにもいないとあなたは言うけれど
今あなたと話している最中も奴は隣にいる
どこにいても奴は存在する
見えない追跡者からずっと追われ続けているようだ
奴が見えるようになると
普通の生活には戻れなくなる
奴から解放されるためには
永遠の眠りしかないのだろうか
みんなもどうか気をつけてほしい
お題「どこにも書けないこと」
物心ついたときから『心のコップ』が見えた
形も大きさも深さも人によってばらばらだ
朝から部長がイライラしている
部長のコップを見るとグツグツと赤い液体が
煮えたぎっていた
部長は機嫌が悪いと、物を投げたり
皆の前で怒鳴りつけたりする
今日は自分の番だった
「大丈夫?」
心配そうに声をかけてきてくれたのはBさん
いつも周りを気にかけてくれる人だ
Bさんのコップを見れば、
ふちすれすれまでに液体が溜まっている
翌日からBさんは職場に来なくなった
この職場は"いい人"からいなくなる
残っているのは相当タフな人か変わり者だけ
自分もその変わり者の一人だ
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
「大丈夫?」
目が覚めると心配そうにこちらを覗くCさんがいた
ズキズキする頭をおさえながら先程の事を思い出す
飲み会で部長に一気飲みを強要されて、
酒を煽った自分はそのまま意識を失ったらしい
介抱してくれたCさんに謝罪とお礼を述べると、
気にした様子もなくニコニコとしていた
自分はこの人が苦手だ
わかりやすい部長の方がマシだと思えるくらい
人懐こくて表情豊かで人気者のCさん
そのコップの中身はいつも空っぽだ
赤ん坊に犬や猫、鳥や魚にだって
多少なりとも感情の液体が入ってるのに、
この人の中にはそれがない
こちらに伸びてくる手を反射的に振り払ってしまう
見上げるとCさんは笑っていた
空っぽだったCさんのコップの底に
液体が溜まり、ついには溢れ出した
お題「溢れる気持ち」