夜の公園で私は一人ブランコを漕いでいた。
錆び付いたブランコがキーキーと音をたてる。
なんでこんな場所にいるんだろう。
あ、思い出した。
友だちにゴロゴロコミックを貸してもらうんだった。
まだかな…ずっと待っている気がする。
ぼーっとしていると、
知らない大人がこちらへ近づいてきた。
その姿にびくっと体がこわばった。
なんでこんなに怯えているんだろう。
その人は私にこう言った。
「もうここにいなくていいんだよ。
あるべきところへおかえり」
…ああ、そうだった。
わたしは大切なことを忘れていた。
それから誰もいない夜の公園で
ブランコがひとりでに動くことはなくなった。
お題「ブランコ」
旅先で行方不明になった妻を探すために、
仕事も辞め捜索に明け暮れる日々を送っていました。
現地の警察にも相談して、
彼女が行きそうな場所はくまなく探しましたが、
一向に手がかりが掴めません。
途方もなく町を歩いていると、
とある見世物小屋を見つけました。
私は何か惹き付けられるものがあり、
興味本位で中へ入ってみることにしました。
そこにはステージ上で踊る猫と
それを見て歓声をあげる人々がいました。
キピキピキャパキャパルビルビラバラバ♪
あれは猫…いや、人間?
私は目を見張りました。
はっぴはっぴはっぴぃ♪はぴはぴはぴはぴはぴぃ♫
見間違えるはずがありません。
そこには狂ったように飛び跳ね踊る
妻がいたのです。
その姿は私が今まで見た中で、
一番美しく愛らしかったのでした。
お題「旅路の果てに」
お母さんは優しい人だ。
いつも私以上に私のことを考えてくれる。
「お菓子には添加物が入っていて
体に悪いから食べてはダメ」
「いかがわしい本を読んではだめ。
全部 捨てておいたからね」
「ゲームは頭が悪くなるから買いません。
将来のために勉強しなさい」
「そんな相手と付き合ってはだめ。
この先きっと後悔するよ」
「勉強して、いい学校、いい会社に入って
お母さんを早く安心させてちょうだい」
「みんなあなたのためを思ってのことよ」
お母さん
今までありがとう。
私は今日ようやく
あなたの優しさから解放される。
お題「優しさ」
白い病室
風になびく白いカーテン
窓の外を眺める私
振り返れば笑顔の彼が立っていた
窓から落ちて頭を強く打った私
一命は取り留めたが
すべてを忘れてしまった
私はどうやら天涯孤独なようで
連絡先は彼の他に誰もいなかった
擦り傷切り傷痣火傷
ボロボロな私の体を
優しく抱きしめてくれた彼
窓辺に飾られた白い椿の花がきれい
彼が私に贈ってくれた大切な花
彼に見つめられると
心がざわついて胸がドキドキする
私たちはきっと
深く愛し合っていたのだろう
何も思い出せないけれど
彼がいてくれたら安心
お題「安心と不安」
私はとある変わった食材を扱う
レストランに来ております。
「まずは前菜の"踊り食い"でございます」
お皿の中では小さな??達が泳いでいます。
私は一匹箸で摘み、醤油に漬ければ、
それはキーキーと鳴き声を上げました。
口に入れると中で暴れ回るような不思議な食感で、
歯を立てればぷちゅりと生暖かい液体が
飛び出してきました。
「次は??のポワソン"活けづくり"でございます」
小さなシェフが出てきて、??の体を刃物で裂き、
見事な活けつくりが完成しました。
新鮮な食材ならではのコリコリとした歯応えと、
少し臭みのある野性的な味わいは
何度でも食べたくなる魅力があります。
「次は??のソルベ"えぐり出し"でございます」
私は??の目玉をぎざぎざスプーンでくり抜きました。
ぷるんとした食感と濃厚でクリーミーで味わいは、
舌の上でとろけるようで、
一瞬にして口いっぱいに広がります。
「次はメインディッシュの"ひき肉"でございます」
私は皿に乗せられた??と目が合いました。
そこで目が覚めたのです。
何とも不思議な夢を見ました。
お題「こんな夢を見た」