おへやぐらし

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2/1/2024, 12:15:21 PM

夜の公園で私は一人ブランコを漕いでいた。
錆び付いたブランコがキーキーと音をたてる。

なんでこんな場所にいるんだろう。
あ、思い出した。
友だちにゴロゴロコミックを貸してもらうんだった。
まだかな…ずっと待っている気がする。

ぼーっとしていると、
知らない大人がこちらへ近づいてきた。

その姿にびくっと体がこわばった。
なんでこんなに怯えているんだろう。

その人は私にこう言った。
「もうここにいなくていいんだよ。
あるべきところへおかえり」

…ああ、そうだった。
わたしは大切なことを忘れていた。

それから誰もいない夜の公園で
ブランコがひとりでに動くことはなくなった。

お題「ブランコ」

1/31/2024, 5:03:09 PM

旅先で行方不明になった妻を探すために、
仕事も辞め捜索に明け暮れる日々を送っていました。

現地の警察にも相談して、
彼女が行きそうな場所はくまなく探しましたが、
一向に手がかりが掴めません。

途方もなく町を歩いていると、
とある見世物小屋を見つけました。

私は何か惹き付けられるものがあり、
興味本位で中へ入ってみることにしました。

そこにはステージ上で踊る猫と
それを見て歓声をあげる人々がいました。

キピキピキャパキャパルビルビラバラバ♪

あれは猫…いや、人間?
私は目を見張りました。

はっぴはっぴはっぴぃ♪はぴはぴはぴはぴはぴぃ♫

見間違えるはずがありません。
そこには狂ったように飛び跳ね踊る
妻がいたのです。

その姿は私が今まで見た中で、
一番美しく愛らしかったのでした。

お題「旅路の果てに」

1/27/2024, 12:27:01 PM

お母さんは優しい人だ。
いつも私以上に私のことを考えてくれる。

「お菓子には添加物が入っていて
体に悪いから食べてはダメ」

「いかがわしい本を読んではだめ。
全部 捨てておいたからね」

「ゲームは頭が悪くなるから買いません。
将来のために勉強しなさい」

「そんな相手と付き合ってはだめ。
この先きっと後悔するよ」

「勉強して、いい学校、いい会社に入って
お母さんを早く安心させてちょうだい」

「みんなあなたのためを思ってのことよ」

お母さん
今までありがとう。

私は今日ようやく
あなたの優しさから解放される。

お題「優しさ」

1/25/2024, 10:58:13 AM

白い病室
風になびく白いカーテン
窓の外を眺める私
振り返れば笑顔の彼が立っていた

窓から落ちて頭を強く打った私
一命は取り留めたが
すべてを忘れてしまった

私はどうやら天涯孤独なようで
連絡先は彼の他に誰もいなかった

擦り傷切り傷痣火傷
ボロボロな私の体を
優しく抱きしめてくれた彼

窓辺に飾られた白い椿の花がきれい
彼が私に贈ってくれた大切な花

彼に見つめられると
心がざわついて胸がドキドキする

私たちはきっと
深く愛し合っていたのだろう

何も思い出せないけれど
彼がいてくれたら安心

お題「安心と不安」

1/23/2024, 1:17:25 PM

私はとある変わった食材を扱う
レストランに来ております。

「まずは前菜の"踊り食い"でございます」

お皿の中では小さな??達が泳いでいます。
私は一匹箸で摘み、醤油に漬ければ、
それはキーキーと鳴き声を上げました。

口に入れると中で暴れ回るような不思議な食感で、
歯を立てればぷちゅりと生暖かい液体が
飛び出してきました。

「次は??のポワソン"活けづくり"でございます」

小さなシェフが出てきて、??の体を刃物で裂き、
見事な活けつくりが完成しました。

新鮮な食材ならではのコリコリとした歯応えと、
少し臭みのある野性的な味わいは
何度でも食べたくなる魅力があります。

「次は??のソルベ"えぐり出し"でございます」

私は??の目玉をぎざぎざスプーンでくり抜きました。

ぷるんとした食感と濃厚でクリーミーで味わいは、
舌の上でとろけるようで、
一瞬にして口いっぱいに広がります。

「次はメインディッシュの"ひき肉"でございます」

私は皿に乗せられた??と目が合いました。

そこで目が覚めたのです。
何とも不思議な夢を見ました。

お題「こんな夢を見た」

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