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1/13/2023, 4:26:22 AM

肉に食い込む鉄の感触に何も感じなくなってしまったのです。

暗闇。限りない暗闇にいます。あまりにも暗くて自分が視覚を失ってしまったのかと思うことがあります。ですが、僕を縛るこの鉄の鎖だけは。幾つも重なって僕の身を引き裂こうとするような、引き合わせようとするようなこの鎖だけは網膜に張り付いてしまったかのように鮮明に見えるんです。

痛みを感じられれば良かった。

もう何も感じないんです。鎖ごと僕の体の肉になってしまって、僕の神経が張り巡らされていて、僕の血が流れているように感じるんです。ただ、気持ち悪さだけが残るんです。

僕はずっとこのままなんて耐えられそうにないんです。

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解読者へ
自分だってしたくてこんな所業に至った訳では無いんです。ただ彼が、自由だと、危ないと思ったのです。決して私欲などではないんです。意味が、意義が、訳が、理由が、あるんです。
訳あり独裁者より

1/11/2023, 4:23:45 PM

ただ道を歩いて砕くだけ

僕はずっと歩き続けなければならない。深い理由は無い。ただ僕の足元には一筋の道しかないから。だが、1人でずっと歩き続けていると段々と体が冷えて寒さを感じる。
すると僕の前に人間位の大きな氷の塊が現れる。

僕は最初はただ呆然とそれを眺めていた。これをどうすべきか分からない。だが、なんの意味も無いものだとも思えなくて。
氷を砕いてみた。思いっきり殴って。

すると紅い液体が出てきた。砕く前は透明な氷だったのに不思議だと思った。そして、その液体の温かさに気づいた。凍えていた手が感覚を取り戻していく。

それからも僕は歩き続けた。寒くなったら氷を砕いた。

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解読者へ
彼は大きな間違いをしている。氷を砕いてはいけない。ぬくもりを得てはいけない。ただそこで立ち止まって凍るのを待つのが正解なのだ。そのまま歩き続けても何も得られやしない。寒いだろう。痛いだろう。段々と凍っていく己の体を見つめるのは惨めだろう。だけど、その先に新しい道が開ける。
気づいてくれ。君が何をすべきか。
気づいてくれ。君が何も出来ないことに。
砕かれた者より

1/9/2023, 5:36:20 PM

僕は完璧である。

僕は世界を作ることができた。花を咲かせることができた。水を作ることができた。生命を作ることができた。太陽を作ることができた。殺しをすることができた。僕はありとあらゆるものをつくり、こわすことができた。

なのに「完璧なものなんてない」と言う輩がいる。

想像物の分際で。そんなことを言えるのはきっと自分への慰めだろう。なんと劣った思考なんだ。

僕はなぜ、認められないのだ。こんなにも完璧だというのに。こんなにも孤高だというのに。

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解読者へ
彼は頂点に立つものだった。万物の想像主だった。だが、彼は1部の狂人から虚像の姿を崇められるだけであった。それは何故か。照らしてくれるものがなかったからである。彼はいつだって完璧である。それがみえないだけで。
穴だらけの者より

1/8/2023, 6:47:40 PM

3色の血液の少年たちがいた。

赤、青、黄。それぞれの少年の血液はとても美しく鮮やかで、時には深みのある色をしていた。少年たちはある森の中の秘密基地に集まってよく遊んでいた。
特に3人の少年たちが好きだったのは色を作る遊びだった。ナイフで体を切ってそれぞれの血を混ぜて色を作る。そしてまた色を作る。秘密基地は彼らの色でいっぱいになった。
少年たちは最後に全ての色を混ぜようとして、お腹にナイフを刺した。流れゆく色は他の色を巻き込んで混ざって行った。そして完成した。彼らだけの秘密基地が。
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通りすがりの王が言った。
「なんだこの血にまみれた紅い家は」

解読者へ
人は十人十色で同じ色はないなんて言うけれど、その色の違いなんて気づいていないんでしょう?
黒い少年より

1/7/2023, 9:22:18 AM

ドロドロと黒く溶けている。あまりにも醜い。

世界が病気で溢れた。世界中の人がドロドロと溶け始めた。僕の周りの人間もどんどん感染していく。だが、皆変わらずに生活している。僕はそれが不思議で仕方がなかった。だがそれ以上に怖かった。

「僕もあんなふうに醜くなってしまうのかな」

親友のディアに聞いてみた。

「さあ。でもいつか変わってしまうだろうね。僕もルースも」

嫌だ。僕は美しいままでいたい。そしてなにより美しいディアに醜くなって欲しくない。だが、もう世界中の人が醜くなってきている。

「ねぇディア。僕は君に美しいままでいて欲しいんだ。ずっと美しいままで僕と一緒にいて欲しいんだ。」

心の底からの願いだった。そう言ったらディアは微笑んだ。

そして僕らは海に溶けた。ずっと美しいままで、ずっと一緒にいるために。僕らは世界で1番美しい。

追記
解読者へ
世界は病気に満ちていた。皆汚かった。だが、溶けてなんかいなかった。ルースは病気だった。心の様が容姿として見えてしまう目の病気。本人は気づいていなかったのだけどね。僕がそれを隠していたから。でも、病気なのはルースだけじゃないだろう?僕だって君だってなにかの病気だ。だが、あまりに病気が溢れるものだからそれに気づかなくなってしまったんだろうね。
結局は皆汚いということだ。ルース以外はね。
ディアより

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