ただ道を歩いて砕くだけ
僕はずっと歩き続けなければならない。深い理由は無い。ただ僕の足元には一筋の道しかないから。だが、1人でずっと歩き続けていると段々と体が冷えて寒さを感じる。
すると僕の前に人間位の大きな氷の塊が現れる。
僕は最初はただ呆然とそれを眺めていた。これをどうすべきか分からない。だが、なんの意味も無いものだとも思えなくて。
氷を砕いてみた。思いっきり殴って。
すると紅い液体が出てきた。砕く前は透明な氷だったのに不思議だと思った。そして、その液体の温かさに気づいた。凍えていた手が感覚を取り戻していく。
それからも僕は歩き続けた。寒くなったら氷を砕いた。
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解読者へ
彼は大きな間違いをしている。氷を砕いてはいけない。ぬくもりを得てはいけない。ただそこで立ち止まって凍るのを待つのが正解なのだ。そのまま歩き続けても何も得られやしない。寒いだろう。痛いだろう。段々と凍っていく己の体を見つめるのは惨めだろう。だけど、その先に新しい道が開ける。
気づいてくれ。君が何をすべきか。
気づいてくれ。君が何も出来ないことに。
砕かれた者より
1/11/2023, 4:23:45 PM