NoName

Open App
2/6/2023, 2:18:36 PM

時計の針

時間という概念を作ったのは誰なんだろうって、ふと思うことがある。

時間帯を表す言葉も、1日を24時間で決めたことも、一ヶ月がおよそ30日なことも、1週間や1年の括りも。
時間という目に見えなくて、でも確かに存在しているもの。
人間が生きるうえで共通認識としていられるように、こういう感じでやっていきますと取り決められた手段なのだろうか。
いや、もっと天文学的で自然的なことで、この世界の始まったときからすでに決められていたことなのかもしれない。

時間の共通認識はとても分かりやすくて便利だ。
たとえば、2時と言えば、誰だってああ2時ね、となる。太陽が頂点を過ぎて、少し傾いた頃なんて言おうものなら、そこに見方の相違が生まれて、待ち合わせは難しいものになると思う。

便利なものは、人間を窮屈にしているなと少し感じることがある。
人々はいつも時間に追われている。
それはこの世に人が生まれたときから定められている死へのタイムリミットの存在も大きい。
いつまでも身体が若いままではいない、いつか来る老い、そして死があると分かっているから、急いでいるのか。
腕時計や掛け時計、ビルのデジタル時計、スマホの画面、生活の至るところに時間を意識させるものがあって、まるで急かされているかのような錯覚を覚える。
もう何時だ、打ち合わせが始まる。休憩時間が終わる。約束の時間に遅れる。
生きるもの全てに時間は平等にあるのに、人間だけが時間に囚われているーーーーように見える。
『時間はある』のに、『時間がない』が口癖。


これはあくまで一方的な見方で、窮屈に感じさせているのは私自身かもしれない。
いつも世界を悲観的に見ている。全部を悲しい出来事だと思えば、変な期待も無駄な気持ちの高鳴りで、心を傷付かせずに済むから。

チクタク、チクタク。

今日も時計の針は進む。
時間が過ぎることは、少しの切なさを感じさせることもあるけれど、救いにもなっている。
憂鬱な気分のときがあっても、死にたいほど辛い日があろうとも
止まることなく規則的に止まることなく進む。
進んで、進んで、時間は進んで、いつの日にか、ああ、そんなこともあったかと懐かしんで見るときが必ず来る。
自分の気持ちの問題か、いや、人の心は変わるから、そのきっかけが時間ということもあるだろう。

楽しくない時間は来るが、必ず終わる。

そう心に思うだけで、憂鬱な気持ちもいくばかりか軽くなる。

楽しい時間もいつかは終わってしまう?
憂鬱なときもあるのなら、
楽しい時間もいつかは終わってしまうと考えてしまうのは自然なこと。
でも、時間が巡っている限り、きっとまた楽しい時間は来る。
そう思えば、楽しい宴会の終わりも寂しくなく終われるでしょう?

あれ。結局のところ、自分次第だったってことか。

時間は前にしか進まないから、ポジティブ思考だな…なんてね。

余談だが、この世界を支配できるほどの力を持てたなら、
世界から時計を全て無くしてみたい。

太陽が昇り、沈む。自然があるままの世界では、今の現代人はきっと暮らせないんだろうな。

時間のしがらみから解放されたい。
こうあるべきという固定観念。思い込みから解放されたい。

心が自由になりたい。

12/15/2022, 6:52:01 AM

愛を注いで

遠くで輝くキミを目指して
わたしは進んでいく。

推しが今日も尊いです。

12/13/2022, 7:24:39 AM

心と心

本当の友達。親友。そんなの私には夢物語だ。
ドラマや映画やエピソード集で描かれる人間ドラマは全部幻想。
真夜中の呼び出しにも駆けつけてくれたり、好きな人を奪い合うったり、励まし合ったり、泣き合ったり。
友達ならそういうことをするものだと思いこんできた。
それならば、きっと私には友達がいない。

学生時代、同じクラスというだけで連絡先交換をしまくっていたクラスメイトに混じって、私のリストにもそんなに仲良くない子の名前で埋まっていた。
でも、彼らは結局一度もやり取りしないまま卒業していった。
学校ではそれなりに人付き合いはしていたと思うけど、学校で話せる人たちとわざわざ家に帰ってまで話したいこともなく、たまに来る「今は何してる?」のメッセージも翌日返すということをやっていたから私に連絡してくる人もいなかった。
下手に即レスポンスをしようものなら、そこから怒涛のメッセージ会話が始まってしまう。家にいるときくらい好きなことをして休ませてくれ。
そうして私の連絡アプリには家族と親戚のアドレスだけが残った。
ただ、ひとりだけその内輪の中に混じっている人がいる。
幼少時代から一緒に過ごしてきた彼女。
あの子だけは、一度もぶれずにアプリの一番上に名前を残し続けていた。

小学生のとき、すごく仲良しの子がいた。
上辺のなあなあな関係じゃなくて、お互いに理解し合って、何でも話せて、一緒に行動できる関係。少なくとも私は思っていた。
だから、その子とは常に一緒。班決めも、体育のペアも、教室移動も。
それが友達の証で、ひとりでいる子は友達のいない可哀想な子。
だから、私はその子と一緒にいないといけなかった。周りに可哀想な子だと思われたくなかったから。
でも、その子は私以外の友達関係があった。
当然だ。その子は私ひとりだけのものじゃない。だから、私以外の子と仲良くしても、一緒に遊んでも全く関係ないはずなのに、私は子どもだった。
私以外といるのが嫌で、執拗にその子を束縛した。私といて。一緒にいて。
べったりすればするほど、その子は離れていって、私はひとりになった。他に話せる人もいたけど、いつもどこか上辺な関係だった。
人を気を遣いながら、一定の距離にあった私は、いつの間にか
思い描いていた友達像は嘘なんだと悟った。
気を遣うのが疲れるならひとりでいいと思ったのはその頃だ。

だから意味のない友達ごっこはやめたのに、未だに私に連絡してくる彼女が不思議だ。
学区が一緒だっただけで、別に仲良くもない。
彼女はひとりでいるのが好きなのか、遊びに誘っても断られるし、メッセージ上だと素っ気なくて冷たい。
けれど、彼女とは定期的に会ってはどうでもいい会話をして、適当に時間を過ごして別れを惜しむことなく解散している。
学生時代を終えた後、疎遠になっていく同級生たちの中で彼女だけが唯一の繋がりでいるのだ。
真夜中の呼び出しにはきっと来ないし、恋愛話もしないし、落ちこんだときも一緒になって落ち込んではくれまい。
それでも、彼女とのこの距離感が心地よい。

『次休みいつー?』
新規のメッセージを受信した。彼女からだ。
『今週は土曜日なら空いてるよ。あとは他の日は時間によるね』  
『そー。昼は仕事なんだけど夜会える?』
『大丈夫だよ』
『お、ありがと。じゃあ6時にいつものとこで』

彼女からのメッセージにスタンプで返す。
最近仕事が忙しいって言ってたのに、人と会ってる場合かよと心の中で呟いた。
息抜きだろうか。自惚れだろうが、彼女の頭の中の片隅で私を思い出してくれてたのだったら嬉しい。

歳を重ねてきてみると、今まで考えていた交友関係の在り方が思い込みだったのだと感じられる。
何でも打ち明けられる関係がいい、友達は多い方がいい、ひとりは寂しい奴。嘘ではないが、正しくもない。。
秘密もあるし、言いたくないこともあるし、ひとりの時間も大切だ。
たとえ友達という関係であっても、そちらの事情まで干渉しない。
それでも、なにかずっと繋がっているような感覚。
見えないご縁に恵まれて今があるのかもしれない。

12/12/2022, 6:39:50 AM

何でもないフリ

物事の変化に気づける人ってどれくらいいるのだろう。
あきらかに昨日と違うものの変わりようには少なからず何かあったのかと思うはずだ。
人もそう。前髪切ったの、シャンプー変えたの、メイク変えたの、
普段見ている人の外見は気づけなくもない。
でも、気持ちだけは分からない。
笑顔の盾はその泣いている心も隠してなかったことにさせてしまう。

待ち合わせの場所の5分前に着いたと同時にポケットのスマホが鳴った。
『ごめん、少し遅れそうです』のメッセージが彼女が申し訳なさそうな声とリンクする。
遅刻を人一倍気にしている彼女のことだ、なるべく早く着くように急足でくるに違いない。
『大丈夫だよ。あせらないで、ゆっくり来て』僕はそう返信する。
彼女が時間を守れなかった自分を責めて暗い気持ちになってないといい。
せっかく久しぶりに会えるのだから。
『ごめんね、ありがとう』トーク画面に新規の吹き出しを確認して、トーク画面を遡る。
二週間前くらいからお互いに空いてる日があるかのやり取りが続いていた。
学生の僕と社会人の彼女とでは、生活リズムが当たりまえに違っていた。
僕は僕で大学の友達付き合いや、アルバイト、4年生だから卒業に向けて何かとバタバタしている。彼女も彼女で仕事があるし、プライベートで寛ぎたいときもあるから、休みだからって会おうという期待はしていない。
時間が合えば会おうのスタンスでいるから、1ヶ月会わないなんてときもザラにある。別に恋人同士でもないから、普通のことだ。

しばらくスマホを眺めていると、肩に軽い衝撃が走る。
『ごめん、お待たせ』
肩で息をした彼女が乱れた髪を手櫛で整えながら言った。
『そんなに待ってないから大丈夫だよ。来てくれてありがとね』
『こっちこそだよ!』
ぶんぶんと大袈裟に手を振るが、今日は彼女が合わせてくれた日だ。わざわざ予定を合わせてくれたことが僕は嬉しかった。
『とりあえず、行こうか。お腹空いてる?』
腕時計の針は11時の半分を回わりそうだ。
『うん、朝ご飯みかんしか食べてない』
『まじか。それだけで足りるの?』
『最近お腹の調子悪くて、あんまり食べれなかった』
僕が心配する前に、「でも薬飲んだから大丈夫」っと彼女が笑う。女性だから体調の変化もあるのだろう。
それでも、食べることを幸せだと言っていた彼女がご飯を抜くことが不思議に思える。以前なんか、風邪をひいて寝込んでいるときにアイスを食べたいと所望してきたし、食べたい欲のために料理の仕込みを早朝からやる本格っぷりだ。

そうこうしているうちにお店に着いた。
僕たちが遊ぶ日は決まってここだ。洋風料理が食べれるチェーンのレストラン。メインがほぼパスタやピザが占めているが、その種類の多さに驚く。見開き1ページにいくつものメニューが並んでいる。
何度も食べに来ているのに、彼女はいつも同じものしか頼まない。
『季節のメニューとか期間限定はだめ。どんな味なのか分からないから心配で、食べれなかったらどうしようって思っちゃうの。一度食べたことのあるものなら安心でしょ?』とのこと。外食の冒険はしない。
ちなみ僕もペペロンチーノしか頼まない。辛いものが好きだから。
『最近どう?なにしてたの?』
注文を済ませると彼女は口を開いた。
『この間、就職に必要な資格試験が終わって、やっと解放されたところだよ』
『そっかぁ、お疲れ様だね。じゃあ今日は合格祝いだ』
『大したことじゃないよ、ただの資格試験だよ?』
『いーの、いーの。今日はデザートを奢ってあげよう』
ケタケタと得意気に笑う彼女につられて頬が緩む。
『ありがとう。そっちはどうなの?』
ふいに彼女の表情が固まる。
『…うーん、私は仕事行って、帰ってきて、ごろごろして…っていつも通りかな』と弱々しく笑った。
自分のことを話すのに詰まるのは昔からある癖だけど、その様子に違和感を覚えた。
『お待たせしました。チーズカルボナーラのお客さま』
彼女の名前を呼ぶ声に料理を持ってきた店員さんの声が重なった。
『わあ!美味しそうだね』
料理を目の前に彼女の表情は戻ったので、僕は違和感をパスタに巻きつけて一緒に飲み込んだ。

食後のデザートを堪能して、僕たちは外へ出る。結局、彼女は我慢できずに自分もデザートを食していた。
今日は彼女が買い物をしたいそうなので、適当にふらふらショップを巡った。
隣を歩いてて思ったことだが、彼女は見ない間にどんどん可愛くなっていると思う。髪も丁寧に編みこまれているし、服の色味のバランスもいいし、彼女によく似合っている。
髪なんか一本結びがいいところだった。
『めっちゃ練習したからね』
僕が聞いたら恥ずかしそうにまた笑っていた。
努力家なところは尊敬する。
僕もかっこよくなりたい欲は少なからずあるけれど、ほぼ諦めている。僕は僕で、このままで、まあいい感じだ。
『見てー!かわいくない?』
休憩に立ち寄った珈琲店で彼女が興奮気味にはしゃぐ。
ラテアートがオーダーできるようで、歴代に作ってきたラテアートの写真が飾られている。女の子が好きそうなサービスだ。
彼女は猫のラテアートを頼んだ。
『すごいちゃんと猫に見える』
『そりゃ猫だからね』
かわいいと愛でる彼女を僕はアイスティーを飲みながら見ていた。
彼女は散々眺めてから惜しむようにカップに口をつけた。
『美味しい…さすが猫だけあるね』
『なんだそれ』
『なんかこうやってのんびりするの久しぶりだからかな…染みるね』
えへへっと彼女が笑う。
その表情が痛々しくて僕は顔をしかめる。
『なにかあったの?』
『なんでもないよ!ラテが美味しいなって思っただけ』
嘘だ。何かあったときヘラヘラするのも、彼女のくせだ。
『嘘つき。キミの何でもないは何かあるときだよ』
がんばり屋さんで、思いやりがあって優しくて、それなのに自分には厳しい彼女。優しすぎて他人優先にして、いっぱいになるまでがんばる。
『何年幼馴染やってると思ってるの?』
その度に見てきた。彼女が落ち込んで、元気になって、またいっぱいになるまでがんばって、なんでもひとりで抱えようとするところを。
『そうだね、やっぱ分かっちゃうかな…』
力なく笑った瞳が揺れる。
『話聞くぐらいはできるよ。力になれることならやるし。いつも言ってるじゃん』
辛いことがあったときは落ち込んでいい。
悲しかったら泣いていい。
ひとりで全部抱え込まなくていい。
『何でもないフリして、笑わらなくていいから』
キミの悲しさを笑顔の盾で隠さないでいて欲しいんだ。

12/9/2022, 10:36:27 AM

ありがとう、ごめんね

『好きです。付き合ってください』

目の前の告白が、少女はどこか他人事のように感じていた。

緊張感が漂う。声を発するのも憚られる静かに吹奏楽部の楽器の音が遠くで鳴っていた。

向かいに立った同じ制服を着た少年。
彼とは委員会が同じで話すようになり、委員会外でも見かければ声をかけるくらいには仲が良かった。

『ありがとう。でも、ごめんなさい』

少女はもうテンプレートになった言葉を繰り返す。

明るく、軽く、笑顔で。

『…そっか。』

少年は落胆を隠すように、息を吐いた。

『理由聞いてもいい?』

好きな相手の告白を断る理由を知りたいと思うのは普通の流れだろう。

好きな人がいる。今は部活に集中したい。恋愛に興味がない。

少女の頭の中にありきたりな言葉が浮かぶ。
今までもこの常套句を使う度に、少女は胸が痛んでいた。
告白の返事をするより、断る理由を話すことの方が少女にとっては心苦しい。

適当にあしらってしまえばいいもの、少女は自分の気持ちに嘘をつくのが嫌だったから。

本当の理由を、少女は誰にも話したことがない。
彼女のトップシークレット。

『好きな人がいるとか?』

沈黙をする少女に少年が問う。

『うん…またそんな感じ』

努めて、明るく、軽くだ。

『そっか…。よかったらこれからも友達として仲良くしてくれると嬉しい』

少年がさっぱりした人で良かった。
深く追及されないまま会話を締められる。

『うん、こちらこそ。ありがとね』

いつの間にか吹奏楽の演奏は終わっていた。






Next