[僕だけの君]
ずっと、大学の入学式のときに見つけてから君に恋をしていた。気づいたら、君の全部が知りたくて日常のルーティーンや友情関係まで把握していた。
君には悟らせないように友達にもなった。
僕を見つめる瞳はあまりにも無垢で純粋で汚せない雰囲気があった。
その瞳をその声を僕だけに欲しい。狂おしいほど君を愛してしまった僕は君を家に誘った。
何も知らない君は紅茶を飲んで、今はもう色白な肌が更に白くて冷たくなって座っている。
「これで、僕とずっーと一緒だね」
思わず、返事が無くても微笑んでしまう。
僕が後悔してるのはその笑顔と声が2度と聞けなくなったことだ。
[風向きを変えたかった]
もう、なんか疲れたな。ふと最近、毎日思っていること。この人生に終止符をうてたら。でも、親が悲しむし、友達も…とまだ生きる理由をこじつけてる。そんな想いは誰にも話せるわけがなくて今日も嘘を始める。
平凡で波風たてない学校生活、それなりの成績、何も困ってることは無いし、端からみたらそれは幸せなのかもしれない。
でも、何か死んだように生きるなら無くても良いんじゃないかと思う。
最後の心残りは…
「来奈、来たよ」そっと病室に入ると私より一回り小さくて幼い私に少し似た妹がこっちをみた。
「お姉ちゃん~、どうしたの?」来奈が手をふる。
「来奈…。私ね、あの、ね」言葉を紡ごうとしても出てこない。涙だけが零れ落ちる。
「大丈夫だよ、お姉ちゃん。」私の背中を優しく撫でてくれた。これからはしたいことの為に生きよう。
病室には柔らかな日差しと風が見守っていた。
[歪んでいても2人だけ]
「愛してたで」でも「もう、会わんといて」
彼女は「なんで?!私の悪いとこあったら直すからっ」涙目で訴えてくる。けど、心は何も感じない。
「愛してたけど、好きじゃなかった。それだけ」
泣きながら何か言ってる元カノをおいて今から待ち合わせしてるカフェに向かう。
「ごめん、遅なったわ」と先客に声かける。
「ほんとだよ」といって甘そうなパフェを口を運んでる。口にいっぱい詰め込むそんな姿すらも可愛いと思うのは重症かもしれへん。
「ごめんって。今日の埋め合わせ、またしような」
と言うと「約束ね?」と彼、いや僕にとっては彼女がぱあっと顔を明るくして言った。
君がはじめてだった。こんなにも愛おしく思える人は。君に釣り合いたくて、付き合ってた人と全員別れたし、煙草も喘息の君に負担をかけたくなくてやめた。真面目に働き出せた。
「全部、梨央のおかげやで。世界で一番好き」
彼はちょっと頬を膨らませて「LIKE?LOVE?」
ときいてくる。
「そんなん、どっちもに決まってるやん。梨央だけに僕の想いを捧げる。最後は2人で地獄にいこーな」
梨央はとびきりの笑顔で頷いた。
[ブルークレールの朝]
ぽかぽかと温かい陽気が羽をあたためる。ふわふわと風に揺られている白い蝶が目の前を通りすぎた。
「あっ、モンシロチョウ」口に出したときにはもう、遠くに飛んでいってた。青に混ざる白。
「何?そんなに珍しくもないじゃん」と登校途中に友達は言う。確かに、珍しくはない。でも、あの日常に紛れててどこか自由に飛んでいける白い羽を持っていて羨ましく思う。
「珍しくはないよね、でもね、みてると何かふわふわした気持ちにならない?」
ふと、学校の近くにたっている時計を見ると後、4分でホームルームが始まる。
「急がなきゃ、遅刻になっちゃうよ!早く行こっ」
友達の腕をつかんでランドセルを揺らして走った。
[レモン味の行方]
「一年後、私たちは何してるかな?」氷菓子を食べながら呟いて横を見ると横で本を読んだ彼はつまらなさそうに「何もしてないんじゃない、たぶん」とまた視線を本に移していた。もう少し話をこっちを向いて聴いてほしいとは思わない。彼といれるだけで楽しいから。私はまだ、言えない。
病院で半年前に余命宣告されていることを。
夏は嫌いだったはずなのに。君の笑顔が僕の頭から離れない。氷菓子を食べてそっけない僕にいつも話しかけてくれて嬉しかった。視線を合わせるのことができなくて読書してるフリをしてた。
君がいつも食べてたみたいに真似して僕も氷菓子を食べてみるけど甘くて、進まない。
溶けかけた氷菓子が彼女との会話を思い出させた。
「また、あの夏をもう一回過ごせたら」