Rei

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[レモン味の行方]

「一年後、私たちは何してるかな?」氷菓子を食べながら呟いて横を見ると横で本を読んだ彼はつまらなさそうに「何もしてないんじゃない、たぶん」とまた視線を本に移していた。もう少し話をこっちを向いて聴いてほしいとは思わない。彼といれるだけで楽しいから。私はまだ、言えない。
病院で半年前に余命宣告されていることを。


夏は嫌いだったはずなのに。君の笑顔が僕の頭から離れない。氷菓子を食べてそっけない僕にいつも話しかけてくれて嬉しかった。視線を合わせるのことができなくて読書してるフリをしてた。
君がいつも食べてたみたいに真似して僕も氷菓子を食べてみるけど甘くて、進まない。
溶けかけた氷菓子が彼女との会話を思い出させた。
「また、あの夏をもう一回過ごせたら」

5/8/2024, 10:39:41 PM