ある日の休日の昼下がり。君が無邪気な笑顔で僕に話しかける。「ね!今から隠れんぼしよ!」僕が鬼だということはすでに決まっていたらしく、君は目をつぶって数えてね、なんていう。君のいう通りに数える。10秒経って、もういいよという君の声が聞こえる。僕の辺りを見回すとカーテンから透けて見える彼女の姿が見える。思わず笑みがこぼれる。
彼女がいるカーテンを優しく空けて「みーつけた」って僕がいうと君は少し悔しそうな顔をした後に「さすがだね〜」という。ふふっと優しい笑顔になって僕のことを見てくれる。久々の2人揃っての休日で珍しく甘えモードの彼女が愛おしい。そんな彼女は言う。
「なんか、私がどこに行っても、隠れても見つけてくれそうだから、私がもしどこかに行っても隠れても見つけてね?」
冗談っぽく言う君の笑顔と声に僕は「もちろん、どこに行っても見つけるから」と答える。その答えに嬉しそうに頰を赤らめる君の頰。僕はそんな君を見るのが大好きだった。
でも、君はすごく難しいところに行ってしまった。僕が行くにはまだ数十年もかかるかもしれない、もしかしたら明日にも行くかも知れない場所。その場所にいつになったら行くことができるのか神様しか知らない。
ある休日の昼下がり。カーテンが揺れて君がいる気がしてカーテンの方に視線を向ける。だけどそんなことは起きなくて、また時間を巻き戻したい。どうしようもできない現実が憎い。そんな現実ではシトシトと雨が降り始める。
~カーテン~
涙の理由
土曜日か日曜日に投稿できたらします
クタクタになるまで踊りきった私の体は疲れきっていた。やっとの思いでグループのセンターを取れた私は日々体が限界を迎えるまでダンスレッスン・歌のレッスンに番組収録。どれも私がこの業界に入ってから憧れていた世界。楽しさが1番あるけど、この業界は表では宝石の輝きのように明るい世界に見えるが実際は習字で使う墨汁よりも黒色の世界。ネットでのアンチはもちろんスタッフやメンバーからの私に対しての愚痴は聞こえないふりができるまでになっていた。
特に私が所属しているグループは人数も多いし、揉め事も大して大きい問題でなければマネージャーも見て見ぬふりがほとんど。マネージャーは私たちの恋愛については一切何も言わない。週刊誌に撮られても何かしらのコメントを出すだけで自分たちでどうにかしないといけないし、バレるとメンバーから冷ややかな目で見られる。ただでさえ、今の状態でもメンバーからは良く見られていないのにバレたらさらに状態が悪くなる。
そんな世界にいる私に束の間の休息をくれるのは、私がこの業界に入る前から付き合っていた彼との時間。私がこの業界に入ってからも普通に接してくれる所が好き。あの業界の人達には内緒の私と彼との束の間の休息の時間。
~束の間の休息~
彼と私の最後の時間。ずっと続くと思っていた時間が一週間前に一気に短くなった。気づかなくて良いものに気づいてしまった自分が憎かった。
一週間前、彼に伝えていた時間よりも早く帰ることができて、家にいる彼には内緒で帰ることにした。それがダメだった。こっそりと家に入ると彼が他の女の人とハグをしているところを少し空いた扉の隙間から確認することができた。そして私にも言っていた声で愛を囁いて私が見たくないことのはじまりも。それをみた私はまた静かに外に出て予定の時間まで時間をつぶした。
予定の時間に帰ると彼は何も無かったように出迎える彼。私も何事もなかったように彼の出迎えに答える。彼のそんな行動に嫌気が差し一週間後にここを出ていこうと心に決めた。
今日の彼は1日だけの出張で家を出ていたのをいいことに私もキャリーケースを玄関までに持っていく。そして、スマホを取り出して彼との連絡先、写真、彼に関するものはすべて捨てた。ちょっとした置き手紙をダイニングテーブルに残して。
力を込めて扉を開ける。あいつにビンタを食らわせることができない代わりに扉の取手に力を込めてあいつにビンタを食らわせるみたいに、扉を開ける。
「あの人とお幸せに,,,」
あいつのことを純粋に好きな気持ちから溢れた一筋の涙で文字が滲んだ一枚の置き手紙をあいつが見て、後悔してほしいと私の心が言う。
~力を込めて~
3年生になって初めて同じクラスになった君。そして3年生の間ずっと私の隣の席だった。彼から名前を聞かれて褒められてから私たちが親しくなった。神様のちょっとしたいたずらに翻弄されるかのように、私は君に恋をした。でも君は問題があって留年していた一個上の先輩でそれに彼女持ち。
でも、そんなことをお構いなしに君に私はどんどん堕ちていった。朝の教室の挨拶から帰りのSTの後のお別れの挨拶も、一瞬一瞬が私のかけがえのないものになっていった。そんな幸せな日々が過ぎるのはすごくはやかった。
怒涛のように無事に卒業式を前日に控えた。今回の卒業式に無事に先輩は卒業できるようだった。前日は午前中で終わり、早く帰るのもよし、学校にも残っていてもよし。私は後者を選んだ。まだ、この愛おしい日々に別れを告げたくなかった。
教室の君の隣に座れる特等席に座り、机に突っ伏す。今でも思い出せる。例えば、君の授業中の居眠りとか私の視線に気づいて笑いかけてくれる笑顔,,,。過ぎた日を想うと、胸の何処かで小さな痛みを感じる。どんなに好きでも先輩には一個上の彼女がいる。教室の窓の外から君と君の彼女。君は私に向けた笑顔よりも愛おしいような笑顔と眼差しで見ていた。
「,,,大嫌い,,,」
クラスのみんなが友達同士での最後の思い出を作っている間に私は誰にも聞こえないような声で窓の外にいる君に向けて最後に私の気持ちを伝えた。でも、そのときに私の頰に涙がつたっていた。
そして数年経った今、君の結婚式前日。君との過ぎた日を想う。
~過ぎた日を想う~