ある日の休日の昼下がり。君が無邪気な笑顔で僕に話しかける。「ね!今から隠れんぼしよ!」僕が鬼だということはすでに決まっていたらしく、君は目をつぶって数えてね、なんていう。君のいう通りに数える。10秒経って、もういいよという君の声が聞こえる。僕の辺りを見回すとカーテンから透けて見える彼女の姿が見える。思わず笑みがこぼれる。
彼女がいるカーテンを優しく空けて「みーつけた」って僕がいうと君は少し悔しそうな顔をした後に「さすがだね〜」という。ふふっと優しい笑顔になって僕のことを見てくれる。久々の2人揃っての休日で珍しく甘えモードの彼女が愛おしい。そんな彼女は言う。
「なんか、私がどこに行っても、隠れても見つけてくれそうだから、私がもしどこかに行っても隠れても見つけてね?」
冗談っぽく言う君の笑顔と声に僕は「もちろん、どこに行っても見つけるから」と答える。その答えに嬉しそうに頰を赤らめる君の頰。僕はそんな君を見るのが大好きだった。
でも、君はすごく難しいところに行ってしまった。僕が行くにはまだ数十年もかかるかもしれない、もしかしたら明日にも行くかも知れない場所。その場所にいつになったら行くことができるのか神様しか知らない。
ある休日の昼下がり。カーテンが揺れて君がいる気がしてカーテンの方に視線を向ける。だけどそんなことは起きなくて、また時間を巻き戻したい。どうしようもできない現実が憎い。そんな現実ではシトシトと雨が降り始める。
~カーテン~
10/12/2024, 7:28:38 AM