彼と私の最後の時間。ずっと続くと思っていた時間が一週間前に一気に短くなった。気づかなくて良いものに気づいてしまった自分が憎かった。
一週間前、彼に伝えていた時間よりも早く帰ることができて、家にいる彼には内緒で帰ることにした。それがダメだった。こっそりと家に入ると彼が他の女の人とハグをしているところを少し空いた扉の隙間から確認することができた。そして私にも言っていた声で愛を囁いて私が見たくないことのはじまりも。それをみた私はまた静かに外に出て予定の時間まで時間をつぶした。
予定の時間に帰ると彼は何も無かったように出迎える彼。私も何事もなかったように彼の出迎えに答える。彼のそんな行動に嫌気が差し一週間後にここを出ていこうと心に決めた。
今日の彼は1日だけの出張で家を出ていたのをいいことに私もキャリーケースを玄関までに持っていく。そして、スマホを取り出して彼との連絡先、写真、彼に関するものはすべて捨てた。ちょっとした置き手紙をダイニングテーブルに残して。
力を込めて扉を開ける。あいつにビンタを食らわせることができない代わりに扉の取手に力を込めてあいつにビンタを食らわせるみたいに、扉を開ける。
「あの人とお幸せに,,,」
あいつのことを純粋に好きな気持ちから溢れた一筋の涙で文字が滲んだ一枚の置き手紙をあいつが見て、後悔してほしいと私の心が言う。
~力を込めて~
10/8/2024, 4:00:45 AM