友人関係は大事にしろ。
親は大事にしろ。
家族は大事にしろ。
大事にしたい。
そう願っても。
涙を流しても。
大事にできない日が、
いつか来るんだよ。
自分のこともそうだけどね。
私の頭が真っ白になった。
地面に横たわる人から広がる赤い液体。
見覚えのある顔。いつも話しかけた人の顔。
どんなときも支えあった友達の顔。
友達の華奢な体を吹き飛ばした車は走っていった。
何かを伝えようとする友達は、スマホを手に取り、震える手で文字を打つ……
「自分を責めないで」
だんだん頭が働き理解したくない状況を理解していく。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ
認めたくない。
なんであんたみたいな良い奴がこんな目に会うの?
なんであんたが死ななきゃいけないの……?
お願い……誰か助けてよ……まだ息があるの!!!
助けてよ!!
こんなとき、時間を止めれる能力があれば彼を助けられたのに……。親友を失ったあとに、私はそんな妄想しか出来なかった。
「花になりたい」
故郷の花畑はとても美しかった。とある果樹園を営む夫婦が趣味で作ったその花畑に何度も訪れた。ここの植物は全てが生き生きしていて、毎年すくすくと育つ。きっと沢山の愛情や暖かい陽の光を浴びているのだろう。その夫婦がつくるはまるで絵に描かれたリンゴのような色鮮やかな赤色で、とても美味しかった。
そんなある日僕は花畑にマッチをを投げ入れた。リンゴをほおばっている時に頭を撫でてくれたもみじの葉はよく燃えた。石畳の上に敷き詰められた葉が燃えていくときに通行人が通りかかり火が鎮火された。
夫婦は犯人となった僕の顔を見て涙を流した。どうしてこんなことをしたのか問い詰められた。羨ましかった。平等に暖かくて優しい愛情を受けてすくすく育つ花々の姿が。血の繋がった他人と比べられて見捨てられた僕とは住む世界が違いすぎたんだ。僕が夫婦に答えられる言葉は1つ「嫉妬心です。僕は優しい光をみんなと浴びれる花になりたかった。」
「ひんやりとした君とのやり取り」
暑くてとろけそうな日に、学業が終わり帰宅した私は冷たい物が眠る冷蔵庫へ駆けた。好きなチョコミントのアイスとスポーツドリンクを手に取り、椅子に腰を下ろし一息をつく。アイスの一口をほうばろうとするころスマホが震えて音を立てた。お預けになったアイスを見つめスマホを手に取った。
塾が同じだったのでノリでLINEを交換した君。友達追加してからスタンプしか送っていない君。君からのLINEだった。気づかぬ間に悪行をしでかしたのかと思うとなんだか体が冷えてきて、さっきよりもアイスの輝きが引いて見えた。そんな君が返した返信は爆笑の嵐。私は頭がハテナでいっぱいになり、過去の私が何を送りしでかしたのかを確認した。
私は真っ白になった頭に従い、震える手でアイスを一口食べた。うん。味があんまりしない。ちょっと溶けてて食感はよかった。なんと私が送った画像は、ズッ友的な信じられないくらい仲がいいマイフレンドに送る予定であったはずのおもしろ画像や推しのちょっぴりセンシティブゥな画像を君に送ってしまった。うん。やばいね。
とりあえず送信ミスであることの謝罪を送ってその場をくぐり抜けた。今後の君との関係性の変化に考察しながらアイスのゴミを捨てた。end
追記:ちなみにスポーツドリンクは送った画像にツボりながら美味しくいただきました。ご安心を。
勘違いしていたんだ。君は世界で一つだけってね。
優秀で秀才だった君に誰もが羨み君の努力を認めていた。僕もそうさ。だからこそ、君のことをなんでも出来る我々とは一味もふた味も違う者だと思っていた。
でも違ったんだ。君は物じゃなく我々と同じ人間で、限界もちゃんとあって、プレッシャーだってもちろん感じていただろう。みんなからのプレッシャーが積み重なって君を押し潰して、色んな責任を笑顔で渡されてきたのだろう。
気づくのが遅すぎた。今でも覚えている。線香の匂いが漂う部屋に誰もが通常なら眠気を誘われる言葉が耳に入り込んでくる。布切れで罪悪感を拭いきれなかった僕は、冷たい石になった君にこう言い続けている。
「君は世界に1人だけ」