ナタで ココ

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10/9/2025, 1:09:50 AM


お題「愛する、それ故に」

 
題「真っ白な部屋」
 
1592文字


この部屋はこんなにも空っぽだっただろうか。

いいえ。
そんな事はない。

 壁一面は真っ白で、日の当たるところは焼けてクリーム色に染まっている。なのに真っ白なキャンバスが飾られてあるのは不自然か。
こんな展覧会は嫌だなぁ。

 棚と机には大学で使う教材と文房具、後、いつかは忘れたけど家族と旅行に行った時に買ってもらった変な形の置物がちょこっと(笑)
所々埃が溜まってて不自然に綺麗な箇所のある棚と机。
所謂お姑さん、なんて言う人が見たら気絶しちゃうかも笑。それはネットの見過ぎ?

 クローゼットの中身はいろんな色が詰まっている。
それだけ服があるという事だ。白、黒、灰、赤、黄、緑、紫…こう見ると沢山ある服達…そうか、季節ごとに流行りを抑えて可愛い服を買っているうちにこんなにも私のクローゼットはカラフルになったのか。
あれ、そう言えば青だけこの中にはないな

…。

 のりの匂いのするカーテンとラグ。何色にしようかと悩んだ時に無難に何にでも合いそうな白色をセットで買った。
私の趣味かと言われればそうでもないかもしれない。


 山積みになった段ボール。中には物がいっぱい入っている。
何が入っているかって?それは思い出の品数。
大切なものってしまい込んで大切にしたいでしょ?だから引越しってわけじゃないよ。引越しなら教材も文房具も、変な置物もないし、ラグもカーテンも適当に買うわけないじゃん。

思い出の品数ってなあに?

それはね、たくさんの青色。


ほんとはね、

本当はね、


 壁には青く輝いてた大好きな人のタペストリーとかポスターが飾られてたの。何年もずっとね。だから今更剥がすと、その下だけ白くて飾られてないところは焼けてクリーム色になっちゃったの。
きっと前の方が展覧会として観客を集められたんじゃないかな。青くて綺麗だったもん。今でも鮮明に覚えてる。

 棚と机にはね、これでもかってほどの大好きな人のぬいぐるみとかアクリルスタンド、キーホルダー、写真、フィギュア、アルバムがあってね、勉強するスペースを無理やり作ってた程。だから変な隙間には埃が溜まってるし、変に綺麗な箇所がいっぱいあるの。
お姑さんが居たならこれはこれでびっくりしちゃうかな。

 クローゼットには実は青色はあった。青色のパーカーにTシャツ。本当はワンピースにコート、スカートとかブラウスもあったけど、大好きな人は青いから思い出としてそれもクローゼットから追い出して段ボールに大事にしまっちゃった。
実は青はあったんだ。場所が違うだけ。

 ラグもカーテンも本当は青かった。カーテンは、女の子の部屋だからママとパパにはもっと無難な色にしなさいって言われて少し揉めた思い出がある。その時妥協して選んだのは紺色だったなぁ。ママもパパも大好きだよ。でも大好きな人の方が好きだったかも。

引越しもしないのに大好きな人を段ボールに入れたのは、あまりにもあの人を愛しすぎちゃったから。

あの時好きになったあの人は数年前のあの人。今のあの人も中身も見た目もそんなに変わらないけど、人って日々成長する生き物でしょ?でも変化に耐えられない生き物でもある。
変化に耐えられない恒温動物な私は変わりゆく成長するあの人を私は受け入れられないから、変わらない気持ちが冷めないように、上がらない様に、愛してるまま、嫌いになりたくないっていう愛する、それ故に思い出を愛してる貴方を私の中だけに留めることにしました。
だから、目につくところに愛する人が居ると、苦しくなって、体温が変化しそうだから、しまったんだ。


私の部屋は空っぽじゃない。だって私の中で青く萌えている。

これからこの白いキャンバスにはどんな色がつくだろうか。できれば、その色を混ぜた時にぐちゃぐちゃな汚い色になってほしい。


🔚


久々に書いたから下手で申し訳ないです。

11/12/2024, 7:44:05 PM

若干官能注意。凍結だけは勘弁してください。


871文字



「映らぬ彼女」


 目と鼻の先の距離のオマエは赤子のように頬を紅潮させ、目尻から宝石のような涙を流し、赤く熟れた唇の隙間からは消化液が砂糖水に感じるほどの甘く煮詰めた透明な液体が唇と顎の輪郭をなぞりながら首下に流れてゆく。空いた口からは止まることなく発情した猫のようににゃんにゃんと甲高い鳴き声が僕の脳を刺激する。
婀娜なオマエを見れば見るほどに消耗しない僕の中の劣情が熱を増す。
それに気づくオマエは僕を見つめる。そんなオマエの瞳には僕が映るけど、僕の瞳にはちゃんとオマエが映っているのだろうか。


「そっかぁ、じゃあそろそろお開きだね」

「会計は僕が持つから安心しろ」

「いつもありがとぅ~。すきだよぉ。」

「僕もだよ」

 ピーロートークも程々に、愛情あふれる彼女の瞳を逃しはしない。こうして僕のことを心から愛してくれて、信頼してくれる目が堪らなく好きだ。
宵の内に解散するように提案したのは彼女。理由なんてどうでも良くて、浮気していても、僕のことをどうしようもなく信頼と愛情の眼差しをむけてくれるから満足だ。


さぁ、僕も、家族の待つ家に帰ろう。

彼女のいる部屋の扉を閉めたら鞄から銀色のリングを薬指に嵌め込みその場を後にする。



「おかえりなさい。今日もお疲れ様」

「ただいまぁ、疲れたよ。」

笑顔で迎えてくれるオマエが居る。

「ご飯とお風呂、どっちも準備できてるよ」

「ありがとう」

また彼女は頬をりんごのように染め上げる

「最後は私も頂いてね」

愛の籠った眼差しと期待と欲情した目に射止められる。

「いいデザートだ」

腰に手を回していやらしく撫でれば喜ぶように体が反応した。

 彼女達の信頼と愛の籠った純粋な眼に背中がゾクゾクする。こんなにも愛してやまない想い人は嘘を重ねて、そいつ自身には微塵も愛なんてないのに。
それでも知らないところで裏切っているという概念が、真実を知った瞬間に輝く瞳が一気に真っ黒に染まる。そうなるかもしれないというスリルが堪らなく愛おしい。
僕はスリルというモノに恋をして愛してる。



お題
スリル


駄文で申し訳ないです。

10/6/2024, 9:25:27 PM

 「冷めた熱に焦がれて」 1275文字



青く暑い夏は秋の物涼しげな微風に微々としてだが、去り行き、紅く染まり、淡く薄くなりゆく植物のほのかな青の匂いが涼しい秋の微風と共に街中に流れていく。
まだコートやマフラー、手袋の防寒着は必要そうにはないが、これからどんどん寒くなる事を見越せばそろそろ衣替えの準備を進める時期。
今年の青かったあの夏は、九月になっても中々去ることをせず、夏が滞住しているのか秋がサボっているのか、いやはや。ようやく秋を感じ始めた頃には9月終旬という時がすぎた。

 青くて、暑い、あの夏は私にとっては飛んだ邪魔者で、夏が始まってクラスの皆が浮かれ立っている中私1人がきっと早く早く夏の過ぎ去れと願っていた。熱くて、鬱陶しい服のベタつきも、髪の毛の乱れも、汗と制汗剤などの香料でとんでもない臭いの更衣室。青く眩しく映る窓から見たグラウンドと空。夏休みの予定を立てる民衆たち。どれも彼もが鬱陶しくて煩わしかった。
青く輝き暑い空と同じくらい周りの人間も青くて、私はどうしようもなく気に食わなかった。

 なるべく涼しいところ、夏をあまり感じさせない室内に篭って時を越し、秋の涼しさをまっていた。
そんな事を日も忘れる様に過ごしていればあっという間に夏はすぎゆくもの。待ち望んだ秋がどんなに遅くても早くても、必ずきてくれればそれでよかった。

 涼しい風と紅く染まりつつある景色、ふんわりと揺れる髪、過ごしやすい天気、秋を知らせる合図が鳴った。
待ち望んだ秋。


のはずなのに、何故だか秋の涼しい微風と同じ様に私の心も冷たくなっていた。
秋を待ち望んで、夏を忌々しく思っていた私が、
夏に焦がれている。思わず口から出た「なんで」の言葉が風によって流され、冷たい風が頭を冷静にさせる。紅く染まった並木通りを歩きながら考える。そのゆく先は足に任せて考えれば段々と明白になっていく記憶。

全部気づいた頃には夏の間お世話になった図書館の前に辿り着いていた。


 あの図書館で偶々出会った男子高校生。夏の間だけ、私といてくれた男の子。勉強を教えて貰ったり、教えたり、自分の学校の事や漫画や本のくだらない事を話した思い出。忘れちゃうくらい小さな事で繋がって、あの一カ月間だけ仲良くなった。どうせもう関わらないと思っていたからこそ、名前も下の名前しか知らなくて、どこの学校かも、何歳かも、連絡先も、何にも知らないあの男の子。
あの人と過ごしている間、確かに楽しかった。でも、夏限定だと決めていた私はあの人との心の繋がりを断ち切ってしまった。

そんな夏が過ぎ去り秋になった今、秋の寂しさが私の心を満たしていく。
あんなにも煩わしかった夏の青さが、熱が、私もあの時、確かに感じていた。
それに気づいたのは今さっきで、あの男の子と好きだった秋を共にしたかったという思いは後の祭り。

初めて感じた青さと熱に、秋の冷めた空気の中、私は焦がれていく。
青くて暑い過ぎた日々を想う。


薄手一枚では足りないくらいに寒い。



🔚

「過ぎた日を想う」




きっとまたその男の子とは会えるかもしれないけど、自分から夏限定と切っておいて、また繋がろうなんてことはできない。そんな事を思う女の子のお話。

8/28/2024, 11:15:40 PM

1727文字



寝ている脳がいきなり覚めた。変な胸騒ぎがした。
変に胸の奥がザワザワと騒ぎ立てる。
本当ならこのままもう一度寝に入るのに、体は勝手に上半身を叩き起こした。
今の今まで寝ていた頭は思く、ずっしりと感じる。
小さい頃から真っ暗では寝れず、常夜灯でしか寝れない自分は大人になった今もこの温かみを帯びるオレンジ色の落ち着いた空間の下眠る。

そう言えば彼女は真っ暗で寝るから、自分とは一緒に寝れないって言ってた。

部屋を見渡せばいつもと変わらない殺風景な空間。一つ言えるとすれば部屋の隅の棚の上に、オレンジ色の毛並みがふわふわしたテディベアのぬいぐるみがかざられている。負けず嫌いな彼女が一生懸命クレーンゲームで取ってくれた。僕は大きすぎる、とか、僕の部屋には合わないからって言って断ったのに頑なに僕にあげると譲らなかった。最終的には『あたしが一生懸命〇〇の為に取ったのに…』なんて拗ねた顔で言うもんで、僕がこの顔に弱いってこと知っててやってきたからやっぱり負けて仕方なく貰った。
でも、ぬいぐるみが好きなのは彼女で、僕の部屋よりも大きな寝室で、僕よりも大きなベッドいっぱいにぬいぐるみを詰めてる彼女。しかもあの時目を輝かせてるから取ってあげようか?なんて言ったらより大きな目をキラキラと輝かせてたくせに、彼女は優しいからハッとした顔をして別に欲しく無いよ。なんて意味のない嘘をついた。本当は欲しいくせに意地を張る彼女が可愛くて、じゃあ僕のために取ってよ。って言ったら『うん!』と花の咲く様な笑顔でゲームをプレイし続けた。苦戦し続けていたが負けず嫌いな彼女の性分、奮闘し続ければいつかは取れるもので、取れた時はぬいぐるみを抱いて『あげる!』って言われて嬉しかった。けど欲しいのは君でしょなんて言えば図星を突かれた様な顔をしたけど頑なに彼女の主張は譲らなかった。
僕はその大きなぬいぐるみを抱く君の笑顔を見たかったけど、その自慢げな表情もいいかも。って思ったのは内緒。


思い出に浸っていればザワザワとした胸騒ぎも落ち着いてきて、もう一度寝ようかとした時、「ピンポーン」と夜に合わない軽快な音が聞こえた。
こんな時間に…って思ったけどもしかしてなんて言う淡い期待を抱いて。

カメラなんて見ずにすぐさまぼーっとしていた頭を起こして座り込んだ体を立ち上がりベッドから離して早足で玄関に向かった。
ドキドキしながら玄関の扉を開ければ、君がいた。
突然の君の訪問。
何だろうと心配の気持ちと、嬉しい気持ち。
君は俯いて顔が見えない。服は可愛いパジャマのままで、何かあったのかと心配になる。
優しくどうしたの?と問い掛けても反応はない。その分もっと深く頭を下げてしまった。
困ったなと思いつつももう一度どうしたの、?と問い掛けようと、どうし、まで言った辺りで急に彼女が抱きついてきた。
僕はもっと困惑。彼女は僕の胸に頭をぐりぐりと押し付ける。可愛いけど心配で、優しく包み込む様に彼女の頭と背中を撫でる。そうすれば彼女の体が微かに動き、泣いているのだと察する。
彼女が泣いている時に独りにさせなくてよかったと言う思いと、どうしたのか心配のおもい。暫く撫でていると彼女が急に顔を上げた。その顔は泣き腫らした目に、不安と申し訳ないと言う顔。そして彼女は言った。『一緒に寝よう。』と。驚きながらも彼女のために何でもしてあげたい。その抱えている苦しみから解放してあげたい。だから『いいよ。』と彼女の耳に優しく囁いた。

そのまま彼女の靴を脱がして抱き上げて僕の寝室に向かう。
ついたら彼女を先に寝転がらせて布団をかける。そしてその隣に僕が入り、まだ寂しそうな顔をする彼女を抱き寄せる。すると安心したのか緩い顔つきになった。

『どうしたの。』

『別に』

『僕は常夜灯でしか寝れないよ。』

『別にいい。』

『僕のベッド狭いよ』

『〇〇を抱き枕にするから気にならない』

『僕の部屋、殺風景だよ。』

『…〇〇が居るから寂しくない。』

いつもそんなこと言わない彼女が、甘い言葉を呟いて、甘い寝顔で微笑んだ。
僕の部屋は彼女には合わないけど、でも、君が大好きな僕だから。

🔚


『寂しい夜は大好きな貴方に囲まれて』



8/27/2024, 10:58:23 PM

なにもかもうまくいかない


そんな時もあると思う。
そんな時はお家の自室の部屋のベッドに転がり毛布に包まって寝るのに限る。


うまくいかないことが続く。

そんな時もあると思う。
そんな時も同じ様に自室の部屋のベッドに転がり毛布に包まって寝る。



でも、寝れない日もあると思う。


そんな時はベッドで暖かい毛布に包まって大好きな音楽を聴いて目を瞑る。
そうしたらいつかは寝れる時が来る。














何にもうまくいかなかった。
梅雨みたいにそんなうまくいかない日々は続く。
人生100年分を1年間の四季で例えたらこの梅雨の時期は人生の何年分なんだろう。
いつこの梅雨は明けるのだろう。

勉強したのに赤点を取った。
先生に叱られた。
僕はちゃんと係の仕事をしたのに、サボった先輩の身代わりにされた。
先輩と先生に叱られた。
部活動で一生懸命絵を描いたけどこの前と比べると何も変わってなかった。
先生と多学年に笑われた。
バイトに5分前に着いたら遅いって言われた。
5分遅刻したイケメンの同い年の人には何にも言わなかった。
お客さんがグラスを倒したのに僕のせいにされた。
色んな人に叱られた。
色んな人に笑われた。

家に帰ったらまた赤点取ったの?って親に怒られる。
全然勉強しない地頭のいい弟には笑われる。


ずっとうまくいかない。ずっと僕の人生は雨が降り続けてる。
晴れる日は来るのだろうか。

バイト帰り、雨が降っていた。今日に限って折り畳み傘を忘れた。雨は土砂降り。病む気配もおさまる気配もない。仕方く濡れて帰るしか無い。

何にもうまくいかない日々。

何もうまくいかないなら早く家に帰って部屋に篭って大好きな曲を聴きながら寝よう。

そうは思うけど足取りは重い。もっと早く帰りたいのに、体もうまく機能しない。


帰り道、僕は道端でブレーキを踏んだ。
もう,これ以上足は動かない。体が本能的に拒んでいる。こんな現実が理不尽で、辛くて、苦しい。泣きたいのに雨で泣いてもわからない。泣いてもきっとこの雨じゃ気にも止めてくれない。
逆にこの土砂降りの中傘も刺さずに立ち止まる僕を変な目で見て嘲笑っていく。

雨かも知れない汚い涙を濡れた裾で拭った。


誰も傘をさしてはくれない。

でも足は動かない。






家にすら帰れない日は、

誰かに傘を刺してもらうまでずっと雨に佇むしかない。







『傘をください。』

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