視線の先 二次創作
部屋に入って目に入ったのは開けっ放しの窓と風に揺れるカーテン。今までだったらあいつがやってきたんだと思ったものだ。でもあの一件で僕を庇って大怪我を負ったあげく、崩壊する遺跡から落ちていったのではなかったか。ローザさんが換気のために開けたとしても、締め忘れは彼女に限ってない。
ただ窓が開いているだけであいつがやってきたと思うのは軽率だろうが、そう思うほどの積み重ねがあった。
もし、彼が生きていたら。彼は故郷をめちゃくちゃにした張本人で、頼れる仲間で、命の恩人で、何を思えばいいか分からなかった。
隣に立つ先生は何を考えているのか。僕なんかより遥かに複雑な気持ちだろうことは想像に難くなかった。
先生は静かに窓を閉めて、机の上にある手紙に目をつける。先生の視線の先には誰がいるのだろうか。憎き科学者か、頼もしい博士か、兄か。dearもない手紙を広げているとき、僕は紅茶を淹れることしかできなかった。
私だけ
あなたのそばにいるとき。
あなたからのメッセージを読むとき。
あなたに抱きしめられているとき。
私にはあなただけしかいないと思う。
私のそばにいるとき。
私からのメッセージを読むとき。
私を抱きしめているとき。
あなたにとっての唯一が私であれと思う。
空を見上げて心に浮かんだこと
ああ赤い、赤い。夕暮れよりよっぽど燃えていて、情緒なんてないただの赤。
脳が茹るように熱い。どうせ電気は止まっているし、どこに行っても逃げることはできないから、ベランダでタバコでも蒸すことにした。
周りを見れば泣き叫ぶ人、祈る人、最愛の人と過ごす人もいるのかな。僕は一人で空を見ている。
視界の端で何かが燃えているが、もう頭を動かすのに使う体力さえ残っていなかった。目の前には赤しかない。最後に見るのが星も雲もなにもないベタ塗りみたいな空だとは思わなかったなあ。空って、清々しく青いものだと思ってたけど、こういうのも悪くないかも、なんて。
耳の奥のチリチリした音を聞いている。
終わりにしよう
終わりにしよう。君と手を繋いで家を出る。夏の夜の生温い空気が妙に煩わしかった。しばらく歩いた後で明日が燃えるゴミの日なことを思い出したが、もうどうでもいいことだった。
小さい公園のブランコに二人して座る。この公園の遊具、昔はこんなに小さかったかなって笑い合う。
なんとなく、小学生の頃書いた未来への手紙を思い出した。あの時も嫌々思ってもいないことを書いていた気がする。私はそれから何も変わっていなかった。まあ、隣の君以外は。……でも、それも全部終わりだ。何だか楽しさすら感じてくる。
自販機で缶コーヒーを買う。君はグレープジュース。結局コーヒーを飲めるようにはならなかったね。
これからどうしようか。もはや誰にも分からなかった。
手を取り合って
よく晴れた小春日和の日。読んでいた本のページを捲る手が止まる。ふいに遠くに行きたい、と思った。レースカーテンに透けた光がきらきらと光っている。
どこか、ここから離れたところで、誰も私を知らない、遠い場所に。どこかにサンドイッチを持って、帰りなんて気にせずに、手を繋いで、ピクニックがしたいと思った。
今に不満を持ったことはないし、与えられた本も面白い。それでも本当は、日向ぼっこしながら居眠りをしてみたかった。
「来ちゃった」
聞き慣れた声。振り返ると、あなたがいる。私がどうかしたのと聞くと、犬みたいな笑顔であなたが笑う。
「きみに会いにきたんだ。せっかくいい天気なんだから、遠くに出かけたいなって」
心臓がぎゅうっと締め付けられる。あなたと手を繋いで、ピクニックに行きたい。