不特定多数

Open App

視線の先 二次創作

部屋に入って目に入ったのは開けっ放しの窓と風に揺れるカーテン。今までだったらあいつがやってきたんだと思ったものだ。でもあの一件で僕を庇って大怪我を負ったあげく、崩壊する遺跡から落ちていったのではなかったか。ローザさんが換気のために開けたとしても、締め忘れは彼女に限ってない。
ただ窓が開いているだけであいつがやってきたと思うのは軽率だろうが、そう思うほどの積み重ねがあった。
もし、彼が生きていたら。彼は故郷をめちゃくちゃにした張本人で、頼れる仲間で、命の恩人で、何を思えばいいか分からなかった。
隣に立つ先生は何を考えているのか。僕なんかより遥かに複雑な気持ちだろうことは想像に難くなかった。
先生は静かに窓を閉めて、机の上にある手紙に目をつける。先生の視線の先には誰がいるのだろうか。憎き科学者か、頼もしい博士か、兄か。dearもない手紙を広げているとき、僕は紅茶を淹れることしかできなかった。

7/20/2024, 2:10:21 AM