優越感、劣等感
殴ってやろうかと思った。
お前はいつも笑っている。いつ見ても、きれいな顔。お前は光、正しさ、救い、人生、それが嫌で嫌で嫌で、本当に好きだと思って、許せなかった。私は出会ってしまった。
私をめちゃくちゃにしたのはお前だけだったのに、お前にとっての私は私にとってのお前ではなかった。
その日夢を見た。夢で私は馬乗りになっていて、お前は身動きが取れないようだった。
優越感で満たされている。そのまま何度も顔を殴った。
ふと、腫れの奥でお前は笑っていた。それはそれはきれいに。
もう勝てっこないと思った。
これまでずっと
朝起きて、ごはんを食べて、家を出て。
時々、知らないところに出かけたり人と遊んだりして。
新しいものを買って、すぐに飽きたりして。
引きこもってゲームしたり、外に出て運動したりして。
これまでずっと、そんな同じような毎日を続けている。そして多分、これからも。
でもそれも、案外悪くないかなって思う。
一件のLINE
私のLINEには、ずっと前から一件の通知がある。もはやアイコンの一部になっているそれは、君からのチャットを知らせている。
既読をつけてしまったら本当に二度と返信が来ない気がして、そのまま見れないでいる。いや、もう返信が来ることはないんだけど。
別に感傷に浸っているわけでもない。ただ、君はいなくなった、それだけ。本当に、それだけだから。いつか二件になるんじゃないかって、思ったことなんてないよ。
目が覚めると
カーテンを開けると気持ちの良い日差しが私を包み込む。
今日も空にはトキが飛んでるし、壁紙は虹色だし、時計は左回りだ。
螺旋階段を降りてリビングに行く。朝ごはんはレーション……
あれ?これ、夢か。
飛び起きる。空も壁も時計もいつも通りだ。ここは間違いなく私の部屋だし、昨日使って片していないノートは机の上。
一応、頬をつねる。よかった、痛い。
ほっとして、部屋を出る。なんだか訳の分からない夢を見てしまって朝から疲れていたが、顔を洗い意識を覚醒させる。
朝ごはんを食べるためにリビングへのドアを開く。お父さんがいた。
「あー、これも夢か」
目が覚めた。
私の当たり前
「なにこれ?」
「なにって、ちくわきゅうりだけど」
私と彼が同棲を始めてから数週間。朝の早い彼のために、私が弁当を作ることになっている。だから今日もいつものように朝起きて、弁当を作って、出かける彼を見送る。
でも今朝、弁当の中身について聞かれたものだから少しびっくりした。普段は何も言わずに受け取ってくれるし、メジャーな具のつもりだったから。ちくわきゅうりは小さい頃からお母さんが弁当に入れてくれたから、私にとって当たり前のものだった。
聞くと彼の家では出なかったのだそう。そういうこともあるんだと思ったし、自分の中での常識が変わっていくのを感じた。
一緒に住んでからまだ短いけれど、これから当たり前を共有できて、当たり前が同じになっていくことを思うとなんだかふわふわして、この気持ちのまま後回しにしていた掃除をやってしまおうと思った。