不特定多数

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手を取り合って

よく晴れた小春日和の日。読んでいた本のページを捲る手が止まる。ふいに遠くに行きたい、と思った。レースカーテンに透けた光がきらきらと光っている。
どこか、ここから離れたところで、誰も私を知らない、遠い場所に。どこかにサンドイッチを持って、帰りなんて気にせずに、手を繋いで、ピクニックがしたいと思った。
今に不満を持ったことはないし、与えられた本も面白い。それでも本当は、日向ぼっこしながら居眠りをしてみたかった。
「来ちゃった」
聞き慣れた声。振り返ると、あなたがいる。私がどうかしたのと聞くと、犬みたいな笑顔であなたが笑う。
「きみに会いにきたんだ。せっかくいい天気なんだから、遠くに出かけたいなって」
心臓がぎゅうっと締め付けられる。あなたと手を繋いで、ピクニックに行きたい。

7/14/2024, 3:46:48 PM