ヨルガオ(短編小説)

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8/14/2023, 12:00:00 PM

春泥の上を君と僕とで走り抜ける。

「どこに行くの!?」

『え!?わかんない!!』

『どっか遠いところまで連れてって!!』

ガタガタと激しく揺れる。

君は落ちないように強く僕を掴む。

この鼓動、君に伝わらないよな。

…違う違う。

自転車を漕いでいるから心拍数が上がってるんだ。

別に………違う、はず。

………それに

君だってドキドキしてる。

これはただ叫んで楽しいからだよね。

……きっと。


ー自転車に乗ってー

8/13/2023, 3:47:12 PM

「今日は、どうされましたか」

《…この子、最近ぼーっとしてて…上の空なんです》

『別になんでも無いって……』

「……学校には通われて?」

《はい…。休んだことは無いんですけど…》

「………」

「………趣味とかある?」

『………絵を描くことが…好きで…す』

「一緒だね。僕も絵をよく描くんだよ」

『そうなんですか……』

「…絵を描くの…楽しい?」

『はい。毎日描いてます』

「じゃあさ、明日から毎日ここに絵を描きにおいで」

『………え、いいんです…か?』

《ちょっと待ってください。学校を休めってことですか?》

《そんな急に………》

「今はこの子と話しているんで、ちょっと待ってくれますか?」

「………一緒に描かない?」

《…………描きたい》

ここは心の相談屋。相談者心の健康を第一に。


ー心の健康ー

8/12/2023, 1:00:44 PM

そろそろかな。

午後5時。街が夕日に包まれる頃、あの音は響く。

ポロン……ポロン……ポロン……ポロン……

ド…ド…ソ…ソ……。今日はきらきら星かな。

向かいのアパート。そこには小さい女の子がいる。

まだピアノを始めたばっかりらしく、

弾くペースはゆっくり、一音一音ずつだ。

けど………。

毎日少しずつメロディっぽくなってきている音に

私は魅了されている。

一生懸命弾いているんだろうな

誰の為に弾いているんだろう

隣に誰かいるのかな

なんて、想像をする。

どんな子かわからないけど

きっとピアノが好きな子なんだろうな。

想像し、期待している。

将来、その子が弾く様を。


ー君の奏でる音楽ー

8/11/2023, 2:15:09 PM

「あっち〜……」

白く光る太陽に照らされ、陽炎が見える。

『こっちだよ』

「…ん?」

声のする方に顔を向ける。

広いひまわり畑だ。

その中で麦わら帽子が動いている。

ひまわりの背が高いので、帽子から下は見えない。

『早く早く!!捕まえてみてよ』

声からして女の子だろう。畑を走り回っている。

「あ、ちょっと待って!」

ガサガサとひまわりを掻き分けながら進む。

「はぁ、はぁ、」

「……捕まえてたっ!!!!!」

女の子の手首をガシッと掴んだ。

「…………あれ」

感触が、変だ。なんだか…ガサガサしている。

しかも、捕まえた瞬間から………動いていない。

ひまわりをゆっくり掻き分ける。

そこには麦わら帽子をかぶった、古びた一体のカカシが立っていた。


ー麦わら帽子ー

8/10/2023, 12:53:58 PM

まもなく〜、終点、終点〜。

運転手の声で目が覚めた。

周りにバレないように小さく伸びをする。

夜遅いからか俺以外にこの車両に乗っているのは2人。

男性と女性。男性は眠っているようだった。

終点〜、終点〜。お忘れ物の無いようーーーー。

さて、降りるか。

座席を立った時、

「あの…大丈夫ですか?」

女性が眠っている男性に声をかけていた。

しかし、あまりにも声掛けに応じないため身体を揺さぶる。

ドサッ

男性はその場に倒れた。動かない。呼吸をしていない。

「キャアアア!!だ、誰か!!」

女性は車両を飛び出した。

…なんで俺に助けを求めないんだ……?

ふと、倒れた男性の顔を見る。

呼吸が、鼓動が徐々に速くなっていく。

『………こいつ…俺じゃねーか』


ー終点ー

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