ヨルガオ(短編小説)

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8/9/2023, 11:13:26 AM

初めて罵倒されたのは、忘れもしない8歳の頃だった。

「こんな絵しか描けないのか」

父さんが芸術家だったから小さい頃から絵を描かされてた。

その頃から父さんに認められることだけを目指してた。

父さん以外の誰に褒められても、嬉しくはなかった…

…はずなのに。

「こんな絵も描けるの?凄いね!」って。

似たような言葉なのに、全然違うんだ。

なんで彼女が言う言葉は、こんなにも僕を……。

…なんでもない。

とにかく、僕は今のままでいいって思えたんだ。

だからさ、父さん。

俺はこの家を出て行くよ。

もう父さんには縛られない、自分の絵を描いていく。


ー上手くいかなくたっていいー

8/8/2023, 1:47:32 PM

男が女に言う。

「貴方は世界で一番美しい。まるで蝶のようだ」

女が男に言う。

『あら、ありがとう』

『でもね、そんな私よりも美しいものがあるのよ』

男は不思議に思った。

「どうしてそんな事を言うんですか」

「美しさに関しては、女性は皆一番でありたいものじゃないんですか」

女は笑う。

『ふふ、確かに女性は一番の美しさを求めるわ』

『でもね。美しさって言うのは外見だけじゃないのよ』

『私は外見の美しさを極めているのだけれど』

『内見の美しさを極める方もいらっしゃるの』

男は言う。

「しかし貴方は何故、そのような方をご自身よりも美しいというのですか」

女は声高々に笑う。

『そんなの決まってるじゃありませんか』

『私が蝶なら、その方達は花』

『花が努力もせずに咲いているだけで、蝶が生き生きと輝くのですよ』


ー蝶よ花よー

8/7/2023, 1:15:01 PM

彼が好き。

かっこよくて、頭も良くて、優しい彼。

悔しい思いをして流した涙も、弱い姿も

全部私だけにしか見せてくれない特別のもの。

全部私しか受け止められないもの。

…そんな彼が彼女を紹介してきた。

正直、殺してやりたかった。

私が彼の事を1番知っているのに。

いつも、こんなにも近くにいるのに。

私が1番相応しい…はずなのに。

どんなに想いを伝えても、

私と彼が結ばれる運命など存在していない。

……私の気持ちに気づいてよ。

お兄ちゃん。


ー最初から決まっていたー

8/6/2023, 10:16:04 AM

やあ、僕は天使。びっくりした?

あれ…そうでもない?…まあいいや。

実は僕は可哀想な天使なんだ…。

本当は人間だったんだけど、家族に殺されたの。

だから僕ね、

家族を全員殺そうと思うの。

手始めにお兄ちゃんからって思ってるんだけど…

君はいいと思う?

………なんでお兄ちゃんからなのかって?

ん〜、僕って天使だから普段の人間には見えないんだ。

けど幻想病…?ってやつになったら死に際に見えるんだって。

その病気にお兄ちゃんがなってるんだ。だからかな。

………どうやって殺す?そんなの簡単だよ。

要は窓から誘き寄せればいいんだよ。

一緒に太陽の方に飛んでいこう…みたいに。

そしたら勝手に落ちていくよ。自分からね。


ー太陽ー

8/5/2023, 2:03:07 PM

『あっちーな…。今日35度まで上がるってよ』

「は?まじかよ最悪だわ」

「お茶飲も……………ん」

「…あと一口しかねー」

『まじ?やばいやん』

「どうしよ。ここら自販機無かったよな…」

「あー最後の一口が〜……」

『…飲みかけやけど俺の…飲むか?』

「ブッッッッ!!!ッゴホゴホ…ゴホ……は!?」

『だーかーらー、俺の飲むかって言ってんだ』

「え、は…?意味わかんな…。え、逆にいいんか?」

『まー、別に、お前ならええ』

「…な、なんで?」

『んー……好きだからやな〜』

「…………へ?」


ー鐘の音ー

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