初めて罵倒されたのは、忘れもしない8歳の頃だった。
「こんな絵しか描けないのか」
父さんが芸術家だったから小さい頃から絵を描かされてた。
その頃から父さんに認められることだけを目指してた。
父さん以外の誰に褒められても、嬉しくはなかった…
…はずなのに。
「こんな絵も描けるの?凄いね!」って。
似たような言葉なのに、全然違うんだ。
なんで彼女が言う言葉は、こんなにも僕を……。
…なんでもない。
とにかく、僕は今のままでいいって思えたんだ。
だからさ、父さん。
俺はこの家を出て行くよ。
もう父さんには縛られない、自分の絵を描いていく。
ー上手くいかなくたっていいー
男が女に言う。
「貴方は世界で一番美しい。まるで蝶のようだ」
女が男に言う。
『あら、ありがとう』
『でもね、そんな私よりも美しいものがあるのよ』
男は不思議に思った。
「どうしてそんな事を言うんですか」
「美しさに関しては、女性は皆一番でありたいものじゃないんですか」
女は笑う。
『ふふ、確かに女性は一番の美しさを求めるわ』
『でもね。美しさって言うのは外見だけじゃないのよ』
『私は外見の美しさを極めているのだけれど』
『内見の美しさを極める方もいらっしゃるの』
男は言う。
「しかし貴方は何故、そのような方をご自身よりも美しいというのですか」
女は声高々に笑う。
『そんなの決まってるじゃありませんか』
『私が蝶なら、その方達は花』
『花が努力もせずに咲いているだけで、蝶が生き生きと輝くのですよ』
ー蝶よ花よー
彼が好き。
かっこよくて、頭も良くて、優しい彼。
悔しい思いをして流した涙も、弱い姿も
全部私だけにしか見せてくれない特別のもの。
全部私しか受け止められないもの。
…そんな彼が彼女を紹介してきた。
正直、殺してやりたかった。
私が彼の事を1番知っているのに。
いつも、こんなにも近くにいるのに。
私が1番相応しい…はずなのに。
どんなに想いを伝えても、
私と彼が結ばれる運命など存在していない。
……私の気持ちに気づいてよ。
お兄ちゃん。
ー最初から決まっていたー
やあ、僕は天使。びっくりした?
あれ…そうでもない?…まあいいや。
実は僕は可哀想な天使なんだ…。
本当は人間だったんだけど、家族に殺されたの。
だから僕ね、
家族を全員殺そうと思うの。
手始めにお兄ちゃんからって思ってるんだけど…
君はいいと思う?
………なんでお兄ちゃんからなのかって?
ん〜、僕って天使だから普段の人間には見えないんだ。
けど幻想病…?ってやつになったら死に際に見えるんだって。
その病気にお兄ちゃんがなってるんだ。だからかな。
………どうやって殺す?そんなの簡単だよ。
要は窓から誘き寄せればいいんだよ。
一緒に太陽の方に飛んでいこう…みたいに。
そしたら勝手に落ちていくよ。自分からね。
ー太陽ー
『あっちーな…。今日35度まで上がるってよ』
「は?まじかよ最悪だわ」
「お茶飲も……………ん」
「…あと一口しかねー」
『まじ?やばいやん』
「どうしよ。ここら自販機無かったよな…」
「あー最後の一口が〜……」
『…飲みかけやけど俺の…飲むか?』
「ブッッッッ!!!ッゴホゴホ…ゴホ……は!?」
『だーかーらー、俺の飲むかって言ってんだ』
「え、は…?意味わかんな…。え、逆にいいんか?」
『まー、別に、お前ならええ』
「…な、なんで?」
『んー……好きだからやな〜』
「…………へ?」
ー鐘の音ー