『…お前さ……』
『なんでこんなに荷物あるねん!!!』
「…いや〜、めんどかったんよ」
『置き勉しとる教科書とかならまだわかるけど……』
『習字道具なんか前、先生が使わんよったやん!』
『なんで早よ持って帰らんのよー』
「ごめんて〜。ほら、この通り!!!」
『…ふ、わかったわかった。手伝うわ。約束もしてたしな』
「まじサンキュ〜!んじゃあ、これとこれとこれよろしくな〜」
『ほんましゃーないやつやなー』
『お前、俺が居らな生きてけんのとちゃうんか?』
「ん〜……。そうかもな」
「お前居ったら、どんだけ嫌な事でも乗り越えられる気するわw」
『……そーかよ』
ーつまらないことでもー
『あー、まじ授業疲れたー』
「やっと放課後やなー」
『国語とか睡眠導入剤よな。ガチでねみー』
『俺ちょい寝るわ。しばらく経ったら起こしてくれ』
「りょー」
『………』
静かな教室に俺とこいつとで2人っきり。
あー、くそ…。こいつまじで警戒感なさすぎや。
今なら俺が何しても気づかんのちゃうか…?
あほあほ!!何考えてるんや俺は!?!?
こずるい真似やカッコ悪いわ。男ならちゃんと正面からや!
『…ん……』
「………」
「…あ、雨や」
天気予報で午後から雨が降る言うてたな…。
…………。
折り畳み傘……教室に置いて行こ。
こいつは…俺を傘に入れてくれるやろか……?
ー目が覚めるまでにー
目が覚めると、白い天井が見えた。
「……翼!!」
『…父、さん?……こ、ここは?』
「…落ち着いて聞け。ここは病院でお前は運ばれたんだ」
『…病院?な、なんで…』
「お前は幻想病という病気なんだ…。死に際に天使が見えるらしい」
『幻想病……』
『その病気って…治るの?』
「…………生きられてもあと…1ヶ月…らしいんだ」
『………だよ』
『なんでだよ!!!!!』
「翼!!落ち着くんだ!!!」
『僕は病気なんかじゃ無い!!こんなの何かの間違いだ!!』
「翼!話を聞いてくれ!!」
「お前の為なんだ!!!!!!!」
「お願いだから落ち着いてくれ!!」
『はぁ…はぁ……うぅ………』
『僕の為なら…病気じゃ無いって否定してくれよ…』
ー病室ー
「最近、雨ばっかりやな」
『まー、梅雨やからな。しゃーない』
「…あ」
『どしたん』
「最悪や。傘、家に忘れてしもた」
『折り畳みは』
「持ってないわー」
「悪いんやけどさ、傘の中入れてくれへん?」
『ええけど、そのかわり明日の昼メシ奢れよ』
「代償デカない?じゃあ走るわ」
『ハハ…冗談やって。早よ入れ』
「助かるわ〜まじサンキュな」
「あ、あとさ。明日も一緒に帰ってくれん?」
『は?きっしょ』
「ちげーわ。荷物が多いんじゃ。手伝ってくれや」
『…しゃーないな〜。晴れてたらやで』
ー明日、もし晴れたらー
「体調大丈夫?あ、これ。クラスのみんなから」
先生の手にはクラスメイトからの一言が書かれた色紙が。
早く元気になってね。学校で遊ぼう。
「みんな、貴方が来るのを待ってるわ」
「ゆっくりでいいから。学校に来てみて欲しいの」
『……はあ……』
「それじゃあ、先生帰るから。頑張ってね」
『……さよなら』
ガチャンッ
『……何が頑張ってだ。こんな物、あるだけ無駄なのに』
早く元気になってね? 誰のせいで。
学校で遊ぼう? それが嫌だから家にいるんだ。
ゆっくりでいい? なんで学校に行く前提なんだよ。
来てみて欲しい? 僕の意志も尊重出来ないのか。
頑張って? 僕なりに頑張ったんだよ。
『…やっぱ、自分の気持ちは自分にしか伝わらない』
ーだから、一人でいたい。ー