8木ラ1

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4/7/2024, 1:07:49 AM

君の目を見つめると、不思議なことに宇宙空間に放り出される。
何にもなくて何にも出来ない。息も苦しくなる。
だからいつも君を見ないようにしていた。
でも油断してはつい目で追ってしまい、宇宙空間に放り出されの繰り返し。
「何で勝手に目は追うんだろう」
毎日疑問に思ってる。
気付いたら君を目で追ってしまうし、気付いたら君の目を見つめている。
君の瞳は宇宙みたいに濃い青色で、君は歩く時に髪を触る癖がある。
制服は着こなしてるようで襟が立ってることに気付いてないし、完璧なようで何もないところでつまずく。

あ!?
またいつの間にか彼女の事を考えてしまっている!
やはり彼女は只者ではない。危ない危ない、彼女にまた遊ばれるとこだった。
「くっそー…」
悔しがってるその時、彼女が振り向き目が合う。すると一秒もしないうちに宇宙空間に放り出された。
何も考えられなくて、頭がぼーっとする。
「はっ…!」
現実世界に戻った時には、もう僕の顔は熱く帯びていた。やはり彼女は只者ではない。

3/21/2024, 1:32:56 AM

彼女はマフラーで頬を撫でながら言う。
「どう、似合う?」
その笑顔が凄く嬉しそうで、こちらも思わず笑ってしまう。こんなに喜んでくれるなら来年は指輪でも贈ろうか。
そんな事を考えていると、彼女から箱を差し出された。
「これ、私からもあげる!」
お礼を言うと、照れているのか彼女の顔は赤く帯びていた。微笑ましく思いながらも箱を開ける。
すると入っていたのは宝石が一つついたネックレス。
その宝石は透明がかった青色で、まるで涙のように綺麗だった。
「それ"アクアマリン"って言う宝石なんだ」
宝石に詳しくない自分は首を傾げる。彼女もたいして宝石には詳しくないはずだ。頭にはてなを浮かべる僕に、彼女は「ふふん」と自慢げに笑った。
「この日の為にたくさん調べたんだよ、恋人同士に幸福をもたらすんだって!」
柔らかいその笑顔に僕は凄く嬉しかった。勢いよく抱きしめて彼女に愛を伝えようとする。
「真奈、愛し──


─夢が途切れる。
目の前には黄ばんだ壁と散らばったゴミ。
「またか」
そう小さく呟いた。

よく、昔の夢を見る。10年程前の記憶だった。
彼女との記念日を祝い合った日。
首にかけたアクアマリンを握りしめる。また、彼女との記憶を鮮明に思い出してしまう。初めて告白した日も、初めてお化け屋敷に行った日も。

そして彼女が事故で死んだ日も。

もう涙も出なかった。胸に異物を抱きながら仕事の準備をする。

スーツを着て、鞄を持って家を出た。美味しい空気も夢を見た後ではまるで泥のようだ。

どうせなら夢が醒める前に、夢でもいいから
「彼女にプロポーズしたい」
そういつもと同じ言葉を吐いた。

3/15/2024, 3:17:11 PM

「わーきれい」
「本当に星を見るのがお好きなようで。」
貴方は届くはずもない小さな星に手を伸ばす。
私は缶コーヒーを一口飲んだ。
「僕飲めないから羨ましいなぁ」
私の方に振り向いてはにかむ。その言葉に理解出来なかった私は首を傾げた。
「何故羨ましいと感じるのですか?貴方は苦いと味が感じれる、好きか嫌いか自分で分ける事が出来ます」
淡々と疑問を口に出した私に貴方は悲しそうな表情をする。貴方はオレンジジュースを握りしめながらゆっくりと口を開いた。
「ごめん、今のは失言だった」
「そんな、謝らないで下さい。誠実に疑問に思ったのです」
責めるつもりはなかったので彼の謝罪に戸惑う。
オレンジジュースを一口飲むと貴方はまた話し出した。
「君にこの感覚を分かってほしいな、人間になる予定とかないの?」
私は手に顎を乗せ考える。
人間に何か特別な印象はないが興味は少々あった。私の中に感情は存在するが人間ほどではない。
考える私に貴方は黙って返事を待つ。
「そうですね、考えてみます」
「やったぁ!」
ふふっと笑う私を見て貴方はより嬉しそうに微笑む。コーヒーをゆっくりと喉に流す。貴方は目線を星空に戻した。だが、星を見つめる横顔は何処か寂しそうだった。
「そろそろ行っちゃうの?」
すると今にも消えそうな、かぼそい声で問う。
「えぇ。そろそろ行きますね」
私は八の字に眉をあげて答えた。指を鳴らして缶コーヒーを消し、スーツの襟を正す。
貴方を見ると静かに泣いていた。目をこする指の隙間から見えた涙。きらきらと輝く涙に思わず惹かれてしまう。
「…空を見てください、私はお星様になって貴方を見守っていますから」
慰める気持ちもあったが私の気持ちも入った言葉だった。
「星なんて溢れるほどあるんだ、君一人を見つけれないよ」
瞼を真っ赤にさせ、震えた声で貴方は叫んだ。
感情がこんなに揺さぶられる事は初めてだった。私は胸を抑えながら貴方の目を見つめる。
「ではすぐ見つけれるように一番星になってみせます、毎日」
「なんだかプロポーズみたい…笑」
貴方は笑っていたが、泣いていた。

3/13/2024, 11:28:37 AM

「あったけ〜」
やはり寒い時はストーブに限る。そう思いながらみかんの皮を剥いた。4分の1を口の中に放り込む。
甘味を堪能していると、液体に似た生き物が隣に座る。
「にゃ〜」
私は鳴き声に気付き、ちょこちょことストーブの端に移動した。可愛らしい液体は「それでよし」と、こてんと寝転がる。
もふもふでたぷたぷで柔らかいお腹に顔を埋めた。
「ん…すぅー…」
まるで焼きたてのコッペパンのような、優しいお日さまのような、この香りを吸うのが辞められない。
毎日風呂に入っていないのに獣臭くないのは改めて感心する。
「……」
「…にゃ」
「あっ…すみません…」
そろそろ不愉快と注意された為、代わりに肉球をぷにぷにした。「しょうがねーな」と言わんばかりの表情がたまらん可愛い。
だが、尖った爪が当たってちょっと痛い。爪を切ろうとすると死ぬほど嫌がられる為、手首は傷だらけだった。

肉球を吸っていると着信音が鳴る。
すぐにスマホの画面を見る。友人からだった。
「はいー?」
『明日空いてるなら飲もーぜ』
「いいね」
わちゃわちゃと談笑しながら明日の予定を決める。
ある程度決まり、またねと電話を切った。

(予定も出来た事だし今日は早めに寝るかぁ)
もう一つのみかんを食べて布団を敷く。
すると液体は喉を鳴らしながら布団の中に入ってきた。
「かんわいーなー、お前はいつも隣にいてくれるな」
嬉しさに浸りながら私達は共に眠りについた。

3/13/2024, 2:07:09 AM

数学の事ならもっと知りたい。
新しい公式見つけたい。
毎日、休憩を挟みながらも五時間、図書館で勉強している。家ではもちろんその倍だ。

いつも通り図書館で勉強していると、隣の席に女の子がやってきた。ふわりと甘いラベンダーの香りが漂う。
「よ、テルじゃん」
突然そんな事を言われる。何だこいつと思いながら隣の席を見た。
パーマのかかった茶髪に、耳につけた黒のAirPods。
彼女は学校で同じクラスの子だった。

「桐島さんってこういうとこ来るんだ」
「失礼じゃね?」
私の呟きに即ツッコむ桐島さん。

彼女はギャルだ。授業中はいつも寝ている。
彼女が勉強している所を見た事がない。

正直、私はこういう奴が苦手だ。というか大嫌いだった。
「にー…しー…ろー…」
イライラしていると、彼女は私が持ってきた本を指で数え始める。
「20冊もある、すげ」
彼女は変わらないトーンで言い、スマホをいじりはじめる。
(こんな不良に構っても時間が無駄だし)
私は無視して読書を再開した。1ページ2ページと読み終わって行く中、突然耳に何かを入れられる。
甘いラベンダーの香りが鼻をくすぐる。
いい加減にしろと彼女に振り向いた瞬間、音楽が流れ始めた。
「テルってこういうの好きそー」
私は眉間にしわを寄せる。
音楽に興味が無い為、この曲にも惹かれない


……というのはやっぱり嘘だ。

淡々とした切ないメロディに、ピアノのアクセントが入った曲。

正直、大好きだ。こういう系統の曲は家でよく聴いている。歌詞はなく、ただこの音を楽しむ感じ。
──良い。

勉強も大好きだが音楽もまぁまぁ好き。

「やっぱ好きっしょ?これ聴くと勉強捗るらしいよ」
「まぁそういうのなら聴く…他にこういう曲、知ってるなら教えろ」
「ツンデレか」
もっと知りたい。

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