数学の事ならもっと知りたい。
新しい公式見つけたい。
毎日、休憩を挟みながらも五時間、図書館で勉強している。家ではもちろんその倍だ。
いつも通り図書館で勉強していると、隣の席に女の子がやってきた。ふわりと甘いラベンダーの香りが漂う。
「よ、テルじゃん」
突然そんな事を言われる。何だこいつと思いながら隣の席を見た。
パーマのかかった茶髪に、耳につけた黒のAirPods。
彼女は学校で同じクラスの子だった。
「桐島さんってこういうとこ来るんだ」
「失礼じゃね?」
私の呟きに即ツッコむ桐島さん。
彼女はギャルだ。授業中はいつも寝ている。
彼女が勉強している所を見た事がない。
正直、私はこういう奴が苦手だ。というか大嫌いだった。
「にー…しー…ろー…」
イライラしていると、彼女は私が持ってきた本を指で数え始める。
「20冊もある、すげ」
彼女は変わらないトーンで言い、スマホをいじりはじめる。
(こんな不良に構っても時間が無駄だし)
私は無視して読書を再開した。1ページ2ページと読み終わって行く中、突然耳に何かを入れられる。
甘いラベンダーの香りが鼻をくすぐる。
いい加減にしろと彼女に振り向いた瞬間、音楽が流れ始めた。
「テルってこういうの好きそー」
私は眉間にしわを寄せる。
音楽に興味が無い為、この曲にも惹かれない
……というのはやっぱり嘘だ。
淡々とした切ないメロディに、ピアノのアクセントが入った曲。
正直、大好きだ。こういう系統の曲は家でよく聴いている。歌詞はなく、ただこの音を楽しむ感じ。
──良い。
勉強も大好きだが音楽もまぁまぁ好き。
「やっぱ好きっしょ?これ聴くと勉強捗るらしいよ」
「まぁそういうのなら聴く…他にこういう曲、知ってるなら教えろ」
「ツンデレか」
もっと知りたい。
3/13/2024, 2:07:09 AM