8木ラ1

Open App

「あったけ〜」
やはり寒い時はストーブに限る。そう思いながらみかんの皮を剥いた。4分の1を口の中に放り込む。
甘味を堪能していると、液体に似た生き物が隣に座る。
「にゃ〜」
私は鳴き声に気付き、ちょこちょことストーブの端に移動した。可愛らしい液体は「それでよし」と、こてんと寝転がる。
もふもふでたぷたぷで柔らかいお腹に顔を埋めた。
「ん…すぅー…」
まるで焼きたてのコッペパンのような、優しいお日さまのような、この香りを吸うのが辞められない。
毎日風呂に入っていないのに獣臭くないのは改めて感心する。
「……」
「…にゃ」
「あっ…すみません…」
そろそろ不愉快と注意された為、代わりに肉球をぷにぷにした。「しょうがねーな」と言わんばかりの表情がたまらん可愛い。
だが、尖った爪が当たってちょっと痛い。爪を切ろうとすると死ぬほど嫌がられる為、手首は傷だらけだった。

肉球を吸っていると着信音が鳴る。
すぐにスマホの画面を見る。友人からだった。
「はいー?」
『明日空いてるなら飲もーぜ』
「いいね」
わちゃわちゃと談笑しながら明日の予定を決める。
ある程度決まり、またねと電話を切った。

(予定も出来た事だし今日は早めに寝るかぁ)
もう一つのみかんを食べて布団を敷く。
すると液体は喉を鳴らしながら布団の中に入ってきた。
「かんわいーなー、お前はいつも隣にいてくれるな」
嬉しさに浸りながら私達は共に眠りについた。

3/13/2024, 11:28:37 AM