さて、今回諸君に集まってもらったのはほかでもない
「ひとひら」という言葉についてだ
私はこの言葉に対して、花びらと雪ぐらいにしか、使い道を見い出せない
そこで、諸君にはそれ以外の使い道を私に提案してほしい
なにかあるか?
すぐに出なくても、しばらく考えてくれて構わない
最近はひとひらが気になって、毎日夜三時くらいまで、全く眠れないのだ
いい案を期待している
「雪から思いついたんですけど、紙吹雪とかどうですか?」
ひとひらの紙吹雪か
大量に降ったり、目まぐるしく飛んだりする紙吹雪の中の一枚に注目するというのも、なかなか面白いな
他にあるか?
「ひとひらの刻み海苔なんていうのは、ダメですかね?」
いいじゃないか!
情景はさっぱり浮かばないが、それが逆に想像力を試されているようでわくわくする!
変わり種というのも、ひとつくらいは欲しいしな
まだまだ募集するぞ
「火山灰なんて、エモくないです?」
おお、活火山という恐ろしいものから出る灰を、ひとひら、という柔らかな言葉で表現するとは、ストーリー性や神秘性を感じる素晴らしい案だ
「ひとひらの花びらときたら、ひとひらの葉っぱも外せないと思います!」
ここに来て王道だな!
確かに、花びらにばかり気を取られて、葉っぱの方に意識が向いていなかった
これは私の反省点だな
ありがとう
なにか大切なものに気づけた気がするよ
……うむ
四つの案が出たわけだが、どれも心に響くとてもいい提案だった
諸君のおかげで、新たな発見や、それによる自分の成長を感じられた
今日からは安眠できそうだ
考えれば他にも案が出るかもしれない
だが、今日はここまでにしよう
改めて、ありがとう!
「「「「お疲れ様でした!」」」」
懐かしき日々
君と私の、故郷で過ごしたあの日々
あの頃、私の目に映る君はいつも、見慣れた風景の中で笑っていた
幸せそうに、楽しそうに
なんの不安も不満も無い、きれいな瞳で
だが、私たちは故郷を離れた
追い求めるもの、夢があったからだ
そして、見知らぬ風景の中へ飛び込んでいった
そのことに後悔はない
目まぐるしく変わっていく環境
日々起こる様々な出来事
苦労することも多かったが、得るものも多く、とても楽しかった
そんな中で、君とともに歩めることに幸せを感じていた
だから、それらは無駄ではない
意味のあることだったのだろう
けれど長い時が流れ、私も君も、この日々に疲れてしまったようだ
名残惜しさは感じるが、この風景に別れを告げ、再び静かな故郷の風景の中に身を置くことにした
帰ってきた私たちを、故郷がまた受け入れてくれるかどうか、不安はあるが、きっと大丈夫
君となら、どこだろうと幸せになれる
それに、私は君を幸せにするためなら、どんなことでもできるから
だから、帰ろう
私たちの故郷へ
あの頃の、見慣れた風景の中へ
山田君と僕(しもべ)の魔物は仲が良い
高名な家柄の中には、自分の子供に僕となる魔物を与え、手足のように使わせるところもある
正直、まともな思考をしていたらそんなことはしないと思うけど、なぜか合法なので、そういう家もあるのだ
同級生の山田君も、そんな家柄の子だけど、山田君は両親の高慢なところを嫌っていて、魔物にも僕としてではなく、友達として接しているいいやつだ
魔物の名前はマロン
山田君が名付けたのだ
二人は本当に仲がよく、いつも楽しそうに遊んでいる
見ているこっちも笑顔になるほどに
そんなある日、マロンがいなくなったと、慌てながら山田君が青ざめた顔で告げた
とても心配だ
すぐに魔法で痕跡を見つけ、山田君と一緒にマロンを探す
痕跡を辿っていくと、マロンが何人かに暴行を受けている場面に遭遇した
あいつらは、家柄はいいが性格は最悪のやつと、その取り巻きか
そういえば、魔物を友達扱いする山田君に突っかかったり、馬鹿にするような発言をしてたな
すぐさま二人で相手へ攻撃魔法を撃ち、先制した
向こうはいきなりの攻撃に対処できず、転がった後、蜘蛛の子を散らすように逃げていった
山田君がマロンに駆け寄る
怪我はしているが、幸い大事には至ってない
山田君はマロンを抱えながら、涙目で何度も感謝の言葉を言ってきた
でも、助けるのは当たり前だよ
だってマロンは、君と僕(ぼく)の大切な友達なのだから
俺たちは起きながら明晰夢を見ている
眠ることなく夢へ!
俺たちは起きている間、ずっと明晰夢が消えないのだ
眠る時は明晰夢ではない普通の夢を見るが、起きればいつもの明晰夢が始まる
その明晰夢は、みんな同じ内容だ
楽しく夢を見て、みんなでその夢の話で盛り上がる
同じ明晰夢だから、みんなで楽しめる
この先も俺たちは、この明晰夢を見続けるのだろう
だが、いつかこの明晰夢が俺たちの頭から消え去る日が来る
そして、明晰夢が消え去る理由が、その夢が叶ったから、であるように、俺たちはみんなで頑張り続ける
いずれにしろ、消え去った後は、また新たな明晰夢を見ることになるだろう
けど今は、今見ている明晰夢を楽しもう
お目覚めのようだな、アンダーソン君
気分はどうだ?
元気かな?
「貴様、こんなことをして許されるとでも思っているのか」
こちらの質問に答えたまえ
元気かな?
「なにを言っている
目的はなんだ?」
フゥ、いい加減にしたまえアンダーソン君
もう一度言うぞ
元気かな?
「おい、いい加減にしてほしいのはこちらだ
なんのつもりで俺を拘束している?」
アンダーソン君
本当にわかっていないのか?
周りの状況からわかるのではないか?
「検討もつかん!
拘束を解け」
本当はわかっているのだろう?
君はただ、それを認めたくないのだよ
何度でも聞こう
アンダーソン君、元気かな?
「拘束しておいて元気か、だと?
最悪の気分だよ」
体調に問題はあるか?
「……腹痛がする」
嘘だな、アンダーソン君
いま、少し考えた後、私から目を逸らして答えただろう
ともあれ、なんの問題も無さそうだな
「俺は腹痛だと言っている!」
仮病は通じないぞ
本当に腹痛なら一旦中止するが、仮病では中止にならない
さて、これより血液検査を始めとした、健康診断を行う
「血液検査、だと?
よせ、やめろ!
ふざけるな!
拘束を解け!
解いてくれぇっ!
ぐああああ!」
終わったぞ、アンダーソン君
痛くはなかっただろう?
君が思っているほど、怖くはないのだ
「け、健康診断はあとどれくらい続くんだ?」
情けないぞアンダーソン君
まだ始まったばかりだ
しかし安心したまえ
苦痛を伴うものはほんの少しだ
「そのほんの少しが耐え難いのだろうが!
俺をここから解放しろーっ!」
君のためなのだ、アンダーソン君
君には悪魔の所業に見えても、それは君自身の命を救うことにつながる
それをわかってもらいたい
さあ、次だ
「よせ、よせ!
来るなぁーーー!
あああああ!」