ストック1

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4/8/2025, 11:20:33 AM

昔、幼馴染とした遠い約束
俺はそれを果たすため、この場所に来た
彼女がピンチになったら必ず助ける
そう、約束したのだ
今はお互い、別のパーティに所属しているが、関係ない
絶対に間に合わせる!
ようやくたどり着くと、幼馴染が傷だらけで片膝をついていた
敵である怪物はまだ戦意をみなぎらせているが、幸い俺には気づいていない
彼女を助けなければ!
俺は思い切り跳躍すると、怪物の弱点である首筋に剣を突き立てた
怪物は苦悶の表情を浮かべると、背中から倒れ、動かなくなった
なんとか、助けることができたか

「あ、ありがとう
でも、どうしてあなたがここに?」

「お前が逃がした仲間が、近くにいた俺に助けを求めてきたんだ」

「そうだったんだ
でもよかった、危ないところだったから
本当に、ありがとうね」

座り込む彼女に手を差し伸べる

「礼はいいよ
昔、約束したからな
お前がピンチになったら、助けに行くって」

ちょっとカッコつけながら言うと、彼女は伸ばしたてを止めた
ん?どうした?

「そんな約束、してないけど?」

「え?
七年くらい前、村の樹の下で約束しただろ?
忘れちゃったのか?」

「いやいや、してないしてない
私、そういうピンチになる前提のくだらない約束するの嫌いだもん」

なんか、嫌な汗が背中から吹き出してきた
ヤバい、約束の相手を勘違いしてたっぽい
なんでこんな勘違いしたんだ俺

「別に私はいいんだけど、誰と約束したか、思い出したほうがいいよ?
というか、相手を忘れるってヤバくない?」

「だよな、ヤバいよな
ええーと、誰だっけ……」

ここから、うっかり失われた記憶を思い出す問答が始まった

「村長の孫?」

「あんまり話したことない」

「あなたが話しかけられるたび照れまくってたアリア?」

「そんな約束、照れてできないよ」

「うーん、薬屋の家のジェシカ?」

「俺、あの子苦手だった」

「あとは、お嬢様のメアリー?」

「んー、ピンとこないぞ」

「ええ?
他は……あのさ、まさかとは思うけど、姉さんじゃない?
私の、さ」

その瞬間、俺の記憶の扉が開け放たれた
そうだ、彼女のお姉さんに、当時俺は憧れていて、そんな約束をしたのだった
なんか、それが妹の方に記憶がすり替えられていた
再び……いや、嫌な汗がさっきより多く背中から吹き出してきた

「あのね、あれだね
お姉さんだね、思い出したよ」

幼馴染が「こいつマジか」みたいな目を向けてくる
視線が痛い、すごく痛い

「うわぁ、最低だなぁ
姉妹を間違えるとかさぁ
想像以上の結末だったよ……」

「ごっ、ごめんなさい……」

これはもう、誠心誠意謝罪し続けるしかないな
本当に、申し訳ない

4/7/2025, 11:11:42 AM

外国で花火を見た
日本でも花火は見るけど、外国で見る花火はまた違った印象を受ける
しかし、大量に次々と打ち上がっては、派手にひらいて消えていくなぁ
すごく綺麗だ
それにしても、相方はテンション高いな
周りの人たちもテンション高いけど、君、日本では風流だとか知った風なこと言って、静かに見てるよね?

「郷に入っては郷に従えだ!
この国のみんながハイテンションで楽しむなら、俺も同じように楽しむぜフゥー!」

なるほど、君は人より周りの雰囲気に流されやすいタイプの人間なんだね
ま、楽しんでるならいいけど

「ビューティフォー!
フラワーファイア!
ビューティフォー、イェー!」

なんかわけのわからないこと言いだした
日本語の花火をそのまま英語に変えたよ
周りの人が数人、訝しげな顔を一瞬浮かべてたよ?

「こういうのは雰囲気だぜ!
フラワーファイア、クール!」

花火は熱いよ、ホットだよ
あと、花火って確かfireworksとかだった気がするよ?
それに雰囲気って言ってるけど、現地の人が変なものを見る目を向けてるから
雰囲気に染まってないよ
むしろだいぶ浮いてるよ

「ソウルで伝わればいいんだ!
フラワーファイア、セレスティアル!」

絶対に聞いたことある単語を適当に言ってるだけだよね?

「ツッコんでないで、ビューティフォーなフラワーファイアをエンジョイしようぜ!」

もう無茶苦茶だよ
まぁ、言ってることは正しい
ツッコんでる暇があるなら、花火を眺めてたほうがいいよね

「フラワーファイア、フォーーー!!!」

……いい加減ちょっと黙って……

「あ……はい、すいません」

4/6/2025, 11:08:28 AM

新しい地図アプリをダウンロードした
これはただの地図アプリじゃない
私に絶対に必要なアプリだ
私はよく異空間に迷い込むことがある
そこから脱出するのに毎回苦労させられているのだけど、この地図アプリは自分が今いる異空間の地図と現在位置を表示
スムーズに脱出できるそうだ
これで無駄のない攻略が可能になった
あとは、化物がいるような空間がほとんどだけど、まあそれに困らされたことないし、そこの解決はいいや

で、アニメのPOP UP STOREで楽しんだ帰りのこと
私は駅で異空間に迷い込んだ
そこは照明がちょっと暗い不気味な駅構内で、真の迷宮と化している
さっそく地図アプリを開く
おお、異空間の構造が丸わかりだ
私はこの辺りだから、このルートで出られる
あとは、道中に何があるかだけど、そっちはどうにでもなる
進んでいくと気持ち悪いほどいい笑顔の、いびつな顔した化物が佇んでいた
化物は私を視認すると、ナイフを振りかざして向かってきた
やたら早いとかではなく、全速力なら逃げられそうな速度
ははぁ、ここは迷宮を逃げ回りながら、いかに移動し続ける化物とバッタリ会わずに脱出するか、という空間だと思う
曲がり角の先とかで見つかったらゲームオーバー
遠くから発見されたら追われるので、相手の視界から消えつつ、分岐などを上手く使って追跡をかわさなければいけない
そんな感じだろう
けど、残念
私には関係ない
私は化物を正拳突きでノックアウトした
化物はサラサラと黒い粒子となって消えていく
最期までいい笑顔だった
白目剥いてたけど
やっぱり拳骨最強
化物相手に、拳骨に勝る武器なし
暴力はいいぞ
それにしても便利な地図だな
ここは比較的広そうだけど、これなら簡単に脱出できる
こうして、私はものの十分程で脱出に成功した
強制的に趣味の悪い異空間に引きずり込んで、くだらない脱出ゲームをやらせる相手には、こちらも相応のずるをさせてもらう
そして、化物には鉄拳制裁も辞さない
私はこの拳骨と新しい地図アプリで、あらゆる異空間を滅茶苦茶にしてやろう、と改めて誓うのだった

4/5/2025, 11:08:06 AM

別に評価が低いわけじゃないんだよ
でも世間じゃ、面白いけどパッとしないって意見が大半なんだよな
だがそんなの関係無しに俺は一番好きだよ
確かに今までの作品とは毛色が違うけどな
同じような内容一辺倒じゃないってことを示したし、それでいて十分魅力的だと思うんだ
ただ、あれが一番好きって言うとな
通気取りだ、みたいなことを言われることもあって、それがどうもムカつく
別にマイナー好きの自分を演出して、かっこつけるために好きって言ってんじゃねえんだよ
俺は実際に面白いから好きだと言ってるだけなんだけどな
俺に言わせれば、マイナーを好む人間を気取り屋だとレッテル貼って、メジャー好きが素直な楽しみ方だ、ってやつも、思いっきり気取り屋だと思うがね
ま、大半の人間はそんな事考えず、自分の好きなもんを好きでいると思うが
おっと、話が逸れたな
ともかく、俺の好みに共感してくれる人ってけっこう少ないんだよ
他の作品なら話込める相手も、あの作品について語ろうとすると、「あぁ、あれも面白いよねー」くらいで、あまり盛り上がらねえ
俺はそれがものすごーく残念でね
まあ、そこまで残念がれるほど好きなのはいいことなんだろうけどな
だから、こんなところで同好の士に出会えるとは思わなかったよ
ほんと、ありがたい
少し話したが、あんたはかなり詳しい人だろ
楽しく語り合うと同時に、俺も勉強させてもらう
絶対にあんたのほうが造詣が深いからな
好きなものの新たな一面を発見するのは楽しい
お互いに楽しもうぜ
こんな機会、普段はなかなか無いからさ

4/4/2025, 11:51:24 AM

僕はその日、初恋を経験した
一目惚れだった
散歩で来た、桜のきれいなあの公園で、花びらが舞う中に、その子は立っていた
桜を眺めながら
小6になったばかりの僕と同い年くらいの女の子
話しかけたいけど、見ず知らずの相手に会話がしたくて話しかけるのは、どう考えてもヤバいと思う
僕はそのまま何もせず、ドキドキしながらすぐに帰った

また別の日、同じ公園に来てみたけど、あの子はいなかった
それはそうだ
毎日来てるのでもない限り、あの日、たまたまいた子が、またいるわけがない
僕はなんでちょっと期待したのだろう?
もう桜は散っている
意味もなく公園を歩いていると、僕も持っている、漫画のキャラのキーホルダーが落ちていた
誰かの落とし物だろう
なんとなく拾って見ていると、横から誰かが走ってきた
あの子だった

「あ、あの、そのキーホルダー
わ、私のもので……」

その子は激しく動揺した感じで、僕に話しかけてきた
キーホルダーはこの子の物だったのか
それにしても、こんなに動揺するなんて、内気な子なのかな?
あと、声をどこかで聞いた気がするけど、思い出せない
それに見た目も、なぜか見覚えを感じる
気のせいか?
とにかく、僕はキーホルダーを返した

「偶然だけど、そのキーホルダー、僕も持ってるんだよね
このキャラ、好きなの?」

「え?
あ、うん」

「この漫画、面白いよね」

「そ、そうだね」

やっぱり、なんか動揺しっぱなしだな
あんまり話しかけるのも悪いから、名残惜しいけど、僕は帰ることにした

「ええと、ありがとう」

「うん、それじゃ」


翌日、学校ではあの子と話したことが頭をぐるぐる回って、あまり授業に集中できなかった
休み時間、友達に呼ばれて付いて行った時も、あまり頭が回らず、どこへ向かっているのかもわからないくらいだった
友達は普段、学校の中でも人があまりいないところへ僕を連れてきていた

「あのさ、俺、双子の妹いるじゃん」

「あー、そういえばそうだった
でもなんか、付き合い長いわりには、君の妹、会ったことも見かけたこともないよね、僕は」

そこで何かが僕の中で繋がった
公園にいた子に感じた、見覚えや声の聞き覚えは、そうだ
目の前の友達だ
ということは、あの子は双子の妹だったのか?
だとしたら最強の接点が生まれたぞ!
是非ともお近づきになりたい

「おい、聞いてるか、俺の話?」

「あ、ごめん
ちょっとボーっとしてた
なんだっけ?」

「だから、妹を昔から見てて、ちょっと俺、羨ましく感じてたんだよ」

羨ましく?
なにをだろう?
なぜかちょっと嫌な予感がする

「それで、親に頼んで、女の子の服とか買ってもらって、着てたわけ」

ん?
今、なんて言った?
ちょっっっと待って
この先を聞いたら僕の何かが終わりそうな感じがするんだけど?
この先を聞いていいのか僕は?

「昨日、キーホルダー落として、お前に拾ってもらったやついただろ
頼むから誰にも言わないでほしいんだけど、あれ、俺なんだ」

ああああぁぁぁぁ
終わった、何かが、いや初恋が
あのキーホルダー、僕が君と何年か前に一緒に遊びに行った時、僕の親にお揃いで買ってもらったやつの片方だったのか……!
動揺する僕だったが、不安そうな友達の顔が見えたので、かろうじて崩れ落ちずに済む
僕の事はこの際いい
勇気を出した友達を、僕と普段から仲良くしてくれる友達を安心させないと

「大丈夫だよ
僕も人に知られたくないことのひとつやふたつやみっつ、あるから言わないよ
もしよければ、そのうちのひとつを教えて、秘密をお互いバラさないようにするとかでもいいよ」

「いや、そこまでしなくていい
お前のその言葉で安心したよ、ありがとな」

友達はめちゃくちゃいい笑顔で握手してきた
安心してくれてよかったけど、僕の悲しみはしばらく続きそうだ
きれいだった桜ももう散ったけど、きれいだった僕の初恋も散っちゃったね

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