昔、幼馴染とした遠い約束
俺はそれを果たすため、この場所に来た
彼女がピンチになったら必ず助ける
そう、約束したのだ
今はお互い、別のパーティに所属しているが、関係ない
絶対に間に合わせる!
ようやくたどり着くと、幼馴染が傷だらけで片膝をついていた
敵である怪物はまだ戦意をみなぎらせているが、幸い俺には気づいていない
彼女を助けなければ!
俺は思い切り跳躍すると、怪物の弱点である首筋に剣を突き立てた
怪物は苦悶の表情を浮かべると、背中から倒れ、動かなくなった
なんとか、助けることができたか
「あ、ありがとう
でも、どうしてあなたがここに?」
「お前が逃がした仲間が、近くにいた俺に助けを求めてきたんだ」
「そうだったんだ
でもよかった、危ないところだったから
本当に、ありがとうね」
座り込む彼女に手を差し伸べる
「礼はいいよ
昔、約束したからな
お前がピンチになったら、助けに行くって」
ちょっとカッコつけながら言うと、彼女は伸ばしたてを止めた
ん?どうした?
「そんな約束、してないけど?」
「え?
七年くらい前、村の樹の下で約束しただろ?
忘れちゃったのか?」
「いやいや、してないしてない
私、そういうピンチになる前提のくだらない約束するの嫌いだもん」
なんか、嫌な汗が背中から吹き出してきた
ヤバい、約束の相手を勘違いしてたっぽい
なんでこんな勘違いしたんだ俺
「別に私はいいんだけど、誰と約束したか、思い出したほうがいいよ?
というか、相手を忘れるってヤバくない?」
「だよな、ヤバいよな
ええーと、誰だっけ……」
ここから、うっかり失われた記憶を思い出す問答が始まった
「村長の孫?」
「あんまり話したことない」
「あなたが話しかけられるたび照れまくってたアリア?」
「そんな約束、照れてできないよ」
「うーん、薬屋の家のジェシカ?」
「俺、あの子苦手だった」
「あとは、お嬢様のメアリー?」
「んー、ピンとこないぞ」
「ええ?
他は……あのさ、まさかとは思うけど、姉さんじゃない?
私の、さ」
その瞬間、俺の記憶の扉が開け放たれた
そうだ、彼女のお姉さんに、当時俺は憧れていて、そんな約束をしたのだった
なんか、それが妹の方に記憶がすり替えられていた
再び……いや、嫌な汗がさっきより多く背中から吹き出してきた
「あのね、あれだね
お姉さんだね、思い出したよ」
幼馴染が「こいつマジか」みたいな目を向けてくる
視線が痛い、すごく痛い
「うわぁ、最低だなぁ
姉妹を間違えるとかさぁ
想像以上の結末だったよ……」
「ごっ、ごめんなさい……」
これはもう、誠心誠意謝罪し続けるしかないな
本当に、申し訳ない
4/8/2025, 11:20:33 AM