ストック1

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4/5/2025, 11:08:06 AM

別に評価が低いわけじゃないんだよ
でも世間じゃ、面白いけどパッとしないって意見が大半なんだよな
だがそんなの関係無しに俺は一番好きだよ
確かに今までの作品とは毛色が違うけどな
同じような内容一辺倒じゃないってことを示したし、それでいて十分魅力的だと思うんだ
ただ、あれが一番好きって言うとな
通気取りだ、みたいなことを言われることもあって、それがどうもムカつく
別にマイナー好きの自分を演出して、かっこつけるために好きって言ってんじゃねえんだよ
俺は実際に面白いから好きだと言ってるだけなんだけどな
俺に言わせれば、マイナーを好む人間を気取り屋だとレッテル貼って、メジャー好きが素直な楽しみ方だ、ってやつも、思いっきり気取り屋だと思うがね
ま、大半の人間はそんな事考えず、自分の好きなもんを好きでいると思うが
おっと、話が逸れたな
ともかく、俺の好みに共感してくれる人ってけっこう少ないんだよ
他の作品なら話込める相手も、あの作品について語ろうとすると、「あぁ、あれも面白いよねー」くらいで、あまり盛り上がらねえ
俺はそれがものすごーく残念でね
まあ、そこまで残念がれるほど好きなのはいいことなんだろうけどな
だから、こんなところで同好の士に出会えるとは思わなかったよ
ほんと、ありがたい
少し話したが、あんたはかなり詳しい人だろ
楽しく語り合うと同時に、俺も勉強させてもらう
絶対にあんたのほうが造詣が深いからな
好きなものの新たな一面を発見するのは楽しい
お互いに楽しもうぜ
こんな機会、普段はなかなか無いからさ

4/4/2025, 11:51:24 AM

僕はその日、初恋を経験した
一目惚れだった
散歩で来た、桜のきれいなあの公園で、花びらが舞う中に、その子は立っていた
桜を眺めながら
小6になったばかりの僕と同い年くらいの女の子
話しかけたいけど、見ず知らずの相手に会話がしたくて話しかけるのは、どう考えてもヤバいと思う
僕はそのまま何もせず、ドキドキしながらすぐに帰った

また別の日、同じ公園に来てみたけど、あの子はいなかった
それはそうだ
毎日来てるのでもない限り、あの日、たまたまいた子が、またいるわけがない
僕はなんでちょっと期待したのだろう?
もう桜は散っている
意味もなく公園を歩いていると、僕も持っている、漫画のキャラのキーホルダーが落ちていた
誰かの落とし物だろう
なんとなく拾って見ていると、横から誰かが走ってきた
あの子だった

「あ、あの、そのキーホルダー
わ、私のもので……」

その子は激しく動揺した感じで、僕に話しかけてきた
キーホルダーはこの子の物だったのか
それにしても、こんなに動揺するなんて、内気な子なのかな?
あと、声をどこかで聞いた気がするけど、思い出せない
それに見た目も、なぜか見覚えを感じる
気のせいか?
とにかく、僕はキーホルダーを返した

「偶然だけど、そのキーホルダー、僕も持ってるんだよね
このキャラ、好きなの?」

「え?
あ、うん」

「この漫画、面白いよね」

「そ、そうだね」

やっぱり、なんか動揺しっぱなしだな
あんまり話しかけるのも悪いから、名残惜しいけど、僕は帰ることにした

「ええと、ありがとう」

「うん、それじゃ」


翌日、学校ではあの子と話したことが頭をぐるぐる回って、あまり授業に集中できなかった
休み時間、友達に呼ばれて付いて行った時も、あまり頭が回らず、どこへ向かっているのかもわからないくらいだった
友達は普段、学校の中でも人があまりいないところへ僕を連れてきていた

「あのさ、俺、双子の妹いるじゃん」

「あー、そういえばそうだった
でもなんか、付き合い長いわりには、君の妹、会ったことも見かけたこともないよね、僕は」

そこで何かが僕の中で繋がった
公園にいた子に感じた、見覚えや声の聞き覚えは、そうだ
目の前の友達だ
ということは、あの子は双子の妹だったのか?
だとしたら最強の接点が生まれたぞ!
是非ともお近づきになりたい

「おい、聞いてるか、俺の話?」

「あ、ごめん
ちょっとボーっとしてた
なんだっけ?」

「だから、妹を昔から見てて、ちょっと俺、羨ましく感じてたんだよ」

羨ましく?
なにをだろう?
なぜかちょっと嫌な予感がする

「それで、親に頼んで、女の子の服とか買ってもらって、着てたわけ」

ん?
今、なんて言った?
ちょっっっと待って
この先を聞いたら僕の何かが終わりそうな感じがするんだけど?
この先を聞いていいのか僕は?

「昨日、キーホルダー落として、お前に拾ってもらったやついただろ
頼むから誰にも言わないでほしいんだけど、あれ、俺なんだ」

ああああぁぁぁぁ
終わった、何かが、いや初恋が
あのキーホルダー、僕が君と何年か前に一緒に遊びに行った時、僕の親にお揃いで買ってもらったやつの片方だったのか……!
動揺する僕だったが、不安そうな友達の顔が見えたので、かろうじて崩れ落ちずに済む
僕の事はこの際いい
勇気を出した友達を、僕と普段から仲良くしてくれる友達を安心させないと

「大丈夫だよ
僕も人に知られたくないことのひとつやふたつやみっつ、あるから言わないよ
もしよければ、そのうちのひとつを教えて、秘密をお互いバラさないようにするとかでもいいよ」

「いや、そこまでしなくていい
お前のその言葉で安心したよ、ありがとな」

友達はめちゃくちゃいい笑顔で握手してきた
安心してくれてよかったけど、僕の悲しみはしばらく続きそうだ
きれいだった桜ももう散ったけど、きれいだった僕の初恋も散っちゃったね

4/3/2025, 11:25:54 AM

僕には視える
君と共にいるそれが
君とは長い付き合いだけど、君にはそれが視えたことがないようだ
壮厳な姿をして、君の背後に浮かぶ守護霊
君を危険や不幸から守ってくれる
君は自分を運がいいほうだと言うけど、それは守護霊のおかげだ
そして守護霊は僕に対して、普段の壮厳さとは裏腹に、実に柔和な笑顔で手を振る
自分で言うのもなんだけど、主である君への僕の普段の行いがいいのだろう
何かの間違いで君の機嫌を損ねた時が、ちょっと怖いけど
でも、君といるのも楽しくて、守護霊の表情を見るのも楽しくて、二倍の楽しさを味わうことができるのは素晴らしい
それでとても幸せな気分になる
守護霊は意外と表情が豊かなのだ
そして、どうやら君と一緒の時、守護霊は僕のことも守ってくれているらしく、たまに疲れ気味になっている
心配になるけど、すぐに元気になるのは、君が楽しそうにしていることで、霊力が戻るからかな
ともかく、君と守護霊のおかげで僕の毎日は常に楽しさで溢れている
そんな話を君にしたけど、まあ信じないだろう
本当のことだけど、君は冗談だと思って笑う
守護霊を見ると、口に人差し指を当てて、「シー」、と言っている
守護霊はどうやら、存在を知られず、影の立役者でありたいようだ
それが守護霊の望みなら僕は黙っていよう
これからも、君と、もうひとりと、楽しい生活を続けられたら、それで満足だ

4/2/2025, 10:52:32 AM

空に憧れ、いつも空を眺めている恐竜がいた
その恐竜は、空を自在に翔ける翼竜を羨ましく思い、なんとか飛べないものかと考え続ける
しかし、様々なことを試しても、どれだけ考えても、ついに空を飛ぶことはなかった
そして、自分は空を飛べないのだと悟り、残りの生を仲間や子供のためだけに捧げる
悔いはなかった
納得して諦めたのだから
だが、その背中を見てきた子供は、親の願いを叶えようと決意した
しかし、彼は知っていた
自分が飛ぶことは絶対に不可能だと
一方で、知識はないはずなのに、連綿と受け継がれてきた遺伝子が記憶していたのか、進化というものをなんとなく理解していた
自分が叶えられずとも、子孫が必ず達成してくれる
彼が自身に課した使命は、子孫に命を引き継ぐこと
これまで、祖先から親までがしてきたことと何も変わらない
生きて、競争に勝ち続け、愛するつがいを見つけ、子孫を残す
ただ、それだけでいい
恐ろしくなるほどに達成は困難だが、同族が、他の恐竜が、いや、この世の生きとし生ける多くのものがしていることだ
ありふれた行動だ
難しいが、何も複雑じゃない
そして彼は使命を全うしてみせた
最期の時まで、夢を見続けた一生だった
彼の血だけでなく、遺志も引き継がれたのか、彼の子孫たちは何代も何代も、誰に言われるでもなく同じ夢を抱き、空を目指し続けた
そうして、どれだけの時間が経ち、どれだけの世代が変わっていっただろうか?
気の遠くなるような時の流れの中、恐竜は空を飛んだ
夢が叶ったのだ
だが、そこで満足しなかった
もっと上手く、もっと自在に、もっと自由に
さらに時間と世代をかけ、彼らは先祖と自分たちの夢に向かって、子孫を残し続ける
もはやその姿に、かつての面影は見られなかった
それでも、彼らは確かに恐竜だった
彼らは後に、「鳥」と呼ばれる
空に向かって夢を抱いたその一頭は、時を、世代を超え、子孫たちによってようやく夢を叶えたのだ

4/1/2025, 11:34:35 AM

「はじめまして、わたくしレッドムーン魔法学園のダグラスと申します」

はあ、これはどうもご丁寧に
私に何か用でしょうか?

「実は、我々は深緑の森の賢者と呼ばれるフラウさんを、是非とも教師としてお招きしたいと考えておりまして」

お断りします

「え?
いやいや、報酬はそれなりの金額をご用意させていただきますよ?」

高額な報酬、そこまで魅力的じゃないんですよね
今の収入もけっこうな金額で、十分生活できてますし、研究や実験に使う素材は採集が主だし、たまに高い素材を買うときも余裕なくらいなので

「学園へ来ていただければ、様々な施設を使えますよ?
研究も実験もしやすくなるはずです!」

まぁ、それは魅力的ですけど……

「じゃあやっていただけませんか!?
捗りますよ!?
我々も捗ってます!
素材も自由に使えますし!」

教師はやりたくないんですよねぇ
そういう場で教えたことないですし、ノウハウとかもなくてわからないので

「研修も手厚く行わせていただきます!
わからないことや不安も遠慮せずおっしゃってください!」

モンスターペアレントとか最近聞くじゃないですか
私、それ系の対応とか苦手で、病んじゃいますよ?

「それも、我々が対応しますし、サポートいたしますよ」

不良とか怖いし、生徒の問題への対応とかできないです

「我らが学園はこう言ったらなんですが、精神性も重視する名門なので、変な生徒はいませんし、授業以外のことは我々の方で行います
ですから!
どうかお願いします!」

でも、でもですよ?
私の見た目、14歳くらいなので、生徒の皆さんが同年代や年下に見える相手から、偉そうに教えられたら、不快じゃないですか?

「フラウさんが250歳なのは生徒も知ってますから!
偉大な賢者様に教えていただけるなんて、生徒たちも喜びますし、よりいっそう勉学に力が入ります!」

私は自分を賢者と思ったことはないですけどね
あと、あまり私の年齢を大声で言わないでください

「あっ、も、申し訳ございません
と、とにかく、魔法の発展を助けるのだと思って、来てはいただけないでしょうか?」

いや、でも……

「ふぅ、わかりました
この手は使いたくなかったのですがね
……吟遊詩人グループのレイン・アンド・ファイア
フラウさんは大ファンですよね?」

な、なぜそれを

「学園の情報網を舐めてもらっちゃ困ります
あなたを学園へお招きするため、調査は徹底的にやらせていただきました
それはともかく
実は彼ら、学園の卒業生なんですよ
ハイレベルな魔法パフォーマンス、知ってるでしょ?
フラウさんさえよければ、ライブのチケット、ご用意いたしますが?」

うっ
い、いやいや、そそ、そんな

「彼らと、ちょっとお話してみたくはありませんか?」

うぐぐぐぐぅ!

「……全員のサイン入り限定超レアグッズ」

承らせていただきます!!

「……勝ったぁ……
では後日、契約書を持ってまいります
よろしくお願い致しますね、フラウ"先生"」

ま、負けた……
あぁー、反則すぎぃ
でもいっかぁ、倍率高いレイン・アンド・ファイアのライブどころか、レアグッズ、さらにメンバーの皆さんとお話できるんだから
……ふへへ
よし、もうこうなったらレイン・アンド・ファイアを糧に教師生活頑張ろう!

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