空に憧れ、いつも空を眺めている恐竜がいた
その恐竜は、空を自在に翔ける翼竜を羨ましく思い、なんとか飛べないものかと考え続ける
しかし、様々なことを試しても、どれだけ考えても、ついに空を飛ぶことはなかった
そして、自分は空を飛べないのだと悟り、残りの生を仲間や子供のためだけに捧げる
悔いはなかった
納得して諦めたのだから
だが、その背中を見てきた子供は、親の願いを叶えようと決意した
しかし、彼は知っていた
自分が飛ぶことは絶対に不可能だと
一方で、知識はないはずなのに、連綿と受け継がれてきた遺伝子が記憶していたのか、進化というものをなんとなく理解していた
自分が叶えられずとも、子孫が必ず達成してくれる
彼が自身に課した使命は、子孫に命を引き継ぐこと
これまで、祖先から親までがしてきたことと何も変わらない
生きて、競争に勝ち続け、愛するつがいを見つけ、子孫を残す
ただ、それだけでいい
恐ろしくなるほどに達成は困難だが、同族が、他の恐竜が、いや、この世の生きとし生ける多くのものがしていることだ
ありふれた行動だ
難しいが、何も複雑じゃない
そして彼は使命を全うしてみせた
最期の時まで、夢を見続けた一生だった
彼の血だけでなく、遺志も引き継がれたのか、彼の子孫たちは何代も何代も、誰に言われるでもなく同じ夢を抱き、空を目指し続けた
そうして、どれだけの時間が経ち、どれだけの世代が変わっていっただろうか?
気の遠くなるような時の流れの中、恐竜は空を飛んだ
夢が叶ったのだ
だが、そこで満足しなかった
もっと上手く、もっと自在に、もっと自由に
さらに時間と世代をかけ、彼らは先祖と自分たちの夢に向かって、子孫を残し続ける
もはやその姿に、かつての面影は見られなかった
それでも、彼らは確かに恐竜だった
彼らは後に、「鳥」と呼ばれる
空に向かって夢を抱いたその一頭は、時を、世代を超え、子孫たちによってようやく夢を叶えたのだ
4/2/2025, 10:52:32 AM