【夢を見てたい】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
1/14 AM 10:27
「宵ちゃんになりたい」
「……いきなり、何? 寝惚けてるの?」
「ちゃんと起きてるよ~。ほら、ゲームとか
漫画で、体が入れ替わっちゃった! って
いうシチュエーション、よくあるでしょ?」
「よくあるの?」
「よくあるの! それで、わたしなら
宵ちゃんになりたいっていう話」
「……通話、切っていい?」
「えっ、理由は聞いてくれないの?」
「ろくなこと言わなそうだから」
「宵ちゃんの魅力を語ろうとしてるだけなのに」
「切っていい?」
「まぁまぁ。だって、女子としてはやっぱり
宵ちゃんの抜群のプロポーションに
憧れちゃうワケですよ。
スリットがっつり入ってて胸の谷間も見える
ようなセクシーなチャイナドレス着たり、
オフショルミニ丈の白ニットワンピで萌袖
したり、ロリータメイド服に猫耳猫しっぽ
付きでハートポーズとったりしたいの!」
「何を言ってるのよ……」
「要約すると、宵ちゃんが着てくれなそうな
服を着て、自撮りしまくりたい、かな」
「そんなことが楽しい?」
「超楽しいと思う」
「ああそう」
「呆れないで~。
夢を見てたいお年頃なんだよ~」
「ほどほどにしときなさい」
「うう……これでも自重した方なのに」
「自重の意味、一回辞書で調べたら?」
「宵ちゃんは厳しいなぁ。
もうこうなったらついでに言っちゃうけど、
天明(てんめい)くんになるのも楽しそう。
宵ちゃんに壁ドンして、乙女ゲーに
負けないレベルの甘い台詞で迫りたい」
「丁重にお断りするわ。
……なんでアンタは対象をアタシに絞るのよ」
「もー、宵ちゃん! 美少年が美少女を
口説くのは浪漫があるでしょ!
一番身近な美少女の宵ちゃんに断られたら
天明くんになったわたしは
誰に壁ドンすればいいの!
真夜(よる)くんにしろって言うの!?
――……アレ? なんだかそれはそれで、
一定の層には需要がある気がしないでも
ないような……楽しいかも?」
「……アタシが悪かったわ。だからそれ以上
妄想の幅を広げるの、やめなさい……」
【ずっとこのまま】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
1/11 PM 5:25
(めちゃくちゃ見られてるなー……)
昇降口から出ていく生徒、ほぼ全員から
注目を浴びているが、当の本人たちは全く
気にしている風もない。
「あ、天明(てんめい)くんだ。
天明くんも部活終わったんだね、
お疲れ様~」
俺に気付いた古結(こゆい)が、
にこやかに話しかけてくる。
真夜(よる)のコートに包まれて、
後ろから抱き締められながら。
「お疲れ。……あー、その、
だいぶ目立ってるけど、いいのか?」
「うーん、やっぱり目立ってるの?
さっきも別の友達に言われたんだけど。
なんでだろうね~、真夜くん」
「……さぁ?」
「(カップルが堂々とイチャついてるように
しか見えないからじゃねーかな……)」
無自覚な2人に、それを伝えた方が
いいのか迷う。
――その時だった。
「お待たせ、真夜、暁。
……槇(まき)くんも一緒だったのね。
それはともかく、何でアンタたちは
二人羽織なんかで遊んでるの」
現れた宵の言葉に、一瞬周囲の空気が
ザワッとしたのが分かる。
恐らく、宵の言葉が聞こえてしまった奴は
『二人羽織はねーわ!』
と、心の中でツッコまずにはいられなかった
からだろう。
正直、俺にもその発想はなかった。
真夜と古結のことを良く知らない人間からは
仲のいいカップルにしか見えないのに、
2人を良く知る宵には、2人が遊んでいるよう
にしか見えない。
立ち位置によって、見え方がまるで違う。
その認識のズレが可笑しかった。
「違うよ~宵ちゃん。これはね、真夜くんの
温もりを分けてもらってたの」
「なら、いつまでも真夜で暖を取ってないで、
出てきなさい。そのままじゃ歩けないでしょ」
「えええぇー……もうずっとこのままで
いたかったのに~。仕方ないなぁ。
……ありがとね、真夜くん」
「どういたしまして」
渋々真夜のコートの中から出てきた
古結は、今度は宵の腕に絡み付く。
「帰ろ~、宵ちゃん、真夜くん。
天明くんも、途中まで方向同じだよね?」
「そうだな。一緒に帰るか」
俺はまだまだ、3人への理解が
足りないらしい。
【寒さが身に染みて】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
1/11 PM 5:15
「さむ~い! 今日は風が冷た過ぎるよー。
コート着てマフラーして手袋して、
完全装備なのに太刀打ち出来ない
寒さだよ!」
「……スカート、長くすれば
少しはマシなんじゃ?」
「この短さがJKプライドだから」
「……なら、膝上までくる長い靴下
履くとか……」
「あ、ニーハイは可愛いよね。
……って、もしや真夜(よる)くん、
絶対領域フェチ?」
「……?」
「違うかー。
まぁ、とりあえず、その話は置いといて。
寒くて耐えられないので、真夜くんの
コートの中に入れてください」
「……どーぞ」
「は~、やっぱりくっつくとあったかいね~」
「……あんたたち、昇降口で何してんの」
「あれ? しぃちゃんにとっしー」
「……よぉ」
「2人とも、部活終わったのにまだ学校に
居たんだね」
「クラスの友達と少し話をしてたのよ」
「そっか~。わたしと真夜くんは、
宵ちゃんを待ってるの」
「その目立ちまくりな状態で、
来るまで待ってる気だったのか……」
「え? 目立ってるの? わたしたち」
「自覚なし。ある意味、あんたたちらしいわ。
じゃ、お先に」
「……じゃーな、暁。また明日」
「うん。また明日ね」
「…………。」
「……なんでアイツら恋人同士でもねーのに
コートで包んで後ろから抱き締めてんだよ!
ってところかしら?」
「…………。」
「寒さが身に染みるわね」
「言うな……それ以上……打ちのめされるから」
「天然て最恐(さいきょう)よねぇ。ドンマイ」
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ほぼノリだけで書いているので、
いきなりキャラが増えたりします。
段々書いている自分が把握できなく
なってきました(大問題)
そんな適当な感じの物語をお読み頂いて
ありがとうございます。
『いいね』的なものまで押して下さって
いる方がいて恐縮です。
ありがとうございます。
ほんのちょっとでも楽しいのであれば
幸いです。
【20歳】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
1/9 PM 9:00
『お誕生日おめでとう』
『主様……! 僕の誕生日を覚えていて
くださったんですか。……身に余る
光栄です。本当にありがとうございます』
(~~~っ! かわいい!)
ゲーム画面の中で、推しの子がお祝いされて
喜んでいる。
はにかんでいる表情のスチルが可愛すぎて、
思わず悶えてしまった。
(あーもう、萌え死にそう。ヤバい。
こんなにかわいい20歳って反則!)
いったん目を瞑って深呼吸。
そうしないと、この後の甘い展開に心臓が
保たなくなる気がした。
『どうか、この先もずっと、貴方のお側に
居させてください』
(……。……うん。そうだよね、大好きな人の
側に、ずっと居たいよね……)
推しの子の心地好い声を聞きながら、
うらやましく思う。
ゲームの中の《ずっと》は、永久保証
されているものだから。
(わたしはいつまで、一緒にいられるのかな)
スマホを手に取る。
今、この瞬間は、推しの声より
宵ちゃんの声が聞きたくなった。
【三日月】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
1/1 PM 5:30
「わ~、寒いね~」
踊るような足取りで先頭を歩きながら
古結(こゆい)が呟いた。
日射しが暖かかった昼間と違って、
辺りはすっかり暗くなって冷たい風が
吹いている。
「晩ごはんの時間にはまだ早いけど、
ちょっとお腹すいちゃった」
「……ラーメンでも食べて帰る?」
「真夜(よる)くん、ナイスアイディア!
宵ちゃんと天明(てんめい)くんも
それでいい?」
「……いいけど」
「異議なし」
「ちなみにわたしは醤油派で~、
宵ちゃんと真夜くんは塩派なんだけど、
天明くんは?」
「あー、俺は味噌だなぁ」
「バラバラだねぇ。――あっ、じゃあじゃあ、
カップヌードルだったら好きな味は?
せーの!」
「「「「カレー」」」」
まさかの満場一致!! と言いながら
爆笑している古結と、
その姿を見て柔らかに微笑んでいる真夜と、
笑いをこらえようとしているのか口許を
手で押さえて小さく震えている宵。
俺も思わず笑ってしまった。
古結 暁、星河(ほしかわ) 真夜、星河 宵。
幼なじみだという3人と、俺は知り合って
日が浅い。
ただ、一緒にいて、不思議な居心地の良さを
感じている。
「……暁、笑ってばかりいないで、
ちゃんと前見て歩きなさい。
人にぶつかるわよ」
「はーい」
古結に注意する宵の耳元で揺れる、
三日月に猫が座っているデザインの
イヤリングが、街路灯の光を受けて
キラリと輝いた。