【ずっとこのまま】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
1/11 PM 5:25
(めちゃくちゃ見られてるなー……)
昇降口から出ていく生徒、ほぼ全員から
注目を浴びているが、当の本人たちは全く
気にしている風もない。
「あ、天明(てんめい)くんだ。
天明くんも部活終わったんだね、
お疲れ様~」
俺に気付いた古結(こゆい)が、
にこやかに話しかけてくる。
真夜(よる)のコートに包まれて、
後ろから抱き締められながら。
「お疲れ。……あー、その、
だいぶ目立ってるけど、いいのか?」
「うーん、やっぱり目立ってるの?
さっきも別の友達に言われたんだけど。
なんでだろうね~、真夜くん」
「……さぁ?」
「(カップルが堂々とイチャついてるように
しか見えないからじゃねーかな……)」
無自覚な2人に、それを伝えた方が
いいのか迷う。
――その時だった。
「お待たせ、真夜、暁。
……槇(まき)くんも一緒だったのね。
それはともかく、何でアンタたちは
二人羽織なんかで遊んでるの」
現れた宵の言葉に、一瞬周囲の空気が
ザワッとしたのが分かる。
恐らく、宵の言葉が聞こえてしまった奴は
『二人羽織はねーわ!』
と、心の中でツッコまずにはいられなかった
からだろう。
正直、俺にもその発想はなかった。
真夜と古結のことを良く知らない人間からは
仲のいいカップルにしか見えないのに、
2人を良く知る宵には、2人が遊んでいるよう
にしか見えない。
立ち位置によって、見え方がまるで違う。
その認識のズレが可笑しかった。
「違うよ~宵ちゃん。これはね、真夜くんの
温もりを分けてもらってたの」
「なら、いつまでも真夜で暖を取ってないで、
出てきなさい。そのままじゃ歩けないでしょ」
「えええぇー……もうずっとこのままで
いたかったのに~。仕方ないなぁ。
……ありがとね、真夜くん」
「どういたしまして」
渋々真夜のコートの中から出てきた
古結は、今度は宵の腕に絡み付く。
「帰ろ~、宵ちゃん、真夜くん。
天明くんも、途中まで方向同じだよね?」
「そうだな。一緒に帰るか」
俺はまだまだ、3人への理解が
足りないらしい。
1/12/2023, 6:13:56 PM