【私だけ】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
7月某日
「……うーん……」
「……暁、ゲーム画面凝視しながら、
何を唸ってる訳?」
「ねぇ、宵ちゃん。スゴくかっこいい人に
『堪え性がないな』って言われると、
そこはかとなくエロスを感じない?」
「そんな同意を求められても……」
「えっ、あれ? そう思うのわたしだけ!?
なんかこう、キャーッて叫びたくなる
ような、たまらない感じっていうか。
――あ、そうだ、検証するために、
真夜(よる)くんと天明(てんめい)くんに
言ってみてもらうのはどう?」
「やめなさい。絶対にやめなさい」
【七夕】【1年前】【1年後】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
7/7 AM 7:50
「宵ちゃーん、真夜(よる)くーん、
ハッピーバースデー!」
「「おはよう、暁。お祝いありがとう」」
「それでね、学校から帰ってきてから、
おうちに誕プレ渡しに行っていい?」
「勿論。なんだったら夕飯も
食べていけばいいよ」
「じゃあ、お言葉に甘えて、
お誕生日だけど、家族水入らずに
お邪魔させてもらおうかな~」
「何を今更。アンタもほぼ
家族みたいなものでしょ」
「それに、母さん仕事で出張中だから、
オレと宵しか居ないし」
「……真夜くん、それって、お誕生日なのに
自分で晩御飯作るってこと……?」
7/7 AM 8:05
「天明(てんめい)くーん! おはよー」
「よ、3人とも、おはよう」
「「おはよう」」
「真夜と宵は誕生日おめでとう」
「……っ」
「宵? 今日だよな? 七夕の日が
誕生日だって言ってなかったか?」
「大正解だよ~! 天明くん!」
「良く覚えてたな」
「あの、……ごめんなさい、変な反応に
なって。ちょっと、驚いて、その……、
ありがとう」
「はは、間違ってないなら良かったよ。
――それで、学校帰り、家に寄って
いいか? プレゼント持ってきたんだ」
「あ! わたしも宵ちゃんたちのおうち、
行く予定なんだよ!」
「そうだな。暁も来るし、いっそ天明も
夕飯食べていけばいいんじゃないか」
「うんうん、それがいいと思う!」
7/7 PM 6:10
「お邪魔しまーす!」
「……なるほど。オレに夕飯作り始めないで
待ってて欲しいって言ったのは、
こういうことか」
「うん! これはわたしのお母さんからの
誕生日プレゼントって思ってくれれば」
「スゴい量のオードブルね……。
真夜、アタシ、旭(あさひ)さんにお礼の
電話してくるわ」
「了解。オレはテーブルにオードブルの
セッティングしとく。
――暁も、持って来るの重かったんじゃ
ないか? お疲れ様、ありがとう」
「どういたしまして~。真夜くんの料理は
大好きだけど、自分のお誕生日くらい、
作らないで楽してもいいかなって。
――あ、インターホンが鳴ったね」
「天明、部活終わって来たんだな」
「わたしが玄関開けに行ってくるね~」
7/7 PM 6:15
「いらっしゃーい、天明くん」
「悪い、待たせたよな?」
「わたしも今さっき来たとこだから
大丈夫! 上がって上がって」
「お疲れ、天明」
「いらっしゃい、槇(まき)くん」
「お邪魔します、……って、なんか
豪勢なことになってるな!?」
「そうだな。……肉が」
「お母さん、若者といえばお肉でしょ!
って言って、お肉料理専門店の
オードブル買ってきたからね~。
鶏の唐揚げにー、牛ステーキにー、
ポークソーセージにー、
クロスティーニは鶏レバーペーストと
生ハムの2種類でー、それから
ローストビーフとローストポークの
お寿司だよ!」
「お寿司も肉なのか。徹底してるな」
「(……さすがに、箸休め的なサラダでも
作った方が良さそうだな……)」
7/7 PM 7:30
「わぁー、ステキ!
2人とも、とっても似合ってるよ!」
天明からプレゼントされた
キャップを被ったオレと宵を見て、
暁が感嘆の声を上げる。
「長めの鍔(つば)でしっかり日差し
防げるし、アジャスターで調節も
出来て機能的だな」
「ツバが長くても、シルエットは
スゴくスッキリして見えるよ~。
さすが天明くんが選んだだけあって
スタイリッシュ!」
「そうね……色も綺麗」
「偶然だけど、わたしの誕プレと
ちょうどいい感じに色が
マッチングしたよね」
暁が宵にプレゼントした
猫型フォルムのミニマムバッグも、
天明からのプレゼントのキャップも、
どちらもロシアンブルーの毛色のような
グレーで、確かに色が一致している。
「真夜くんのキャップの深いネイビーも
まさしく真夜くんって感じ。
カッコいいよ!
天明くん、グッショブです!」
「古結(こゆい)にそう言われると、
2人に合うもの選べたんだなって
思えるな」
暁の絶賛に、天明は安心したように
笑っている。
(……今更ながら)
宵とオレの誕生日に、暁でも、
家族でもない人間が家に居るのは、
極めて異例なことだな、と思う。
ただ、その異例さを、オレは
嫌だとか煩わしいとは感じていない。
(宵が嬉しいなら、それでいい)
「……何?」
オレの視線に気づいて、
宵が問いかけてくる。
「暁の言う通り、良く似合ってるよ、宵」
「お互い様でしょ」
宵自身は、いつも通りの自分を
装えていると思っているだろう。
オレには、照れているのも
喜んでいるのも筒抜けだけれど。
――1年前には、こんな誕生日になるとは
思いもよらなかった。
1年後にどうなっているかは、もっと
想像出来ない。それでも。
次も、その次も、この先ずっと。
宵が幸せを感じられる
誕生日であって欲しい。
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そういえば双子の誕生日は七夕の日で
設定したっけな、と思い出して1年ぶりに
書きました。
次はいつになるかなー……。
【赤い糸】【神様だけが知っている】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
7/1 PM 3:00
「……何をしてるの、暁」
「ん~? 運命の赤い糸ごっこ?」
赤色の刺繍糸をアタシと自分の小指に
結んで、暁は満足そうにしている。
「楽しい?」
「とっても楽しい」
「……まさかこのためだけに
赤い刺繍糸を買ってきた訳?」
「あ、それは違うよ。家に刺繍糸が
たくさん入ってる缶があって、
そこから持ってきたの。
お母さんが若い頃に、ミサンガって
いうのを作るのが流行った時が
あって、それに使ってたんだって」
「――宵、暁、マフィン焼けたよ。
……何してるんだ?」
キッチンから出来たてのマフィンと
飲み物を淹れたグラスを運んできた
真夜(よる)が、アタシたちを見て
不思議そうに訊ねる。
「運命の赤い糸ごっこ~!」
暁はさっきと同じ答えを、
元気良く真夜に返した。
「……なるほど?」
「真夜くんにも結んでいい?」
「いいよ。でも、マフィン食べてからに
しようか。糸が絡んだりして
食べにくくなるかもしれないし」
「うん!」
真夜が差し出したバナナマフィンを
受け取って、暁は嬉しそうに笑う。
「ほら、宵も」
「ありがとう」
アタシにはビターなチョコチップの
入ったマフィンを手渡して来る。
「いただきます。……~~~っ!
やっぱり真夜くんの作ってくれた
ものには美味しさが詰まってるよねぇ」
「そうね」
「愛も詰まってるしねぇ」
「まぁ、それは常に最大限注いでるのは
確かだよ」
自分ではプレーンのマフィンを
食べながら、真夜がさらっと言った。
――こんな真夜にも、
いつかは現れるんだろうか。
見えない運命の赤い糸で結ばれている、
アタシたちより大切に想える誰かが。
(……それこそ、神様だけが知っている、
っていうヤツかしらね……)
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5~6月はもう諦めてすっ飛ばしました。
書けそうな時に追記したりしなかったり
するかもしれない?
【愛を叫ぶ。】【正直】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
5/5 PM 10:30
真夜(よる)が槇(まき)くんと
男子会をすると言い出して、
家に槇くんが泊まりに来ている。
じゃあ宵ちゃんはわたしと女子会だね、
と暁に言われるがまま、アタシは暁の
部屋に泊まりに来ていた。
「真夜くん、男子会楽しめてるかな~?」
「……どうかしらね」
目の前にいる暁は、アイスティーを
飲みながら、にこにこ笑っている。
きっと、楽しんでるといいな、と
思っているんだろうけれど。
アタシには、真夜がそういうことを
楽しむとも、自ら積極的にやるとも
思えない。
「どうせ、アンタの入れ知恵
なんでしょ? 今回の男子会は」
「正解。真夜くんに負けず劣らず、
宵ちゃんも鋭いねぇ」
鋭いも何も、こんなに簡単な
犯人探しはない。
「なんで男子会なんてするように
言ったのよ?」
「だって、せっかく真夜くんに
同性のお友達が出来たんだもん、
友好を深められたらいいと思って。
天明(てんめい)くんが真夜くんの
心の友になってくれたら、
安心感あるし」
「心の友……?」
「ほら、真夜くんだって年頃の
男の子なんだよ? もしかしたら、
わたしたちには話しづらいけど、
男友達になら言える、みたいな
ことがあるかもしれないでしょ?」
「それは、……そう、なのかも
しれないけど」
真夜に、アタシたち以外の
気兼ねなく何でも話せる友人が
出来るのは良いことだと思えるのに、
どうしてか、一瞬、言葉に詰まって
しまいそうになった。
「――あ、大丈夫大丈夫。どれだけ
仲良しなお友達が出来ても、
真夜くんにとっての1番は
絶え間なく宵ちゃんだから」
「……別に、そんなこと心配してないわ」
「宵ちゃーん。宵ちゃんも、わたしと
2人きりの時くらい、恥ずかしがらずに
真夜くんへの愛を叫んでくれて
いいんだよ?
いつもわたしと真夜くんが、
惜しみなくやってるように!」
「……そうね。アンタと真夜は、
本当に自分の心に正直よね」
「いや~、照れますな~」
「言っておくけど、褒めてないから」
【おうち時間でやりたいこと】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
4/25 PM 4:50
「もうすぐゴールデンウィークだね」
教室で宵の部活が終わるのを
待っていると、暁がふと呟いた。
「そうだな」
読んでいた文庫本を閉じて答えると、
暁が目を合わせてくる。
「真夜(よる)くんたちは、
家族でお出かけしたりするの?」
「いや、そういう予定は特にないよ。
暁は旭(あさひ)さんとどこか行くのか?」
「うーん……せっかくの連休だから、
お母さんにはおうちでのんびり
過ごしてもらいたいかな~」
「――でも、暁は行きたい所がある?」
「……真夜くんは鋭いねぇ」
実はそうなの、と内緒話でも
するような小さな声で暁は囁いた。
「今年ってほんとにすごく
暖かいでしょ? そのせいで
もうバラが見頃なんだって。
だから、ローズガーデンに
行きたいなって思ったの」
「ああ、それはきっと宵も見たがるよ。
一緒に行こう」
「うん……! ありがとう、真夜くん」
暁は、それこそ花が咲くみたいに
ふわりと笑う。
喜び方がいつも素直だ。
「あ、けど、GW後半はお天気が悪い
みたいだね。結局、おうちの中で
過ごすことの方が多くなりそう」
「そうかもしれないな。家でやりたい
ことも考えておけばいいよ」
「おうち時間でやりたいことか~……。
――そうだ、真夜くん、提案なんだけど」
「早速思い付いた?」
「うん。あのね、真夜くん、
天明(てんめい)くんをお泊まりに誘って
男子会してみるのはどう?」
「……?」
思いも寄らない発想過ぎて、
なんて答えればいいか分からなかった。
天明と話すこと自体は、苦に感じない
とはいえ……男子会?
「そう言われても、オレは一般的な
男子高校生がするような話題を
持ち合わせてないと思うけど」
「そこはほら。『ご趣味は?』とか、
『家族構成は?』とか『朝食はご飯と
パン、どっち派ですか?』とか!」
「それだと男子会っていうより、
お見合いみたいな話題じゃないか?」
「まぁ、今後の宵ちゃんのための
リサーチってことで。そうなると、
『猫は好きですか?』も外せないね!」
宵のため。だとしたら、オレには
やらないという選択肢は存在しない。
「他には何を話せば?」
「えーと……宵ちゃんのためでもあるけど、
真夜くんと天明くんの親交を深めるのも
目的だから、真夜くんが気になることを
聞いてみるといいんじゃないかなぁ。
『好きな探偵は?』とか」
「天明は然程ミステリーに興味なさそう
だけどな。――ちなみに、暁は何か
聞いてみたいことはあるのか?」
「『マックのナゲットのソースは
バーベキューとマスタード、
どっちが好き?』かな!」
「……一応、確認してみるよ」