「夜空を超えて」
天の川が、夜空を2つに分けるようにきらめいている。まるで織姫と彦星のように私たちの距離は遠い。でも彼らのよう1年に1度会えるわけではない。もうずっとこうして越えることのできない夜空を見上げながらあなたのことを考えている。
ビルの屋上に登り手を伸ばせばとても近くに感じるのに、やっぱり遠くて。
1年に1度の逢瀬すら叶わないなら、私はいつこの夜空を越えることができるのだろうか。
「ぬくもりの記憶」
あなたと別れてもう数年になるのに、まだ手の中に残るぬくもりの記憶。
出かけるる時はいつもはぐれないように手を繋いでいてくれた。寒い時はお互いの手をギュッと握って温め合っていた。そのぬくもりをまだ、覚えている。
暖かい場所から冷えた場所に行くとより一層寒さを感じるように、あのぬくもりを覚えているせいでとても寒く感じる。どれだけ手を擦り合わせても、息を吹きかけても温まらない。
もう戻らないなら、寒くなるだけのぬくもりの記憶など早く消えてしまえばいいのに。
「凍える指先」
無防備に外気にさらされた指先から熱が少しずつ逃げていく。本能的に息を吹きかけたくなるが、グッとこらえた。
今はこのままでいたい。
だって、今にも君が慌ててやってきて、私の冷えた手を温めてくれるかもしれないから。
そんな、叶わない希望をそれでも捨てられずに抱き続けながら冷たい風の中に立つ。
捨てられない希望というのは残酷だなと思いながらも来ないであろう君をただ待ち続ける。凍える指先は、もう感覚すら残っていなかった。
「雪原の先へ」
視界を遮る猛吹雪。前へ前へと進む足を捕まえる積もった雪たち。一面真っ白に染め上げられた世界で、それでも一歩一歩踏みしめながら進んでいく。隣で同じように歩いていた人は私を越して行き、雪の中へ消えていった。足を取られて倒れていった人も見た。けれど、「先へ行かなくてはならない」という不思議な熱い想いだけが私を動かしていた。
この雪原の先にあるのが、希望なのかはたまた絶望なのかは分からない。それでも私たちは進まなければならない。
その先に希望があることを信じて。
「白い吐息」
シャボン玉を飛ばすように、ふうっと優しく息を吐き出せば白く空気に溶けていく。そんな光景に私は憧れている。私の街では冬でも息が白くなることはない。冷たい北風が体温を奪うけれど、空気はひんやりとしていないのだ。
どれだけ寒くても、ここでは白い吐息は生まれない。分かっていても、気温が低い日はもしかするとと思ってやってしまう。
いつか私の命が終わる前に、一度でいいからこの街で白い吐息を見てみたいな。