「My Heart」
足元には キラキラ光る欠片が散らばっている。これらは全て砕けた私の心だ。私はただ呆然とそれを見つめていた。でも心が砕けても、現実は止まってくれない。だから欠片を拾い集めて無理矢理に引っ付けた。力任せに直された心は欠片だった時の面影を全く感じないくらいに黒く澱み、ヒビが目立った。それでも、そんな心を抱えてまた歩き出す。輝いていたあの心は、もう戻らない。
「ないものねだり」
君の声が聞きたい。君の瞳を見つめたい。君に触れたい。君という存在を、私の体の全てで感じたい。
なんて、もう叶うことのない欲求。あの日からずっと、私はないものねだりをし続けている。ねだっても願っても、もう二度と満たされることはない欲求に、心は飢えたままで。
私がこの世で生き続ける限り、飢えて枯れた私の心が息を吹き返すことはきっとあり得ないだろう。
「好きじゃないのに」
真っ黒なコーヒーが入った白いカップに口をつける。さっきから何度も同じ動作を繰り返しているのに、コーヒーは全く減らない。その洋服、とても似合ってるね、と向かいの席から笑いかけるあなたはとっくに2杯目を注文していた。
闇のような色のコーヒーも、君が褒めたピンク色のワンピースも、私は好きじゃない。好きじゃないのに飲んでいるのは、着ているのは、あなたの好みのものだから。あなたが喜ぶから。
けれど、もう、疲れてしまった。あなたの理想に合わせるたびに、自分が上書きされて消えていってしまうような不安を感じる。
好きじゃないのに、偽るのはもうごめんだ。
「ところにより雨」
「ところにより雨」。そんな予報が出た時、大抵君の住む街で雨が降っている。ピクニックをする時も、ドライブデートをする時も君といる時はいつも雨だった。そう、君はまごうことなき雨男だ。それもなかなか強力な。小雨に困っている地域に行けばさぞかし喜ばれそうな存在だが、当の本人は、雨のせいで彼女に振られるし花見もできないし大変だ、と嘆いていた。
けれど、私は雨が好きだ。雨が降るおかげで君と相合傘ができるし、傘の中では雨音と君の声だけしか聞こえない。晴れている時には見えない景色、できない体験を君とできる。
「全国的に晴れですが、ところにより雨が降るでしょう」
そんな気象予報士の声を聞きながら服を選ぶ。雨の中、今日は君とどこへ行こうか。
「特別な存在」
みんなが私を怖がり、時に暴力を振るう中で、君は私に近づき怪我を治した。初めて人間の温もりを知った。
人間の言葉を返せない私に様々な話をし、何度も撫でてくれた。
君も私と同じように他の人間たちから疎まれ嫌われているようでいつも寂しげな顔をしていた。そこにまた親近感を感じた。
私にとって君は特別な存在だ。数百年生きてきて、役に立ちたい、守りたいと思った人間は君だけだ。
だから、人間を滅ぼしたくなったら言って欲しい。君のためなら全ての力を使って他の存在をみな滅ぼすことだって厭わないから。