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「凍える指先」

 無防備に外気にさらされた指先から熱が少しずつ逃げていく。本能的に息を吹きかけたくなるが、グッとこらえた。
 今はこのままでいたい。
 だって、今にも君が慌ててやってきて、私の冷えた手を温めてくれるかもしれないから。
 そんな、叶わない希望をそれでも捨てられずに抱き続けながら冷たい風の中に立つ。
 
 捨てられない希望というのは残酷だなと思いながらも来ないであろう君をただ待ち続ける。凍える指先は、もう感覚すら残っていなかった。

12/9/2025, 1:23:37 PM