【お題】砂時計の音
《血が抜けている》そんな感覚がする。
今まで何度か、戦場で死にかけた事はある。
実際、怪我から血が抜けている状態と言うのもあるが、
その度に、そんな感覚を味わっている。
ふと、何時からそんな感覚を味わっているのかと考えてみる。
物心ついた時から、戦場と共に私は居た。
今までまだ生きていたのは、十中八九、育ての母のお陰だった。
正真正銘、母は強い人だった。
そんなあの人も、私を守る為に死んでしまったが・・・・・
あぁ、そう言えば。
今際の際のあの人を抱きしめていた時も、《血が抜けている》と言う感覚を感じていた。
・・・・・今思い返せば、アレが初めて《血が抜けている》と言う感覚を感じた日だと思う。
まあ実質、あの人は撃たれて出血が酷かったから、文字通り、《血が抜けている》と言う状態だったのだが。
『それが、命が消える・・・・・《死ぬ》と言う事よ』
と、あの人は優しく教えてくれた。
『人の寿命は、砂時計の様な物・・・・・最後の時が、あっと言う間に消えてく様や音が、私にはそう見えるの』
とか、言っていたな・・・・・。
だから、あの人は日頃から【古びた砂時計】を肌身離さず付けていたが・・・・・それも、あの人が死んだ日に壊れてしまった。
考えてみれば、アレがあの人のお守りだったのかもしれない、とボンヤリと思う。
それを思い返せば、段々《血が抜けている》感覚が、《砂時計の音》の様に聞こえてきた。
なんとまぁ、愚かな終わり方だろうと思ったが。
『こんな生がもう終わる』と思えば、穏やかな音に聞こえて来る。
そう思って、自分は目を閉じた。
そんな、二度と覚めないと思っていた私の砂時計を、まさか、【《終わった瞬間に》ひっくり返されていた】と知ったのは、その後会ったアレと行動を共にしてからの話である。
By 神になったもう一人の青年の回想。荒野の果てにて砂時計は独り廻る。
【お題】梨
※書き途中です
幸水。1番スタンダードで、シンプルイズベスト。この幸水の美味しさで、梨園の良さが決まるまである。
豊水。
あきづき
かおり・・・・・
この様に、7月終わりから、9月まで、旬が違う梨を、美味しく頬張る我が家。
しかし、今年はそれが変わってしまう。
「え、道の駅限定販売?」
「そうなのよ。他のお店に混じってねぇ・・・・・早い者勝ちなんだって」
「そんな・・・・・我らが地域の梨園の梨なのに・・・・・」
毎年、その美味しい梨がその梨園に行けばあると言うあたり前が、今年からそうでなくなる。
当たり前の日常が、当たり前ではなくなる。
「もしかしたら、後を継がないのかもね・・・・・」
そう言えば、同い年の子が居たには居たな・・・・・学校も同じだったから、覚えている。
しかし、そうか・・・・・後を継がないのか・・・・・
となると、もう二度と食べれない幻の梨となってしまうのかと思うと、やはり悲しくなる。
確かに、最近は地球温暖化の影響、気候変動による猛暑やらで梨が上手く育たない事も割とあったのは記憶に新しい(それでも美味しいから行きつけだったのだが)。
そして、はじめて道の駅で買いに行った時。
やはり、知っている地元民は我らが地域の梨園の梨を虎視眈々と狙っていた。
「・・・・・コレが日常になるのか・・・・・」
と、物悲しくなる。
そしてこのまま続くと、この日常すら無くなるのだ。
「・・・・・何とかしないとなぁ」
と、争奪戦より勝ち取った我が家の梨を切って頬張りつつ呟く。
しかし、自分たちに何が出来るのか・・・・・
収穫が終わり、期販売終了になった今もまだ分からない・・・・・
副題:今年の夏の変化
【お題】愛する、それ故に
※更新された『秋恋』が書けないと思い、その上書き損じた更新前のお題でいきます。許して・・・・・((gkbr))
アレを愛する、それ故に、あの日、俺自身から手放す事を決めた。
アレは最高神だ。俺の様な荒くれ者扱いされている神が、アレが望んでいたとしても傍に居て良いわけが無い。
だから、アイツが再び世界に現れたのを機に、俺は静かに高天原を去った。
まあ、その結果が【このザマ(争い事)】なわけだが。
いや、俺自身強い事もあって気にしたのは最初の時だけで(態々、意気揚々と東の果てまで来た結果、俺に返り討ちにされた奴らの顔は滑稽だったから許した、と言うのもある)、そこを気にしているわけじゃない。
結局、事態は停滞の一途を辿って終わる気配が無い。
これが問題なのだ。
・・・・・いや、アレも『どう終わらせるか』考えているのかもしれない。
しかし、アレが良くても《周りは》となるとそうはいかない。
どうせ、今回の俺に対する討伐遠征も、《周りが》押し進めた事なのだろう。
となると、動けるのは・・・・・
「全く・・・・・離れてもコレとは、やれやれだな」
と思わずボヤく。
しかし、もうそれしか無い。
結果、アレに《嫌がらせ》と受け取れられたとしても仕方ない。
まあ、実際【半分嫌味】でコレからやるんだが。
でも、お前が動けないのだから仕方ないだろう?
それに、俺がお前を愛してしまったのだから、仕方無い。
お前を愛する、それ故に———
「俺の首を手土産に、アレと和平を結んで来い」
コレが、最善なのだから、仕方ない、仕方がない。
そう思いながら、アレが最後に見せた笑顔を思い出しつつ目を閉じて、俺は刃が振り下ろされる音を聞いた。
By 星神の最期の決断とその時より
追伸
気付けば始めて1ヶ月になりました。
自分自身、割と続いてる事に驚いてます(とは言え書きかけが2つある+22作品しか書けてない)し、『もっと読みたい』と声を頂いてる数が(コレの投稿前で)178個もある事にも驚いています。
コレからも、お題に沿いながら、自キャラのエピソードを初めとした創作を続けていきたいと思います。
応援ほど、宜しくお願いしますm(_ _)m
【お題】燃える葉
パチ・・・・・パチ・・・・・
目の前で、焚き火が音を鳴らしながら葉と捨てた紙を燃やしている。
そして音が鳴るのと同時に、火の粉が空へと舞う。
燃え上がった灰も、焚き火による上昇気流と共に舞う。
「・・・・・(こうして逃げ回るのも、今の内だけだ・・・・・早急に打開策を考えねぇと・・・・・)」
と、ボンヤリ焚き火を眺めながら思う。
しかし、焚き火を・・・・・否、燃える葉が、火の粉、灰になって空に上るのを見ていると、彼等と過ごして来た思い出が浮かんでは消え、蘇っては過ぎ去るのを繰り返していった。
「・・・・・ハッ・・・・・記憶ごと、燃えて消えてくれればな・・・・・」
と自嘲気味に1人呟いて、そこだけ雨が降り始めようとしていた。
By ある世界にて、追われる身となった青年の独白
【お題】今日だけ許して
※クソ長い上に保存し忘れてた所為による1日遅れ提出。
すみません┏○┓
「・・・・・ヒデェー顔だな」
と、書類の提出先である腐れ縁の友人に言われる。
「体力無いの知ってるだろ?流石に疲れたんだ」
と苦笑いしながら言う。
実際、間違いでは無いので嘘は言っていない。
「それもあるだろうが・・・・・それだけじゃないだろう?」
と呆れ顔で言われる。
「・・・・・慣れないといけないのは分かってんだがなぁ」
「バカタレ。慣れるな」
と、ピシャリと斬り捨てる様に言われる。
「・・・・・そう言う事件を担当するのが俺なんだけど?」
「それでもだ。それに、俺だって殺人事件を目にしてるが慣れる事なんて無い」
と言いつつ
「まあ、お前の場合は【慣れてしまう】んだろうが」
と半眼で俺を見る。
「まあね・・・・・《遺体が残ってるだけ、まだマシ》って思っちまうな」
と苦笑いしながら言う。
余りにも《基準》が違うから、慣れてしまってはいけない事でも、もう慣れてしまった。
「・・・・・そうかもな」
「それに、今回の様な事件もまだマシだ。こうやって、公的記録に残るんだから・・・・・いや、表立って残るわけじゃないけれどもさ。《残る》って事が大事だし」
と、両肩を竦めつつ俺は言う。
実際、今回は事件として記録に残るだけマシだ。
俺が対応する事件と言うのは、8割は当事者が死んで記録に残らない。
【知らない内に起きて、知らない内に消えて行く】
そんな特殊な事件だ。
残りの2割は、例え生きてたとしても《喋れない》なんて事もざらで。
また、生きて解決したとしてもそれを表立って残る事は無い。
何せ余りにもおぞましい事件で、残す事も本来ははばかられる内容だからだ。
それでも、今、俺と言う捜査官が居る事でその2割の事件がこうして記録され始めている。
少なくとも、俺と言う人間だけがこの手の事件に手が伸びている間はそれが大事な事になる。
少しでも生存率を上げる為の、囁かな抵抗だと信じ
「でも、お前一人が背負う事でもない」
と、俺の思考中を割って言われる。
「・・・・・ただただ辛いし余計疲れるだけだぞ?一課長殿」
「確かにな。ただでさえお前と言う問題児や一課の個性的な奴らや先輩方に常日頃、頭を抱えてるよ俺は」
「でもそれを取りまとめてるお前は本当に偉いよ、マジで」
コレは本心。例え一課を取りまとめられたとしても、俺を御せる人間なんて両親や俺をよく知る数少ない人達なんだから、本当によくやっていると思う。
「そうかい。なら、追加だ。今日は俺の視界の範囲内で休め。そこのソファーを使ってもイイ」
と、来客用の椅子を指した。
「え、普段めっちゃ嫌がるじゃん・・・・・」
「無許可な上に俺を起こさない、声をかけないのが悪いんだろうが」
「ちゃんと休ませてるだけじゃんか・・・・・過労死すんぞ」
と、あーだこうだと少しの間、高校生の時みたいにグダる。
「はァ・・・・・わかった、なら俺も休む」
「お、珍しい」
「取り敢えずそこに座れ」
「はいはい」
と、言われた通りに座る。
普段ストイックを地で行く腐れ縁が休むと言うので、『雑談しながら休むのかな』なーんて思っていた。が、直ぐに素直に言われたとおりに座った事を後悔する。
腐れ縁は片手に書類を持ったまま俺の隣に座って、直ぐに俺の肩に頭を預けた。
「・・・・・何をしておいでで?」
「言ったろ、俺も休むって」
「いや、その書類今提出した奴」
「書類の不備が無いか確認している間はお前は此処で休め」
「お前は?」
「添削位なら休憩しながらでもできる」
「それは休憩とは言わなく無い???」
「俺は添削も休憩の内に入るってだけだ」
と、テコでも動かない。
失敗した、コレは俺が本当に休まないと延々とこのまま続ける腹積もりだ。
いや、てか、職場でコレは事故になりかねないのでは?と、普段感じない何かで、一抹の不安すら覚える。
ただでさえ他人に寄りかかる事が無い腐れ縁のコイツが寄りかかってくるのを捜査一課の人達に見られたらどうなる事になるか・・・・・想像もしたくないと言うか、想像出来ない。色んな意味で。
「・・・・・わかった、わかりました。なら、今日だけ許して下さいよ?」
と両手を上げながら言って、俺はヤケクソ気味に横になった。
「わかっているなら宜しい」
と、ただでさえ顔が良いコイツが笑顔で言うもんだから、抵抗する気は失せた。
「はァ・・・・・」
と、嫌がらせ気味に溜息を吐く。
しかし、疲れていたのは事実で。
否・・・・・とても、疲れた。
余りにも醜い惨状だった事もある。
余りにも酷い事件だった事もある。
慣れる物でも無いのだが、
慣れないといけないのに、と言う焦燥感もあって。
それでも、なんとかして手続きを終わらせた。
その所為か、直ぐに俺は眠りに落ちてしまう。
「・・・・・今日だけ許してやるさ」
「だから、起きたらいつもの通りに笑ってろよ」
と、腐れ縁が呟いたのを、膝の上で寝落ちした彼は知らない。
By ある事件解決後の、2人の刑事の束の間の話より