【お題】砂時計の音
《血が抜けている》そんな感覚がする。
今まで何度か、戦場で死にかけた事はある。
実際、怪我から血が抜けている状態と言うのもあるが、
その度に、そんな感覚を味わっている。
ふと、何時からそんな感覚を味わっているのかと考えてみる。
物心ついた時から、戦場と共に私は居た。
今までまだ生きていたのは、十中八九、育ての母のお陰だった。
正真正銘、母は強い人だった。
そんなあの人も、私を守る為に死んでしまったが・・・・・
あぁ、そう言えば。
今際の際のあの人を抱きしめていた時も、《血が抜けている》と言う感覚を感じていた。
・・・・・今思い返せば、アレが初めて《血が抜けている》と言う感覚を感じた日だと思う。
まあ実質、あの人は撃たれて出血が酷かったから、文字通り、《血が抜けている》と言う状態だったのだが。
『それが、命が消える・・・・・《死ぬ》と言う事よ』
と、あの人は優しく教えてくれた。
『人の寿命は、砂時計の様な物・・・・・最後の時が、あっと言う間に消えてく様や音が、私にはそう見えるの』
とか、言っていたな・・・・・。
だから、あの人は日頃から【古びた砂時計】を肌身離さず付けていたが・・・・・それも、あの人が死んだ日に壊れてしまった。
考えてみれば、アレがあの人のお守りだったのかもしれない、とボンヤリと思う。
それを思い返せば、段々《血が抜けている》感覚が、《砂時計の音》の様に聞こえてきた。
なんとまぁ、愚かな終わり方だろうと思ったが。
『こんな生がもう終わる』と思えば、穏やかな音に聞こえて来る。
そう思って、自分は目を閉じた。
そんな、二度と覚めないと思っていた私の砂時計を、まさか、【《終わった瞬間に》ひっくり返されていた】と知ったのは、その後会ったアレと行動を共にしてからの話である。
By 神になったもう一人の青年の回想。荒野の果てにて砂時計は独り廻る。
10/18/2025, 9:09:51 AM