題名:記憶のランタン
君の記憶の映画が流れる。
この映画館にいるのは私だけ。
日々が過ぎて、置いてけぼり。
本当、理不尽だなって思った。
焦点が合わない。目の前真っ暗。
もう、映画は終わったのかな?
違う。私が立ち直れないせいだ。君がいない世界に、耐えられなくて、現実逃避をしているだけで。
また映画は流れた。
君の好きな食べ物に、好きな色、趣味が溢れて抱えきれなくて。
前を向けたら、ポジティブになれたら、どれだけ世界は明るいでしょうか?
私は知らない。
未来を知らない。
だから将来を考えるのは無駄遣いじゃないか。
それは違う。
君は止めた。
夢と生きがいは似ているものと教えて。
君はいない。
どこにもいない。
理由も居場所も気持ちも何もかも知らない。
灯りが灯って、この暗闇を進んで、君以外の生きがいを探す。
ランタンの灯りが、一斉についた。
綺麗だねって問うのはやはり君でした。
そして見据えた、その未来を、受け入れた自分は勇気があるでしょう。
すごいね。
ありがとう。
やはり、問うのは、君で、
映画は終わった。
映画館から出た。
世界は明るかった。
同時に怖かった。
仕方がなかった。
決められた運命だから。
雲に、綺麗な虹が架かる。
綺麗だね
題名:冬へ
「まだ十一月なのになんでこんなに寒いのー?」
「十一月って霜月とも言うでしょう?」
「確かにそうだけど、それにしても寒いよ~。」
「あなたが寒がりなだけでしょ?」
「それはそうだけど、ゆーかは寒くないの?」
「少し肌寒いくらい。」
「それだけ?すごく寒いよ。寒くて震えてる。」
その時私は嫌な予感がした。
「保健室に行かない?」
とっさに出た言葉だった。
「え?まぁ良いけど、どうしたの?」
あなたの手を引き、走った。あなたは風邪をひいている。今日の気温はそんなに低くはない。
「先生、佐藤さんが体調悪いそうです。失礼しました。」
そうあなたを置いて、私は去った。後から聞いた話によるとあなたはインフルエンザだったらしい。さすが冬。
そんな微笑ましい話をすると私の心は落ち着く。いつもはこんなことは起きないから。
今日も今日で、幸せ探しでもしようかな。この冬に風邪をひかないように。
題名:君を照らす月
さて。突然ですが、今の月は昔ほど明るくないらしいです。なぜなら、電気があるからです。
町にはいろんな色の光であふれかえっています。ということは、月の明かりは弱くなってしまうということなのです。
そんな前置きはこれぐらいにしておきましょう。それでは物語始めましょう。ちなみにこの物語には電気がないそうです。そして、忠告しましょう。必ず、目を離さないでくださいね?
「今日は満月ですね。」
「本当、今日はいつもより明るいよ。」
僕は隣にいる貴方を見た。月の光に照らされていて、夜の木漏れ日のようだった。
「今日は満月だから何かしようよ。なぜなら満月は月に一回だけなのだから。それに、満月と言えば、何か不思議な事が起こるって言うでしょう?」
肩をすくめて貴方は言った。その姿も可愛らしい。この姿、もう見られないかもしれない。貴方が肩をすくめるだなんてとても珍しいから。
「そうだなー。特にないけれど、貴方がやりたいことを僕はやりたいよ。やはり、あれ?」
「うん。もしかしたら、楽になれるかもしれないからね。それじゃあ準備しよう。」
貴方は“あれ”の準備をし始める。そして僕達は人目のつかない池に来た。
そして僕は
貴方を
◯した。
そして僕も
切腹した
さて。この二人は何をしたのでしょうか。嗚呼、答えではなくて、なんで“あれ”をしたのかの理由を求めているんです。なぜ求めているのか。それは、私がその物語の主人公が好きだったからです。私には一生理解できないでしょう。私は何も分からない。永遠に。ただ、夜に浮かぶ月を見ることしかできないのだから。
題名:木漏れ日の跡
「あっ」
僕が声を出したのは、雨が降ったからだ。
さっきまでは晴れだったのに。
…多分。
僕はさっきまで木漏れ日を眺めていた。
それはとても綺麗で、僕の語彙力では表現できないほどだった。
それが突然、僕の鼻に雫が垂れたのだから、雨が降っていると考える。
空は曇り模様。
さっきまで晴れてたのに。
天気雨?
もしかして、光が届くのが遅かったのかな?
そんなこと、あり得ないと思うけれど。
もし、光が届く速さが遅れていたら、僕は追いつけるのかな。
僕は光より速く走って、過去へ戻れるのではないだろうか。
もし、光の速さが遅れていたら。
もし、この木漏れ日が幻覚なら。
もし、僕の足が速いなら。
後悔したあの日を戻せるのだろうか。
天気は晴れた。どうやら天気雨だったみたいだ。つまり全ては、幻想みたいだ。
題名:ささやかな約束
「─────って約束してくれる?」
「いいよ。」
「そういや知ってる?」
「何?」
「忘れるって漢字は、心を亡くすって書くの。良く考えて作ってると思わない?」
「忘れるの漢字くら知ってるよ。何が言いたいの?」
「それはね、」
君は耳元でささやいた。
「いつか君も、私も約束も忘れてしまうんだろうなってこと。」
あの時の君と約束した。
「一生私を忘れないって約束してくれる?」
と。
それはとても簡単だった。
だけど僕は君の名前を思い出せなくなった。
本当に、心から亡くなってしまったのだろう。
君という存在が。