安倍川 もち子

Open App
4/19/2026, 7:21:10 AM

あの子がいなくなって、もう5年になる。

カレンダーをぼんやり眺めながら、
私はまた迫ってくる悲しみに備えた。

つい昨日の出来事のように感じるのに、
時間は正確に流れてく。

流れなくていい。
いっそ、あの別れの日のまま、
時間が止まってくれればいいとさえ思う。


あの子のふわふわとした毛並みの感触や、ほっとする
体温、ひだまりのような匂い。

日々の中でのあの子の仕草。

そんなことがどんどんおぼろげになっていくくらいなら、あの時のまま、空虚な時間の中にいたい。

無色の世界に…



「…会いたいな…
 会いたいよ…」

どうしたって叶わない願いは、私からは消えない。

4/5/2026, 5:48:39 AM

「いい。お前は、そのままでいい」

なんでそんなこと、今頃になって言うんだよ。

ベッドに横たわる親父にそう心で毒つきながら、俺は泣きそうになるのをこらえた。

俺は昔から、兄と比べられてきた。

兄は小さい時からなんでもそつなくこなす奴だった。

勉強にしろスポーツにしろ、人間関係にしろ、なんでも上手くやっていた。

成績優秀、容姿端麗。
そんな言葉がぴったりな兄は親戚や両親、特に母親の自慢だった。


⚠途中

8/31/2025, 11:16:26 PM

「あぁ〜、もう5時30分かぁ」
読んでいた本から目を離し、壁にかけられた時計を確認して、私は残念、とため息をついた。

休みはどうしてこんなに時間が経つのが早いのか。
「永遠のテーマだよねぇ、ロン」

床で気持ちよさそうに寝ているハチワレに声をかける。

眠そうな顔をこちらに向けてきて、数秒見つめ合ったけれど、またコテンと寝てしまった。
可愛くて自然と口元が緩む。

日課の手帳を書くために机に向かう。
ご飯は書いてから食べよう。

お気に入りの手帳を眺めて、ゆっくりと開く。

もう8月も今日でおしまい。

「来月はどうしようかなぁ〜」

そう呟いて、ハタとこの前のことを思い出した。

仕事もプライベートも上手くいかず、友人に「もーっ全部どーでもいい!」と愚痴っていたのだ。

それなのに今…。

「…なんだかんだ、期待してんだ」

自分にも、未来にも。

小さく笑い、引き出しからかわいい便箋を出し、万年筆を走らせる。


今月も、楽しく過ごしてください。


締めくくりはいつもこれだ。
来月の自分へ向けた、エールの手紙。


END

5/27/2025, 2:53:19 AM

動物を飼うのは初めてではなかった。

「リオ…」

遠慮がちに声を掛けた。
人に対してもそうだが、私は動物にも人見知りをする。


辺りをソロソロと伺いながら、1匹のグレーの猫が出てくる。


その姿を見て、胸にじんわりと暖かいものか込み上げてきた。


「今日から一緒に暮らすんだよー。よろしくね」

私の言葉を聞いているのかいないのか、リオは辺りをキョロキョロと落ち着かない。


それはそうか。
おばあちゃん家とは違うんだから。


じっと一点を見つめるリオの横顔をみて、目がガラスみたいだな、と思った。
「猫の目ってこうなんだ…」
感動と新しい発見をした気持ちでしらばく見つめる。


撫でてもいいだろうか。
いやいや…しばらくそっとしておいた方がいいでしよう。

私は腰を上げた。

すると、柔らかく、ほっとするぬくもりがふくらはぎ辺りから伝わってくる。

「ナーン」

私の目をまっすぐ見て、リオはキラキラと光る瞳を向けてくる。

…かわいいな。

「…リオ」
「ナーン」
「リオ 」
「ナーン」


…なんだか泣きそう。

返事を返してくれることが、
こんなにも心にくるとは知らなかった。


これから何年、一緒にいれるだろう。

それでも、この新しい生活の始まりの日のことは、ずっと忘れない。


END

4/21/2025, 8:52:14 AM

星明かりを受けた瞳が、ガラスのようにキラキラしていた。

「ははっ。
リオ〜、どーしたのそんなところでじっとして」

私は窓辺にちょこんと座って大人しくしている愛猫に声をかけた。


リオはかれこれ10分くらいは同じ場所にじっと外を見ている。

とくにお気に入りの場所というわけでもないのたが。

リオはくるりと顔を私に顔を向けたが、またすぐに
窓の外に目を向ける。

構ってもらえないので、私から近寄る。


「なーに見てるの」


⚠途中

Next