KURO

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10/3/2023, 9:22:16 AM

【奇跡という名の災厄】

ある国に自然を愛する双子の姉妹がいました。
2人は仲が良く,どこへ行くにもともに行動をしていました。
そんな2人は不思議な力を持っており,奇跡を起こし万物を癒やすことができました。
しかし,2人の力を知った国王はその力を私利私欲のために使い,双子を離れ離れにしたうえで閉じ込めました。
それから数年後…,双子の国と他の国とで戦争が起き双子は負傷した兵士を癒やすため無理やり戦場に連れていかれました。
戦場に連れて行かれた双子が目にしたのは,草花であふれていた面影を失い焼け野原と化した故郷でした。
人々が泣き叫ぶ声,肉や木の焼ける臭い,鉄と鉄がぶつかり合う音…。
今までに感じたことのない怒りと悲しみがフツフツと湧き上がり双子をつつみました。
そして、双子は奇跡を起こしました。
戦場の音をかき消すかのように雨が降り,地表から新芽が出,すくすくと育ち全てを飲み込みました。
もう、誰も双子を止めることはできません,2人が愛したモノ全てが消えてしまったのだから…。
静寂となった元戦場は青々とした緑が生い茂り,動物と植物が共存する美しい森となりました。
双子の行方を知る者はもう居ません,しかしただ1つわかることはこの森に入った者は誰1人戻ってくることはなく,誰かが立ち入るたびにその森では人型の奇妙な植物が生えると言うこと。

9/26/2023, 4:31:29 AM

変わらない景色。
外では子供の元気な声が聞こえてくる,
「もうそんな時間か…」
静かな部屋を僕の声だけが響く。
あたりまえが変わってしまったのはいつからだろう…。
数年前,親友を守るために失ったこの足は名誉の負傷と言えるだろうか?
怪我を負い,横たわる僕を見て顔を青ざめながら去っていった親友はどうしているのだろうか,あの事故以来,親友が僕の前に現れることはなかった,きっとこの先もそうだろう。
カラカラカラ
誰かが扉を開ける音がする,母さんだろうか,
「着替えを持ってきてくれた,の…えっ?」
ほほえみながら扉の方見るが訪れた人物を見た瞬間その笑みはスっと消えた。
「…久しぶり」
あの時より幾分か背が高くなり,大人びた容姿と変わっていたが,確かに親友だった。
二人の間を沈黙の時間が流れる,先に口を開いたのは親友の方だった。
「…大丈夫だったか?」
”…大丈夫だったか?”彼は何を言っているのだろう,足が無いのが見えていないのだろうか?
そんな事を考え,顔を顰める僕を見て彼は俯き”違うよな”と小さくつぶやけば
「俺,お前に言いたいことがあるんだ…,あの時俺を助けてくれてありがとう…それとお前を見捨てるように逃げてしまってすまなかった…」
深々と頭をさげる彼を見,僕の中の怒りは消えた。
今まで,灰色だった世界にようやく色がついたような気持ちになった。
僕の顔を暖かいモノが垂れ落ちる,見ればそれは僕の涙だった。
そうか、僕は…彼からありがとうって感謝されたかったんだな,そうすれば少なくとも彼を助けたことに後悔せずにすむから…。
声をあげ泣く僕の背中を親友は静かにさすっていた。
―数週間後―
僕は長い療養期間を経て退院する。
数年ぶりの外は太陽がサンサンと照らし,窓から見ていた限られた外の世界を体全身で感じることができた。
病院から出たすぐ先には親友いや,恋人が花束を持って待っている。
あの後,親友はよく見舞いに訪れ,いろいろな話をしてくれた。そして,退院することが決まった日…,告白されたのだ。
答えはもちろんYES,病院に頼み1日だけ外泊許可をもらい,恋人として行った彼の家で迎えた朝日はいつもより眩しく見えた。
不幸な事故から数年,親友を守る代償に足を失い,先の見えない未来に怯える日々を送っていたが,今はこうして大切な人ができ,未来にも希望を持てるようになった。
…僕は今,とても幸せだ。

9/19/2023, 5:14:35 AM

「あれ?先客が居たんだ♪」
人気の少ないビルの屋上,見下ろせば車や街灯の光が満面の星空と思えるほど輝いている。
僕は今日,このビルから飛び降りようとしていた…いわば自殺である。
「君は誰?…もしかして止めに来たの?」
フェンスに手をかけ,突然現れた彼女を怪しく思い,顔を顰めながら問いかける。
すると,彼女は焦った様に首を振り,
「えッ?違うよ,私はたんにこのビルに来ただけ」
そう言うとほほえみながら僕の方へ歩み寄り,フェンス越しに周囲を眺め,つぶやく。
「私さ,夜景が好きなんだよね♪きれいだし嫌なこと全部、忘れさせてくれる。」
彼女がそばに来てようやく気づいた,彼女の体は小枝のように痩せており,健康体には見えぬということに。
「…病気なの?」
言わぬべきだったか,その言葉を口にした途端彼女は驚いた表情を見せ”なんで病人が外でてるんだとか思った?”と悲しそうにつぶやき,恐る恐る僕の顔を見る。
「…別に」
どうせ死ぬんだから今更気にしても無駄だろう…,そう考えれば興味がわかず素っ気なく返す。
「そっか…」
僕の反応を見,彼女は安心した様子で小さく笑みを浮かべ,僕の手を取り,
「ねぇ,私と一緒に来てくれない?君と逝けば怖くないと思うんだ」
彼女と過ごせる時間がまだ続くのならそれも悪くないだろう。僕は”いいよ”そう一言だけ言えば,彼女の手を強く握る。
ほんの少しの勇気を振り絞っただけで,僕の心と身体は未だかつてないほど身軽になった気がした。
今日,僕は名も知らない少女と,ともにビルから飛び降りた。

9/17/2023, 2:26:39 PM

「俺,この花,好きなんだ!花言葉が”終わりのない友情”,俺たちにピッタリだろ?」
照れているのだろうか,恥ずかしげに言いながらアイツは一輪のローダンセを見せる。
「おまえはホント,花に関しては博識だな」
「いつか花屋になってお客を笑顔にするのが俺の夢だからな!!」
希望に満ちあふれた笑みを浮かべながら話すアイツは,俺の幼なじみにして初恋の人だった,しかし俺はこの思いを伝えられず数年も胸に秘めたままだった。
「おまえだったらなれるよ,なんなら最初の客は俺がなってやってもいいぜ?」
こんなたわいのない会話を最後にアイツはその短い生涯を終えた,居眠り運転による交通事故だ。
「…花屋になるんじゃなかったのかよ」
アイツの葬式,色とりどりの花が手向けられ寝ているかのように眠るアイツを見,俺は柄にもなく大声で泣いてしまった。
この瞬間,俺は幼なじみと初恋の人を同時に失ってしまったことを痛感した。
そして今,
「おまえの夢,俺がかなえちまったな…」
誰もいない店の中で俺のつぶやきだけが響く。
今日,ついに俺はアイツの夢でもあった花屋をオープンする,小さな店の中で他の花に負けじと咲き誇るマリーゴールドはまるでアイツの生まれ変わりかと思えるほど美しかった。
チリリン
ふとベルがなり,二人組の男子高校生が店に入ってきた。
まるで花畑みたいだな,とつぶやきながら見てまわっていると突然,一人の男子高校生が聞き覚えのある言葉を口にした。
「俺,この花,好きなんだ!花言葉が”終わりのない友情”,俺たちにピッタリだろ?」
なぁ,聞こえるか?おまえと似たやつが店に来たぞ…

9/16/2023, 2:35:39 PM

「知ってる?雨って失恋した人の涙なんだって」
6月のある日,傘を忘れ雨宿りする僕の隣でつぶやきほほえむ君,
その顔はどこか悲しそうにも見える。
一人また一人と傘をさして帰る生徒を君と二人で眺めているこの10分間はいつもよりゆっくりに感じられた。
「私,帰るね」
閑散とした雰囲気をかき消すかのように”またね”その一言だけ言うと君は雨の降るなか雨にうたれながら走って帰って行った,少しずつ小さくなっていく君の姿。
君は聞こえてないと思っていたのだろうか,帰る間際君がつぶやいた
「あの雨の中に私の涙も含まれてるのかな…」
いつもとは違う君の声,僕ではない違う誰かに向けているだろうその声に僕は苦しくなった。
あぁ,あの雨の中には君の涙と一緒に僕の涙も含まれるのだろうか…

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