「知ってる?雨って失恋した人の涙なんだって」
6月のある日,傘を忘れ雨宿りする僕の隣でつぶやきほほえむ君,
その顔はどこか悲しそうにも見える。
一人また一人と傘をさして帰る生徒を君と二人で眺めているこの10分間はいつもよりゆっくりに感じられた。
「私,帰るね」
閑散とした雰囲気をかき消すかのように”またね”その一言だけ言うと君は雨の降るなか雨にうたれながら走って帰って行った,少しずつ小さくなっていく君の姿。
君は聞こえてないと思っていたのだろうか,帰る間際君がつぶやいた
「あの雨の中に私の涙も含まれてるのかな…」
いつもとは違う君の声,僕ではない違う誰かに向けているだろうその声に僕は苦しくなった。
あぁ,あの雨の中には君の涙と一緒に僕の涙も含まれるのだろうか…
9/16/2023, 2:35:39 PM