「俺,この花,好きなんだ!花言葉が”終わりのない友情”,俺たちにピッタリだろ?」
照れているのだろうか,恥ずかしげに言いながらアイツは一輪のローダンセを見せる。
「おまえはホント,花に関しては博識だな」
「いつか花屋になってお客を笑顔にするのが俺の夢だからな!!」
希望に満ちあふれた笑みを浮かべながら話すアイツは,俺の幼なじみにして初恋の人だった,しかし俺はこの思いを伝えられず数年も胸に秘めたままだった。
「おまえだったらなれるよ,なんなら最初の客は俺がなってやってもいいぜ?」
こんなたわいのない会話を最後にアイツはその短い生涯を終えた,居眠り運転による交通事故だ。
「…花屋になるんじゃなかったのかよ」
アイツの葬式,色とりどりの花が手向けられ寝ているかのように眠るアイツを見,俺は柄にもなく大声で泣いてしまった。
この瞬間,俺は幼なじみと初恋の人を同時に失ってしまったことを痛感した。
そして今,
「おまえの夢,俺がかなえちまったな…」
誰もいない店の中で俺のつぶやきだけが響く。
今日,ついに俺はアイツの夢でもあった花屋をオープンする,小さな店の中で他の花に負けじと咲き誇るマリーゴールドはまるでアイツの生まれ変わりかと思えるほど美しかった。
チリリン
ふとベルがなり,二人組の男子高校生が店に入ってきた。
まるで花畑みたいだな,とつぶやきながら見てまわっていると突然,一人の男子高校生が聞き覚えのある言葉を口にした。
「俺,この花,好きなんだ!花言葉が”終わりのない友情”,俺たちにピッタリだろ?」
なぁ,聞こえるか?おまえと似たやつが店に来たぞ…
9/17/2023, 2:26:39 PM