NoName

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1/20/2025, 1:30:26 PM

明日に向かって歩く、でも、
その明日に君はいない。

1/20/2025, 8:19:55 AM

昨日「さようなら」と言った君が、
翌日には白い花に埋まっていた。

君の死はあまりにも突然で、僕自身が受け入れられない内に、君は小さな棺桶に収まっていた。眠るように目を閉じる君を見て、僕はようやく君の死を受け入れたのだ。
「可哀想に」「いい子だった」「優しくて」「彼女には将来があった」「どうしてこんなことに」
誰に伝えるでもない嘆きや慟哭が、葬式の会場に充満していた。毒ガスのようだ。僕は吐き気をこらえて、すぐに会場の外へ出た。

君は白が嫌いだった。
どうせ汚れるのにと、白いハンカチを踏みつけた。
君はいい子ではなかった。
腕についた注射の痕を、包帯で誤魔化していた。
君は優しくなかった。
落とし物であろう人形を、ゴミ箱に捨てた。
君には将来がなかった。
自分が死ぬ時の話を、毎日のようにしていた。
本当の君と、君が作ったであろう君はあまりにもかけ離れていて、それでも君はそれを僕以外の人間に明かすこと無く死んでいった。
そうして、君の本当の姿を知っている人間が、この世にただ一人になったという事実だけが残った。

君が死んだのが事故なのか、故意的なものなのか、あの世で聞かなければわからない。
どうして僕なのか、紙にでも残してから逝ってくれればよかったのに。

葬式の次の日、僕は君の机に黒い百合の花を置いた。
恐らく先生に気づかれて、散々叱られるだろうが。
これは僕だけが贈れる冥土土産だ。
僕だけが知っている、
ただひとりの君へ

1/12/2025, 12:01:20 PM

小鳥のさえずりで目を覚ました。
慌てて時計を確認したが、そういえばと昨日上司に辞表を叩きつけたことを思い出し、もう一度布団に潜った。午前10時のことだった。

どうして辞めてしまったのか、ハッキリとした理由は無い。仕事はそこそこ上手くいって、人間関係も良好で、上司にも将来を見込まれていた。ただ、心残りは全く無かった。

焼いたトーストにバターを塗って、チーズ、ハム、レタスを間に挟んだサンドイッチと、市販のコーンスープで昼ごはんとした。
それをペロリと平らげたら、することが無くなってしまった。いつもは仕事に関する勉強をしていたが、もうその必要もないだろう。

何の気もなしに昔のアルバムをペラペラとめくっていたら、ある写真が目についた。
中学3年生で賞を取った、水彩画の写真だ。
一時期毎日のように描いていたが、高校・大学に入って時間が無くなり、結局この写真の作品が最終作となってしまったのだった。

「わたし、しょうらいはえかきになるの!」

幼稚園の記憶が鮮やかに蘇る。
そうか、私は絵描きになりたかったんだ。
けれど、“忙しい”を理由に諦めてしまった。
“向いてない”“どうせ続かない”
ネガティブな言い訳で、私の気持ちに蓋をしていたのかもしれない。
それが今日、一気に放たれたのだ。

画材は実家に置いてきてしまった。
なら、また新しいものを買えばいいだろう。
今まで無趣味だった分、貯金はたっぷりと溜まっている。時間だって余るほどある。

そうだ、今日から気が済むまで、
もう一度だけ、追いかけよう。
あの夢のつづきを。

12/22/2024, 8:20:58 AM

違和感を感じたのは、その週の頭だった。
空が変だ。
具体的な「何か」は分からないが、
それでも「何か」が変。
見続けると頭がおかしくなりそうな、青色の空だ。
知人は何も感じていないらしい。
それどころか、「以前より空を見上げるようになった」と言う。
こんな不気味な空を、よくもまぁ。

異常に気づいたのは、その次の日だった。
街に出ると、半数以上の人間が空を見上げている。
まるで空に映画が上映されているかのように、周りの視線が青空に吸い込まれている。
空を見上げるも、当然そこには何も無い。
ただ、不気味な青色の空だ。

世界の終わりかと思った。
その一週間後、大空に目玉が浮かんでいた。
じっとこちらを見下ろす、神の目のようだ。
ベランダから街を見下ろすと、ほぼ全員が空を見上げている。瞬きもせず、空の目を見つめ返している。
今日の空は夕焼けを煮詰めたような赤色だ。
俺はすぐに家に入り、カーテンを閉じた。

その次の日、何も無かったかのように一日がやってきた。空は元に戻り、街の人間もスマホに目線が釘付けになっている。
おかしな点といえば、知人が減ったことだろうか。
どうやら俺は二週間ほど、誰とも会話しなかったらしい。
一昨日に空について会話した知人がいたような気がしたが…今は顔も名前も思い出せない。

12/19/2024, 12:28:03 PM

「さようなら!!」
友達の元気な別れの挨拶が、どうしてか今日は特別に胸に響いた。遠ざかっていく小さな背中を追いかけたくなる。声を掛けようとしても言葉にならず、じわりと目に涙が滲んだ。
別に何かあったわけじゃない。
いつもこんな気持ちになっているわけじゃない。
ただ、今日は行ってほしくなかった。
そんな日もあるということだ。
気持ちをグッと抑えて、帰路へ戻ろうとしたその時だった。
何かが勢いよく私の背中にぶつかる。
思わず振り返ると、そこには笑顔でこちらを見上げる、私の友達がいた。
「え、どうしたの?」
平静を装うとも、声がひっくり返る。
「別に〜!今日は家まで付いてこうかなって!」
「どうして?」
「うーーん…そんな気分だから!」
えへへ!と友達は笑って、私の手を握った。
あたたかい。
あたたかいなぁ。
溢れそうな涙を堪えて、私はその小さな手を握り返した。

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