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3/2/2025, 11:46:33 AM

とんとんとん
木の戸を叩く音が鳴る。
「誰かしら?」
返事は無い。

どんどんどん
木の戸を強めに叩く音が出る。
「誰かしら?」
返事は無い。

ガンガンガン
木の戸を打ちならす音が響く。
「誰かしら?」
返事は無い。

バキッ
鈍い音と共に木の戸が開く。
「ごめんなさいね。
扉を壊してしまったわ」
そう言って上半身が半分欠けた女が、部屋の隅で震える青年の前に立った。
「私と目が合ったあなた。
あなたは一体誰かしら?」

2/27/2025, 3:03:10 PM

私は『かわいい』が好きだ。
可愛いものはもちろん、『かわいい』という言葉自体も好きなのだ。

可愛いものを見つけたら「かわいい!」と言ってみる。すると不思議とそれがもっと可愛くみえてきて、写真におさめてしまうまでがお約束。言われた側も可愛くなるし、言った側も可愛いものを見れる。なんて素敵な魔法の言葉!

最近知ったのは、「かわいい」という言葉は万国共通でかわいいのだということ。
私が好きなのは英語。「きゅーと」って言う口の形まで可愛いんだからもう完璧!…友達からは「外国人かぶれ?」って言われたけど。余計なお世話!!

と、言うことで。みんなも使ってみたらどうだろうか。そんなの柄じゃないと思っている人も、一度使えば意外とハマるよ?
さぁ、ほら!
『「cute‼︎」それ、可愛いね!!』

2/26/2025, 1:14:21 PM

記録を見返す。
日記でも、運動や読書の記録でも、何でもいい。
そうしたらいつでも過去の自分に会える気がして、
過去の私も、今の私も、
大切にしようと思えるのだ。

2/12/2025, 6:15:05 AM

人間には、ココロというものがあるらしい。

それを知ったキッカケは、
「アンタさぁ、ヒトのココロないわけ?」
私に構ってくれる唯一の人間である彼女が、私の話を一部始終聞いた後に放ったこの一言だ。
「そもそもヒトじゃあありませんし」と口では返しながら、彼女が言う「ココロ」が引っかかった。
なんだ?ココロ?人間が持っているものだろうか?
……ただ、ココロについて聞いて「そんな事も知らないんだ〜」と馬鹿にされるのが癪で、その時は気持ちを押し込んで、彼女との会話を続けた。

ある日のことだ。
いつもの待ち合わせ場所に、彼女が来ない。
多少時間にルーズなところはある彼女だが、これだけ遅れるのは珍しい。
……何かあったのだろうか。
なぜか数日前に見た猫の死骸が頭をよぎり、慌てて首を振る。それでも収まらず、真っ平に潰れた車や赤い血の色といったイメージが次々と脳内に溢れる。
胸がざわめく。
呼吸が荒くなる。
嫌な鼓動が耳を打つ。
ふと、ふらりと足を踏み出した、その瞬間である。

「ごっめん!お待たせ!!」
息をあげた彼女が視界の端から現れた。茶髪のショートカットにラフなファッション。いつもの彼女だ。
フッと全身の力が抜ける。
「……遅い、です」
思わず漏らしてしまった低い呟きに、彼女は目を丸くした後、ケタケタと笑う。
笑い事ではない。私は…私は本気で…
「なーにその顔!やっぱりアンタにもココロ、あるもんだね!」
ココロ。またその言葉か。
「アンタさ、私を心配してくれたでしょ?不安になったりソワソワしたり……って言ってもわかんないか。
とにかく、私を待っている時に感じたーあー…それがココロだよ!ココロ!」
最後はもだついたが、彼女の言いたいことは分かる。

それにしても、これがココロか。人間だけの機能にして欲しかったものだ。
もうあんな思い、二度とごめんだから。

2/10/2025, 12:11:52 PM

『死んだ人間は星になる』
そう言う彼女の瞳は、夢の中で見た妖精のソレと似ている。疑う事を知らない、どこまでも澄んだガラス玉のようだ。

彼女の親は彼女がまだ幼い頃に、不慮の事故で亡くなったらしい。遺された彼女と彼女の姉は、壺に収まった両親の骨を、マンションの上からばら撒いた。
「これでお父さんとお母さんは星になって、いつまでも私たちを見守ってくれる!」
きっと彼女にそう言った姉の瞳も、今の彼女と同じような色をしていたのだろう。

「私は晴れた夜が好きなの」
星が綺麗に見えるから。
お父さんとお母さんに会えるから。
うわ言のように呟いて、彼女は暗い夜道を帰っていった。私は彼女の、今にもどこかに消えてしまいそうな背中が闇に溶けるまで見つめていた。

次の日、彼女は学校に来なかった。
彼女に何があったか、担当の教師は言葉を濁して教えようとしなかったが、その様子だけでクラスのほとんどは彼女の末路を察したようだった。
彼女は最期に、息絶える寸前に、星に助けを求めたのだろうか。傍観するだけの星に、絶望したのだろうか。それは彼女にしか分からない。
生者の私は願う。どうか彼女が夜空の星になれますように。そして、彼女の両親と再会できますように。
ふとカーテンの隙間から空を見上げたが、そこには澄んで晴れた秋の空しかなかった。

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