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『死んだ人間は星になる』
そう言う彼女の瞳は、夢の中で見た妖精のソレと似ている。疑う事を知らない、どこまでも澄んだガラス玉のようだ。

彼女の親は彼女がまだ幼い頃に、不慮の事故で亡くなったらしい。遺された彼女と彼女の姉は、壺に収まった両親の骨を、マンションの上からばら撒いた。
「これでお父さんとお母さんは星になって、いつまでも私たちを見守ってくれる!」
きっと彼女にそう言った姉の瞳も、今の彼女と同じような色をしていたのだろう。

「私は晴れた夜が好きなの」
星が綺麗に見えるから。
お父さんとお母さんに会えるから。
うわ言のように呟いて、彼女は暗い夜道を帰っていった。私は彼女の、今にもどこかに消えてしまいそうな背中が闇に溶けるまで見つめていた。

次の日、彼女は学校に来なかった。
彼女に何があったか、担当の教師は言葉を濁して教えようとしなかったが、その様子だけでクラスのほとんどは彼女の末路を察したようだった。
彼女は最期に、息絶える寸前に、星に助けを求めたのだろうか。傍観するだけの星に、絶望したのだろうか。それは彼女にしか分からない。
生者の私は願う。どうか彼女が夜空の星になれますように。そして、彼女の両親と再会できますように。
ふとカーテンの隙間から空を見上げたが、そこには澄んで晴れた秋の空しかなかった。

2/10/2025, 12:11:52 PM