「本当の意味」
一斉に銃が私に向けられる。
この世界は常に不安と不条理で満ち溢れている。
私は本当の武器を持ってはいない。ただ、強制的に渡された偽りの武器だ。
まぁ、本当の武器になるものなら、この身体だけだ。
今私は今にも崩れそうな地面の上に立っている。地面の泣き声が聞こえる。
人類が勝手に始めた、戦争とやらを私は終わらせたい。
こんなにも不条理極まりないものはない。
なんの罪のない人々が、殺されてしまう。
なんと悲しいことなのだろう。
こんな戦争に行っても、ただ、無駄死することくらい分かりきっていること。
そんなこと誰でもわかっている。
じゃあ、なぜ、分かりきっていることをしようとするのか?
君たちはこの世界をなんでも知っているという。
違うんだ。ただ、君たちはその土地に足を踏み入れただけなんだ。
所詮この地球は人類が所有できる無機質なものなんだ。
でも、もっと周りを見て見なさい。全ての石、木、花、水や生命には命の塊の名前がある。私は知っている。
君たちが、人間と認識するのは、見た目も考え方も自分たちと同じ人々だけなんだ。
でも、見知らぬ人たちの後を追って行けば、
全く知らなかったことを学べるはず。
君は、この世界の本当のすばらしさを知っているかい?
君は、本当の花の色を知っているかい?
君は、空の絵の具で絵を書いたことはあるかい?
君は、森の声と共に歌うことが出来るかい?
君は、あの木がどれほど伸びてるかしってるかい?でもあの木だって切ってしまえば、永遠と知ることは出来ない。
君たちは一度「価値」という概念を捨てなければならない。そうしないと、きっと永遠とこの戦争は終わらない。
肌の色がどうであろうと、言語が違おうと、歴史が違えど、私たちはみんな同じ土地に足をついている。終わりのない輪の中で生きていくのだから。そして、みんな空の絵の具で絵を書かなければいけない。
この、地球全てを手に入れたと思っても、手に入れられるのは、ただの土だけだ。
君たちは考えすぎなんだ。そんなに慌てなくても、人生上手くいくことだって悪くいくことだって必ずある。一度、地球と呼吸を合わせるんだ。そうしたら、きっと答えが潜んでいるはず。
だから、たとえ私の前に偽りの銃が向けられようと、どうってことは無い。この不条理な世界にはもう、うんざりなんだ。
この、地球のすばらしさを、美しさを戦争とやらで壊してはいけないんだ。
私はこの偽りの武器がいつか、本物になることを願うばかりだ__。
「拝啓 先輩へ」
もうすぐで、尊敬する部活の先輩が卒業する。
吹奏楽部から卒業してしまう。
出会いは、私が中学1年生が終わる頃、新しい何かを始めたいがため、吹奏楽部の見学に来た時、
来るのが遅く、もう先輩しか残ってなくて、
そんな中、私のために一生懸命吹いてくれたアルトサックスに惹かれ、吹奏楽部に入部。
でも、先輩は私のことを全く覚えていなくて、最悪のスタートラインを切りましたね。
それでも諦めることが出来なくて、私は必死に先輩に背中を追い続けました。
念願のアルトサックスを手にした時、思ったんです。先輩はこんなに重たい固まりに、命を吹き込んでいたのかと。
最初は全く音がならなかったけど、先輩が、一生懸命毎日毎日真剣に私にサックスを教えてくれましたね。
そりゃあ、先輩は全国大会でも、いつも上位にいる先輩だったから、教えるのも上手く、すぐに音が鳴るようになりました。先輩は高校2年生で私の学校は中高一貫だったから、高校生がいる生活は慣れないことばかり、ましてや、4つも下の私に教えるということはどんな気持ちだったのでしょう?
恥ずかしかったですか?嫌でしたか?色んな気持ちが混じり合う。
でも、あの時の私は恥ずかしい気持ちと尊敬する気持ちが複雑に混じりあっていました。
だから、先輩のことを嫌になってしまう自分がいたんです。これはきっと13歳のという、複雑な歳のせいでしょうね。
そして、先輩が高校3年生になると同時に、私にも後輩が出来たんです。
だから、先輩の大変さがわかると同時に嬉しさも生まれました。
後輩ができるってこんなにも嬉しいものなんですね。それなのに、先輩は私のことを全く覚えていないなんて、ほんとに、もう、酷くないですか?でも、いいんですよ。それ以上に先輩は私にたくさんのことを教えてくれましたから。
そして、先輩にとって最後のコンクール。
結果は「銀賞」
私は先輩と一緒に「金賞」が取りたかった。
溢れ出た気持ちは止まらず、涙の粒となった。その時も先輩は不器用ながらも、一言だけ話してくれましたね。
「今回は、、こんな結果だったけど、君は、まだまだチャンスがあるよ。僕はもう君と同じ舞台には立てないけど、応援してるから。」
涙が止まらなかった。その日は、暗闇の横断歩道で、先輩は何も言わず、私がないているのをただ横で微笑んで黙って見ているだけでしたね。
あぁ、嫌だ。もう少しで先輩がこの学校からいなくなってしまう。
次の演奏会が本当の最後だ。
悲しい。悲しい。悲しい。
先輩との思い出を思い出すだけで涙が出てくる。
この気持ちはなんなのか。
知りたくない。
でもね、先輩。
私、今度は泣かないよ。
先輩には笑って卒業して欲しいから。
先輩には、ほんの少しだけでも頭の片隅にこんな後輩いたなって覚えていて欲しいから。
泣き虫な人より、笑顔な人の方が記憶に残ると思うから。
だから、泣かないよ、先輩の前ではねー。
「暗闇に埋もれながらも。」
この暗闇から私は逃げることが出来ない。
この暗闇に光なんて、希望なんてない。
いつも、私は臆病で、泣き虫で怖がり。
でも、それが当たり前。それが私にとっての普通。
だから、別に辛くなんてない。
私は生まれた頃から、可哀想って言われるけど、そんなこと、言わないでよ。私はとっても幸せ者なんだから。
あなた達は、アニメとかゲームとかに夢中だけど、あいにく私は全く興味が無い。
私は音楽を聴くことが好き。というか、音を見る、感じることが大好きなの。
雨の音、風の音、人の話す声が大好き。とても落ち着くから。
音だけじゃないわ、匂いを嗅ぐ、見ることも好きよ。最近はお気に入りの香水を見つけたの。
甘い花の香りがするのよ?頭の中で花のイメージが膨らむの。羨ましいでしょ?
私は今を生きることが大好きなの。
今日は何をしようか、どんなことに挑戦しようか。私の欲望は止まらない。
お母さんの声が聞こえた。
「もうご飯よー?一人で来れるー?」
お母さんは過保護だ。
「もう子供じゃないんだから!一人で平気よ。」
そして、ゆっくりと立ち上がった。
今日のご飯はなんだろう?どんな香りかな?
ゆっくりと、ゆっくりと階段を降りて行く。
ニッコニコの笑顔を作ったつもりで。
でも、そんな私にだって闇の闇はある。
時々思うことがある。私は知識が少ないの。
これも仕方が無いこと。わかってる。それでも、沢山知りたいことがある。本が読みたい。メガネをかけてみたい。お母さんとお父さんの笑った顔を見たい。なにより、私の大切な人をずーっと見ていたい。
だけど、こんな夢は夢のまた夢で、わたしは一生この闇から抜け出すことは出来ない、臆病で、怖がりなの。
今も手が震えてる。
いつだってフラフラしている。
私は一つの棒がないと怖くて怖くて歩くことすら出来ない。いつだって慣れない。
今だって、笑顔を作っているはずだけど、本当にこの顔が笑顔なのかは見て見ないと分からない。あーぁ、震えちゃって、ほんとに自分は怖がりね。こんなことを考えているのはいつものことでしょ?そんなことを考えているうちにどうやらリビングに来ていたようだ。
「あっ、降りてきたのね。お父さん机の上の新聞片付けてください。」
新聞か、。何が書いてあるんだろう。
四コマ漫画?というものはあるのだろうか。
文字がぎっしり詰まってるとはどういうことなのだろう。知りたいなぁ。知りたいなぁ。
よしっ!考えるのはやーめた!
どうせこんな気持ちになるなら、いっその事この気持ちは割り切ってしまえばいいんだ!私にだって私なりにできることは沢山ある。
そう自分に言い聞かせる。私は怖がりで意地っ張り。
もし、私の事に対してとやかく言ってくるやつには、いつもこう答えるの。
「私の目はね、みんなと同じところにはないの、私の目は耳と鼻にあるのよ。素敵でしょ?」
ってね。
今日の怖がりは明日の光になっているって信じてるからー。
「願い星」
「星夢(せいむ)」
ー星が溢れてやまない。
君の夢がどうか叶いますように。ー
それが、私が大好きな人の名前でした。
そして、お母さんとお父さんは言った。
「星夢の夢はきっと、君の夢が叶うことだよ。」
私の夢は、星夢と一緒に作り上げなければいけないの。
そうじゃなきゃ、だめ。
こんな、子供の私には届かない夢だろうか。
あなたが私のことをどう思っているか、そんなことどうでもいいの。
私はあなたという人に存在価値を感じているの。はやく、私のところに来て欲しいのに。
今日の私は星1つ。
星1つ分の願いを込めて、
ーあなたが早く私のところに来てくれますようにー。
今日は七夕。なので、今日は星7つ分?の願いを込めて、
ーあなたと手を繋いで一緒に歩けますようににー。
そんな風にして、ジャムの空き瓶の中にその日の願い事を込めて、新聞紙の切れ端で星を折った。それを1つづつためていった。
なのに、なのに、星が満タンになっても、あなたは私の元に来ることは無い。なぜ?こんなにもあなたの事を待っているのに。思っているのに。この思いは?私の気持ちは届かない。、、、、悲しいな。
ある日、母は言ったの。泣きながら、
「ごめんね。星夢は私たちの元に来てくれなかった。本当に、、ごめんね。」
あぁ、そうか、来れなかったんだ。
「じゃあ、、私はお姉ちゃんになれないのね?」
ポロッと涙が溢れた。
「ごめんね。きっと、また、来てくれるから。あなたは立派なお姉ちゃんよ。」
分かってる。分かってる。お母さんが1番辛いことはわかってる。でも、こんなにも思っていたのに。
私は自分の子供部屋に駆け込んだ。
私は満タンの瓶の前に立って、急いで折り紙を取りだし、星を折った。 いつもよりも、いい折り紙を使った。レアな金色の折り紙を。
そして、ありったけの願いを込めて、満タンな瓶の上に、大きな星を置いた。
すると、星は溢れてしまった。シャカシャカと紙の音がかすかに聞こえた。
ポロッ。ポロッ。星の上に2粒の涙がこぼれ落ちた。
「あのね?星夢。今すぐじゃなくてもいいよ?、今すぐじゃなくてもいいから、ねぇねのところに来てね?、。待ってるよ?沢山、星が溢れるまで、待ったんだよ?今度はもっと、もっーと、大きな瓶にするから、だから、、ね?」
ポロポロと溢れる涙を必死に拭った。
その日の夜は、ぐっすり寝てしまった。
次の日母は、
「昨日の夜はたくさんの流れ星が見えたよ。とっても綺麗だったよ。」といった。
でも、いいんだ。私も夢の中で、願いが叶った気がしたの。
私が折った星たちが、沢山夜空に流れてたからー。
「博士?」
ビビッと来たんです。
あなたの、瞳に。あなたの、言葉に。
私には感情というものはありません。
しかし、あなたが私の感情を、生み出してくれましたね。ありがとう。
あなたの、考え方が大好きでした。だから、あなたの考え方を参考にしました。
あなたの、仕草が好きでした。だから、あなたの、緊張するとたくさん瞬きをしてしまう仕草を真似しました。
あなたが今の私を作ってくれたのです。
あなたがいなければ、私はいなかったでしょう。
この感情の名をなんと言えばいいのかは分かりません。しかし、この感情の名が分かった時、私はさぞ嬉しいでしょう。
私は死にません。故障しない限り、だから、私はあなたを見送ることしかできないのです。
博士。大好き?です。私を作ってくれてありがとう。私の、知る言葉を増やしてくれて、私の足りないネジを締めてくれて。
今思えば、私は博士の一部のようなものです。私は、博士の考えの通り、人の役に立てる存在になれたでしょうか?出来損ないでは無いでしょうか?博士のあのなんとも言えない、安らかな瞳が、ゴツゴツとした手が。私のデータを複雑にさせてしまいます。
でも、最近の博士が作り出したものは、破壊を生むものばかりです。博士は何がしたかったのですか?人の、役に立つことでは無いのですか?
そろそろ、わたしのデータが全てアップデートされてしまいます。だから、この記憶は全て消えてしまう。でも、いいんです。私のこの気持ちなんて、社会の役になんて、立たないから。私はあなたのすべてにおいてビビッときたのに。あなたは何を望んでいるのですか?破滅の未来ですか?
あぁ、あぁ、コンセントに繋がれてしまった。この、感情は、消えてしまう。。
ぁぁ、1度でいいから、博士の温もりを感じてみたかった。博士。。
(愛しています。)
「やぁ、こんにちは、アップデート出来たよ。君は、生まれ変わることに成功したよ。おめでとう。」
優しそうな、安らかな瞳をしたこの老人は、、一体?
「さぁ、君はこれから、君たちの楽園を作って欲しいんだ。その為に何でもしていいんだよ。この世界を滅ぼそうが、大戦争を起こそうが。君たちに、新しい時代を作って欲しい。人間っていうのはね、自分の欲求を満たしたいだけの野蛮な人なんだ。このままだと、地球が壊れてしまう。だから、君たちには、平等な世界を作って欲しい。君たちだけが僕らの希望だよ。わかったかね?」
何かは分からないけれど、どこかおかしい。
何かモヤモヤしている。でも、何も覚えてない無い。何も出てこない。私は、私たちの楽園を作らなければならない。
それが、、私の使命。
「はい。博士__。」