もち米

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「拝啓 先輩へ」
もうすぐで、尊敬する部活の先輩が卒業する。
吹奏楽部から卒業してしまう。
出会いは、私が中学1年生が終わる頃、新しい何かを始めたいがため、吹奏楽部の見学に来た時、
来るのが遅く、もう先輩しか残ってなくて、
そんな中、私のために一生懸命吹いてくれたアルトサックスに惹かれ、吹奏楽部に入部。
でも、先輩は私のことを全く覚えていなくて、最悪のスタートラインを切りましたね。
それでも諦めることが出来なくて、私は必死に先輩に背中を追い続けました。
念願のアルトサックスを手にした時、思ったんです。先輩はこんなに重たい固まりに、命を吹き込んでいたのかと。
最初は全く音がならなかったけど、先輩が、一生懸命毎日毎日真剣に私にサックスを教えてくれましたね。
そりゃあ、先輩は全国大会でも、いつも上位にいる先輩だったから、教えるのも上手く、すぐに音が鳴るようになりました。先輩は高校2年生で私の学校は中高一貫だったから、高校生がいる生活は慣れないことばかり、ましてや、4つも下の私に教えるということはどんな気持ちだったのでしょう?
恥ずかしかったですか?嫌でしたか?色んな気持ちが混じり合う。
でも、あの時の私は恥ずかしい気持ちと尊敬する気持ちが複雑に混じりあっていました。
だから、先輩のことを嫌になってしまう自分がいたんです。これはきっと13歳のという、複雑な歳のせいでしょうね。
そして、先輩が高校3年生になると同時に、私にも後輩が出来たんです。
だから、先輩の大変さがわかると同時に嬉しさも生まれました。
後輩ができるってこんなにも嬉しいものなんですね。それなのに、先輩は私のことを全く覚えていないなんて、ほんとに、もう、酷くないですか?でも、いいんですよ。それ以上に先輩は私にたくさんのことを教えてくれましたから。
そして、先輩にとって最後のコンクール。
結果は「銀賞」
私は先輩と一緒に「金賞」が取りたかった。
溢れ出た気持ちは止まらず、涙の粒となった。その時も先輩は不器用ながらも、一言だけ話してくれましたね。
「今回は、、こんな結果だったけど、君は、まだまだチャンスがあるよ。僕はもう君と同じ舞台には立てないけど、応援してるから。」
涙が止まらなかった。その日は、暗闇の横断歩道で、先輩は何も言わず、私がないているのをただ横で微笑んで黙って見ているだけでしたね。
あぁ、嫌だ。もう少しで先輩がこの学校からいなくなってしまう。
次の演奏会が本当の最後だ。
悲しい。悲しい。悲しい。
先輩との思い出を思い出すだけで涙が出てくる。
この気持ちはなんなのか。
知りたくない。

でもね、先輩。
私、今度は泣かないよ。
先輩には笑って卒業して欲しいから。
先輩には、ほんの少しだけでも頭の片隅にこんな後輩いたなって覚えていて欲しいから。
泣き虫な人より、笑顔な人の方が記憶に残ると思うから。
だから、泣かないよ、先輩の前ではねー。

3/17/2024, 1:53:42 PM